【2-3:第3号機センチュリー】
本編⇒【http://ncode.syosetu.com/n4530bf/】
機体名 :センチュリー
形式№ :APO-XJ-C002
機体構造:精密内骨格
基本素材:“5元アルミ合金”
“高張力複合強化レザー布”
“発泡性ダイヤモンドセラミックス”
主導力源:“有機物内燃反応炉心”+“マイクロ核融合ユニット”
駆動源 :“電動性人工筋肉(単純電圧駆動+有機物ATP基複合反応タイプ)”
中枢部 :“クレア頭脳”
“マインドOS”
大規模高速ネットワーク対応サブ情報ユニット
“人工脊椎ユニット”
身長高 :1m87cm
重量 :120kg
所属 :防犯部少年犯罪課(捜査1課、交通機動隊、連携)
基本任務:武装暴走族対策、粗暴青少年犯制圧
責任者 :身柄引受・指導監督:少年犯罪課課長・小野川 利紀
開発責任者:第2科警研技術主幹・呉川 友康
格闘技指導教官:第2科警研オブザーバー・大田原国包
所有銃 :LARグリズリーMKⅢ(44口径マグナム)
コルトデルタエリート(10ミリオート弾)
(どちらもジャムが多い銃だが恩人からの譲り物であるためセンチュリーは敢えて使っている)
特殊機能:
1)マルチプルファンクションアイ
・眼球が6つの小型カメラの複合体であり、内部で各々のカメラを切り替えることにより(通常光学、暗視、サーモ、X線、超音波、放射線)の6つの機能を使い分ける。
2)アークバーニヤ
・7相交流放電による強力なイオノクラフト推進装置。センチュリーの両肘、両踵、両肩に装備され、高速移動時の補助を果たす。
3)ダッシュホイール
・アトラスの両踵に装備されたリニアモーターホイールで、アトラスの物より大径でサイズもダッシュ力も大きい。
4)イプシロンロッド
・前腕部内部に内蔵されたパンチ力倍加システムで、超高圧加圧コイルコンデンサーと、橈骨と尺骨の部位に備わったリニアモーターアクチュエーターピストンからなり、コンデンサーに貯えられた電力をピストンで一気に解放し拳打の破壊力を倍加させるシステムとなっている。拳法の『発経』を参考にしてその再現を試みたものだが、運用するには装着者自身にも格闘技の技能習得が必要であり、ただ装備すれば威力を発揮できるというものではない。
5)アクセルケーブル
・ダイヤモンド並みの硬度を持つマイクロマシン関節を多数つなぎあわせたワイヤー状のムチ型武器で、内部の超小型アクチュエータの力で、巻き付き・突出・切断――など、自在に動かす事ができる。
1対多数の乱戦時の利用を想定したもので、格闘技能に優れたセンチュリーだからこそ使いこなせる装備。普段は腰の裏側に収納されているセンチュリーの愛用武器。
6)高精度チタンナイフ
・アトラスの装甲にも用いられている高精度チタンを使用した戦闘用ナイフ。刃渡り22㎝。
7)ウィンダイバー
・全身の体表を帯電させ、イオノクラフトやMHD効果により気流を発生させ、対空能力を確保したり、ハイテクニックな姿勢制御をするもの。センチュリー自身の自重が大きいため飛翔する事はできないが短時間の滑空には十分使用可能。近接白兵戦等の多いセンチュリーの戦闘技能をレベルアップさせている。
専用車両:水素駆動高速二輪バイク・ウェーナー
センチュリー専用に与えられた高速白バイで、市販の限定解除サイズの二輪自動車をベースにセラミック製のV8セラミック水素エンジンを搭載しており、警察の情報ネットワークにアクセスしセンチュリーを情報支援する機能も組み込まれている。
この車両の作成に関しては第2科警研だけでなく外部の民間技術者への開発委託が行われている。
最高速度280キロだが、ニトロキットを作動させることで直線最高速度を320キロまで上げることが可能である。
能力傾向:
アトラスとは全く異なるアーキテクチャである内骨格式の理論に基づき造られた機体である。
アトラスが構造の単純化と後の量産化を目指して外骨格式としたのに対して、センチュリーはワン・アンド・オンリーな一体だけのフルカスタムアンドロイドであることを目指して作られている。
これは内骨格式アンドロイドの技術確立が目標であると同時に、アトラスの外骨格式だけでは、その後の特攻装警の技術展開に限界が訪れるのではないか? と、当時の第2科警研の技術者たちが判断したためである。
このため、センチュリーの建造にあたっては、呉川技術主幹を中心としてチームが組まれ、また内骨格式アーキテクチャの確立のために、格闘技における人体工学の研究者として名高い大田原氏を支援技術者として招聘、その他、数名の医療義肢や人工臓器の技術者などを招いて、特別チームを編成することとなった。
結果、センチュリーは建造当初から『格闘技をこなせるアンドロイド』とする事が目標とされており、基礎的な身体能力は完成当初から極めて高く、5元アルミ合金による高精度・高強度骨格や、第2科警研のサイバネティック技術者である大久保氏による人工脊椎技術の採用による反射神経システムの導入など、それまでのアトラスにはない要素がふんだんに盛り込まれることとなった。
そして、その優れた反射神経システムの性能により、格闘技技術の習得はもとより、オートバイ技術の習得にも成功。武器術や一対多数を想定した白兵戦闘技術や、犯人逮捕の拘束技術など、最前線での警察活動に求められる要素をほぼ完璧に再現することに成功している。
一方で、内骨格アーキテクチャの確立に際して、大田原氏の提案により有機物の内燃消化システムと呼吸による酸素呼吸の概念の導入が行われている。これは大田原氏と呉川主任の方針が、より人間に近いアンドロイドシステムの確立にあるためである。
人間とほぼ同等のメンタリティを獲得させるためには、呼吸や飲食といった人間の生命維持に必要な機能を持つことで、その重要性をアンドロイド本人が自覚できるように求めた結果であった。
もちろん、飲食物だけで全ての動力源を賄うのは不可能なため、超小型のパルス核融合システムを併用する事となったが、呉川主任と大田原氏のこだわりはセンチュリーのメンタリティに、人間とのコミニュケーションに必要な豊かな精神性や情緒性を与える事に成功しており、この事はのちにセンチュリーが着任することとなる少年犯罪の現場において、捜査対象の触法青少年との心理面をたくみにケアすることの出来る高いコミニュケーション能力を獲得させる事を後押しする事となるのである。
獲得格闘技術としては、指導監督役である大田原氏の指導により、中華拳法の1つである八極拳をメインに習得がなされている。
なお、その頭脳中枢の育成過程で情緒性が特に顕著に発達したため、理論性を軽視する傾向が備わってしまい、アンドロイドらしからぬ直情径行な性格パターンになってしまった。これについては度々議論がかわされているが頭脳中枢の再育成しか手段がないため放置されている状態である。
開発経緯:
特攻装警計画はアトラスの成功により次なる段階に入る事を求められた。
しかし5年前のある一件により第2号機の開発が失敗したことで計画は暗礁に乗り上げてしまうこととなる。
第2科警研内部の人材についての問題が発生したことや、特攻装警計画の反対派の突き上げにより次期特攻装警を早急に作る必要に迫られた事もあり、第2科警研では2つの方針を決定することとなった。
①外部の協力を仰ぎ新たに独自に技術を開発する
②アトラスに用いられている技術を精密調査し、もう一つの新型機開発に備える
この①のケースとして、第2科警研の技術総主管である呉川氏が開発責任者となり、第2科警研の外部にも協力をあおぎ第3号機の特攻装警の開発が行なわれた。それがセンチュリーである。
センチュリーの開発の際に重視されたのは以下の点である。
①人間の生体機能の再現……医療用技術の活用
②優れた動体能力
③単独行動時の極限性能の追求
この結果、センチュリーは特攻装警としては唯一の完全内骨格モデルとして造られる事となったのである。
当時、第2科警研が目指していた第3号機センチュリーの開発コンセプトとして、「人間性の追求」と言うものがあった。すなわち人間的な「感性」、人間的な「反射神経」、人間的な「コミニュケーション能力」、人間的な「動体能力」と言った物である。
アトラスが純然たるアンドロイド機械であったのとはまったくの正反対のコンセプトであり、その技術的可能性を日本警察の上層部は高く評価した。そして、その運用にあたっては、より人間の集団の中に飛び込んだ任務が適していると想定されたのである。
一方、それまで前例のない特攻装警の受入れに難色を示していた警察各方面だったが、第1号機アトラスの成功を受けて特攻装警導入に関心を示すセクションが少しづつ現れ始めた。
警視庁捜査部、交通機動隊を擁する交通部、生活安全部の少年犯罪課
これらの3つのセクションが正式に特攻装警の受入れの上申書を上層部に打診にしてきたのである。
当時、犯罪のロボット化・アンドロイド化とならんで、暴走族や半グレやチーマーなどの不良青少年集団などを始めとする少年犯罪は大きく様変わりしていた。
時代の流れを受けて大規模なハイテク化・情報化がなされ、暴力団や外国人マフィア顔負けの凶悪さを発揮するようになっていた。特に、特殊武装を手にいれゲリラ化したサイボーグ集団が出現し、一般社会からは『武装暴走族』と呼ばれ畏怖されていた。
日本警察ではその被害の深刻さはもとより、カルト宗教の様に青少年を巻き込んでいく武装暴走族の危険性を把握するに辺り、その早急な対処が望まれていたのである。
上層部はセンチュリーを武装暴走族の対策の一つとして配属させる事を決定。また、より攻撃的に独自に動けるよう複数の部署から指示や情報を受け取れる配慮をした。
結果、センチュリーは少年犯罪課の預かりとなり、捜査1課と交通課からの指示や支援をうけながら行動する事となった。その後、彼は独特の個性で、武装暴走族対策を中心に精力的に活動し、少年犯罪に対する活動の指針を周囲に示すこととなる。
そして、センチュリーが現場で活躍したその結果、触法青少年社会における非合法サイボーグ技術の浸透は深刻な状態にある事が判明した。センチュリーは幾度かの改良とヴァージョンアップを経てより武装暴走族に対応した仕様へと進化していくこととなるのである。