【2-8-2:特攻装警応用機第1号機フローラ】
2-1:特攻装警応用機第1号機『フローラ』
機体名 :フローラ
形式№ :AFW-XJα-F002
機体構造:“高強度単純化内骨格+柔構造外骨格”
基本素材:“6元アルミ合金(Γ128チタン複合)”
“超高張力ナノマテリアル合成レザー”
“超微細ナノセル人造スキン”
“発泡性ダイヤモンドセラミックス”
主動力源:プラズマハートユニットVer3
(出力変動制御型パルス駆動マイクロ核融合炉心+MHD発電ユニット+超大容量超電導バッテリー×2)
駆動源 :“電動性人工筋肉(電圧動力線+制御信号線分離駆動型)”
中枢部 :“クレア頭脳”
“マインドOS”
“マルチパーパス超高速データベースエンジン〔エンジェルレイヤー〕”
“大規模高速ネットワーク対応情報管制システム”
“多重化人格制御バランサーシステム”
“非接触型・電子回路遠隔制御システム”
“人工脊椎システム”
身長高 :151cm
重量 :78kg
所属 :東京消防庁警防部特殊災害課
基本任務:災害救助、消防活動全般、救命救急任務
責任者 :身柄引受・指導監督:警防部特殊災害課課長・四方 敦弘
開発責任者:第2科警研・布平しのぶ
所有銃 :なし(消防庁職員の扱いであるため現時点では不要と判断されている)
1)オールレンジアイ → 既存特攻装警と同じ
2)マルチパーパスレーダーブロック → フィールと同じ
(ただし、災害現場での対象物の探知が主な使用目的である。また、生体センサーが複合しており土砂や瓦礫の中の人体を探知する能力が付与されている)
3)マイクロアンカー(左右腕部) → アトラスの物の改良品
・特攻装警第9号機クリスタの物とほぼ同等。先に開発されたのはこちらで後にクリスタに搭載されることなる。射出速度よりアンカー先端部の制御能力が高くなっており、アンカー先端部の飛行軌跡をフローラが意図したとおりに完璧に制御することが可能。さらに重量物の起重能力も強化されている。
4)特殊防熱システム
・体表部に電子冷却素子が等間隔に設置されて体内に蓄積した熱を積極的に体外へと排出出来る仕組みとなっている他、特殊なマイクロ波を体表から放射して体表部への熱干渉を低減させることで、火災現場での体表温度の上昇を防ぐシステム。
5)エアジェットスタビライザー → グラウザーと同等
・エアダクト形状の一種のジェット推進装置、グラウザーの物とほぼ同等。加速移動などの用途が主になる。
6)アークバーニヤ → センチュリーの物と同じ
7)多重化人格制御バランサーシステム
・後にクリスタにも装備される物であり、こちらのほうが開発が先。ただし、同時実行可能な時分割数は3ないし4が限度であり、大規模な多重化は行われない。
8)サイバータランチュラ → グラウザーの物をさらに改良
・これもクリスタの物と同等で開発はこちらが先。主目的は災害現場での救助活動での補助である。機能停止した機械の再起動や、閉じられた電子ロックシステムを解除するなどの使い方が主になる。両手の十指の根本に内蔵されており、単分子ワイヤーシステムとしてはグラウザーの物と同等である。しかし、クリスタのタランチュラはこれに加えて、非接触型の電子回路遠隔制御システムが組み込まれており、単分子ワイヤーに付加されたナノマシン体が目標の電子回路システムに遠隔干渉する事でコンピューターシステムへのハッキングから、電子機器の乗っ取り、内部データの抽出。さらには電子制御システムを乗っ取ることで、車両や建設重機、あるいは様々な機械機器を遠隔コントロールする事が可能である。
9)2次装着装甲「オプショナルギア」
これもフィールの物とほぼ同等である。ただし、使用目的は災害時の自己防御であり、耐熱・耐爆などを補助するためである。フィールのような戦闘能力の強化が目的ではない。普段は取り外しておいて、通常の待機業務に従事しているが、災害時に必要に応じて2次装甲を適時装着する仕組みとなっている。
オプショナルギアは頭部・肩部・前腕部・胸部・背部・腰側部・腰背部・脚部の計12ヶ所のパーツからなり、防御能力の向上に比重が置かれている。また、腕力面での性能強化が行われており、必要時にリミッターが自動的に解除される事により増強されるシステムとなっている。
電磁気制御式のMHD推進ユニットが背部・腰背部・脚部のギアに内蔵されており、両肩部の電磁フローターと組み合わせることで、精密な飛行能力を発揮することが可能である。
10)電磁フローター
MHD推進ユニットとエアジェット推進装置を組み合わせ、非常に高い比推力を有した推進装置に構成した装備で、フローラの両肩に装備されている。無論、脱着可能。
両肩から背面を通じて、フローラの主骨格に接続可能であり、最大推進速度こそフィールのマグネウィングに及ばないものの、重量物の運搬や、ミリ単位での精密な位置制御などに優れており、建築物内での制限された空間内での精密高速飛行を可能とするものである。
11)ハイプレッシャーウォーターガン
両手持ち式のバズーカータイプのウォータープレッシャーガンで、一度に数リットルの消化液を一斉に拡散発射することで火災の鎮火を図るもの。3回ほどの連射が可能な薬液タンクが備わっている。
12)マルチパーパスフォールディングギア
フローラが現場任務で活動する際に携帯している折りたたみ式の多機能ツールでロッド形状をしている。両方の先端部が折りたたみ式であり展開することにより、以下のツールとして使用が可能。
①スコップ ②ツルハシ ③ドリル ④高速カッター ⑤プライヤー ⑥ニッパー ⑦高周波振動ブレード ⑧ハンマー
この他、マイクロアンカーと接続することでさらに機能を広げることが可能である。
13)簡易メディカルツールキット
フローラが現場任務にて携帯する簡易型の救急救命ツールキット。除細動器、人工呼吸器、酸素供給マスク、動力式注射ツール、薬剤アンプル、止血用フィルム材、などからなっており、災害現場で必要とされる物が選択されている。グラウザーが同様の物を有明1000mビルの事件で使用しているが、キットの充実度はこちらが上。
専用車両:高速オフローダー『グラスホッパー』
第2科警研にて仕様プランが練られ、外部提携企業である岸川島にて実車両の作成が行われたもの。
災害現場での移動手段の確保を目的としている他、非災害地での高速移動と物資運搬も視野に入れた、多目的用途の消防用特殊車両である。
全輪駆動の4WDで、ガスタービン式の多燃料動力装置を主動力に動力伝達と変速機構を全て流体によるハイドロプレッシャー式で行っているのが特徴である。
ピックアップトラックスタイルで原則二人乗り(後部に簡易シートが2名分ある)流体による動力伝達であるため、サスペンションが路面状況に応じてアクティブに上下する。オフロード時はリフトアップし、舗装路や高速道路ではリフトダウンし車高がスポーツカー並みに低くなる。
特に後軸のサスペンションが長いスイングアーム式であり、横からのシルエットがバッタの脚のように見えることからグラスホッパーの名がついた。
フローラの配備に合わせて開発されたものだが、その優れた多機能性から消防庁内でも評価が高く、そのまま災害救助用車両として採用することが決定した。そのため岸川島では急遽数十台を追加製造している。
能力傾向:
そもそも、フローラはフィールの消防用途への転用と言う目的から開発がスタートしている。
そのため、災害救助活動に必要な機能をフィールに上乗せし、不要な機能を削除すると言う形式で機能決定が行われてる。
まず追加されたのがボディ強度の向上と耐熱・耐爆性能の付加である。グラウザーで得られた単純化内骨格のメカニズムを導入する事でフィールに欠如していた頑強さとそれに伴う力強さを得ることに成功した。またさらに体表部である柔構造外骨格の適用素材を見直すことで、外観と体表部の触感を損なうこと無く、必要な耐熱性と耐爆性能を確保することに成功している(ただし重量の増加は避けられなかった)
この他、飛行性能はフィールと異なり速度性能よりも起重性能や空間移動精度が重視されており、災害現場での救助活動に必要とされる重量物運搬や高層ビル内や複雑に入り組んだ構造物内での素早い展開行動を行えるレベルの性能の追求が行われている。
これらは全て、消防庁の意向である『災害現場での人命救助能力の追求』に絞られており、非常に割りきった性能傾向の機体である。
しかしながら、戦闘を度外視し救助活動に専念したことでかえって汎用性は非常に高く、飛行能力を用いない状況下でもその能力を遺憾なく発揮する事が可能である。また、火災から爆発事故、不発弾除去、地下災害、高層ビル災害、海上・海中事故など、人間では到達不可能な極限状況下ではフローラの存在意義は非常に高く、配備当初より目覚ましい活躍をする事となるのである。
その人格形成と育成においてはフィールの人格データをベースとして、転用する方式が採られている。全くのゼロから育成するのではなく雛形となる性格を準備することで人格の育成に必要な時間を大幅に短縮することを目的としたものである。
当初この手法には、形成された人格がコピー人格のように個性が喪失するのでは? と言った懸念が出されていたが、実際の育成結果に於いては多少の類似はあるものの、フィールとは明確に異なる性格や人格が育っている事が確認されている。
明朗で社交的な性格であるのだが、フィールよりも実直で任務に忠実な素直な性格であり、いかなる困難時にも弱音を吐かない非常に芯の強い性格に育っていると言える。
フローラが配備された特殊災害課では、フィールが一時期見舞われた“マスコット化”はされること無く、未来の消防庁を担う逸材として入念な新人教育が行われ、配備から一ヶ月後にはすでに現場へと出動を果たしている。それ以来、様々な災害現場で活躍する事となるのである。
髪型顔つきともフィールと非常によく似ている。しかし顔立ちが微妙に異なるほか、体系がフィールと異なり非常にガッチリとした頑丈さを感じさせる体型をしている。そのため、私服時でもフィールとの見分けはそれほど困難ではない。
彼女の成功は、のちに第8号機や第9号機の建造のヒントを与えることとなり、後の量産型特攻装警の先鞭をつける役割をはたすこととなるのである。
開発経緯:
特攻装警第6号機のフィールが完成し数ヶ月経った時のことである。
捜査部内において優秀な活動実績を上げ続けるフィールのことは警察内部はもとより、警察以外の様々な省庁や政府機関などから注目をあびることとなった。特にフィールの飛行性能や高い機動能力、さらには優れた汎用性に注目したのが、消防庁であった。
特に超高層建築物や大深度地下構造物が氾濫する現状にあって、生身の人間による救助活動だけでは限界に達しつつあった。このため、消防庁ではフィールをはじめとする特攻装警のアンドロイド技術を各種災害救助活動に応用できないかとの質問の打診があり、警察庁および第2科警研では対応可能とする回答を行った。
これにより、消防庁の所属する総務省から正式に災害救助活動対応型の特攻装警応用機の開発への協力依頼が、警察庁へと打診されることとなった。これを受けて警察庁と第2科警研では、フィールの開発担当責任者であった布平しのぶ女史を対応窓口として折衝を開始、半年をかけて消防庁からの要求仕様をまとめ上げ、フィールの完成と現場運用の成功を確認した上で、消防庁向けの特攻装警応用機の開発をスタートさせることとなったのである。
このさい、消防庁が要求してきた仕様は以下のとおりである。
1:基本機体構造はフィールをベースとすること。
2:災害現場対応の必要から機体強度を強化すること。
3:災害時の救助活動の性格から重量物の起重や運搬を可能とするだけのパワーを与えること。
4:火災現場・災害現場で必要な耐熱・耐寒・耐爆性能を確保すること。
5:超高層建築物での救助活動を可能とするため飛行能力を付加すること。
6:建築物内での高速な移動を可能とするため、3次元空間でのピンポイント位置制御を備えること。
7:消防庁のネットワークシステムにリンク可能な情報処理機能を付加すること。
フィールは本来、パワーと耐久性を度外視して、高速性能と飛行性能に特化した側面を持つ。
そのため、フィールをベースとして消防庁からの要求に応じることは困難を極めるのが予想された。
しかしながら、第2科警研ではこの要求に応じることを決断。特攻装警応用機の開発に乗り出すこととなる。
おりしも、第7号機グラウザーが完成した時期であり、グラウザーで開発された技術がフィードバック可能となり、フィールの柔構造外骨格の強度面での欠点を克服する事が可能となり、完成に向けて開発研究が加速することとなった。
そして、9ヶ月の開発研究を経て完成したのが、特攻装警応用機第1号機のフローラである。