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ここは人類最前線5 ~人間さん襲来~  作者: 小林晴幸
第一回ハテノ村仮装ドッキリの宴
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37.第一回ハテノ村仮装ドッキリ(対象複数)そのご 

今回、視点がリアンカに戻ります。

ラーラお姉ちゃん達のラブコメ編とは、ちょっと時系列が前後してますが。


今回は勇者様の仮装が出ます。

イメージはライオン●ング(ミュージカル)+タイガーマ●ク……かな?


2/23 誤字訂正

 皆様、なんだかお久しぶりね、のリアンカです。

 気のせいかもしれませんが、なんだか最近あまりお目にかかっていなかった気がします。

 きっと、気のせいですけど。

 現在こちらは勇者様の部屋にて最終チェック中。

 素敵な仕上がりになるよう、鋭意☆努力中です。

 ええ、鋭角から抉り込むようにいきますよ。


「勇者様、足はサンダルですよ。ブーツなんて脱いでください」

「なあ、リアンカ……この服、露出度高すぎやしないだろうか」

「そうでしょうね。上半身 マッパ ですから」

 平然と返した私に、勇者様は何とも微妙な顔を披露してくれました。


 ええ、そうです。

 只今、私達は勇者様を仮装という名の虚飾で彩り中。


 そうして、完成した姿は…


「……………」

 勇者様が、思わず黙り込む出来栄えです。

「もう! そんな不服そうにしなくても良いじゃないですか。

この衣装、わざわざ獅族の方にいただいてきたんですよ?」

「そーそ、そうだぜ、勇者の兄さん。結構似合ってるって☆」

「黙れ同類」

 会話に介入してきたサルファの首を、勇者様は言葉にできない感情もこめてコキュッと。

 現在、二人は似たような格好をしています。

 そして顔には仮面。

 傍目に、とっても微妙。


 勇者様の衣装は、実は頂き物です。

 この日の為にわざわざ、獅子の獣人さん達のところに貰いに行きました。

 元々は、彼らの晴れの日に着る衣装なんですけど……


 恵まれた逞しい体躯を誇る、獅族の皆さん。

 その衣装は肉体を誇示するように、上半身裸。

 胸の前に飾り帯を一枚だけ通すのが、辛うじて上半身を隠しています。幅、十二cmくらい。

 それ以外の布など邪魔と言わんばかりに、服という存在を拒否しています。

 なのに何故か、儀礼的な装飾のマントだけは付けるという。


 そして、さりげなくではありますが……

 実は、マントの方を勇者様が最初に衣装確認した時とは、別の物に摩り替えてあります。

 私が丹精込めて、たった一人夜鍋でこさえた力作です。

 夜を徹した甲斐のある仕上がりに、私は満悦。

 勇者様の目が届かないのをいいことに、背後。

 ええ、背後。

 背中のマントのど真ん中に、金銀五色で彩り豊かに刺繍が施してあります。

 

 ころころデフォルメされた黄色い子猫の顔を大きく。

 そしてその両脇に、原色カラーで文字を添えました。


 ――『ぼく勇者! 獅子と見せかけて実はまだ子猫なの。

          でも本当はね、その実態はヘタレなんだ♪』


 酷い、と誰かが笑いの滲んだ声で呟くのが聞こえました。

 誰ですか、そんなこと言うの。

 声に出さないで下さいよ…!

 勇者様に聞こえて、バレたらどうするんですか!

 これは、本人が気付かないからこそ面白いのに!


 勇者様の知らないところで。

 マントの刺繍を目にした皆が目を逸らし、口を押さえて笑いを噛み殺し封じ込めておりました。


 そして勇者様へと忠言に走ろうとする某従者さんは、サルファによって引き留められ、ヨシュアンさんによって(ヘッド)をロックされておりました。

 本当にこういう時、言わずもがなで発生する連携というか、協調性って息ぴったりだよね!

 こんな時だけだけど。


 後はそうですね、手首に黒革のベルトを巻いていますが、手首だけ保護する意味がわかりません。

 裾の長い腰布は彩り鮮やかに独特の文様が染め抜かれ、刺繍されているけれど。

 そんなことは目じゃないくらいに、上半身の肌色が眩しいですね。

 どうやら箱入り育ちらしいミリエラさんには、刺激が強いかもしれません。

 腰布の下には薄くて布が余り気味のズボン。

 しかし足もぶっとい獅族さんなので、それよりは足の細い勇者様が着るとだぼだぼ。

 見るからに、布が余りすぎです。

 一応裾も詰めましたけど、それでも追い付かない。

 これは不格好と思ってか、勇者様は飾り紐で膝の下あたりを縛っています。

 そしてターコイズで装飾されたサンダル。

 あまりの露出度の高さに、勇者様の頬が少し羞恥に染まっています。

 野郎ばかりの中だと平然としているのに……

 どうやら、私やせっちゃんを気にしているようです。

 女の子の前で肌色を曝していることに抵抗があるみたいですね。

 勇者様は(たま)に女の子みたいに慎み深いと思います。

 まあ、紳士の気遣いという奴なのでしょう。

 なにはともあれ、これで服装は完成です。服装は。


 でも後、首から上が残っている訳で。


 私は勇者様の首に、この仮装衣装のメイン…

 木彫りの仮面を、強引に被せました。

 丁寧に彫り込まれた、民族的独創性に溢れる、獅子を(かたど)った、極彩色の仮面を。

 勇者様の頭が全て覆い隠され、こうしてライオンマスクマンが誕生しました。


 → 仮面の下から勇者様の物言いたげな視線を感じる!

    リアンカは 気のせいだと 受け流した!


 勇者様と同類(虎)の格好をしたサルファがけらけらと笑う。

 腹立たしそうに不満の声を漏らして、勇者様は肩を落とします。

 失意の色が見えました。

 ええ、無理もない。

 気持ちがわかるとか間違っても言いません。

 ですが気が重いと勇者様が感じていること、ひしひしと伝わってきますよ。


 だって勇者様は、これから使者方と宴会会場(村中に拡散)を回らないといけないんですものね。

 

 ご愁傷様、勇者様。

 だけど後々の楽しみの為に、大事なお仕事。

 頑張って、勇者様!


 私は超絶に他人事という顔で、にやにや笑って勇者様を部屋から押し出します。

 そんな私に縋る様な視線を向けて、アディオンさんが、

「ちゃんと見ていて下さいよ! 絶対に危害など加えられないよう気を配っていて下さいよ!?」

 しつこく念を押してくる青年に、私は笑って頷きました。

 THE 安請け合い

「大丈夫ですよぉ、そんなことになったら流石に不憫じゃ済みませんから」

 いくら私でも、勇者様の不幸は望みませんよ?

 説得力はないかもしれませんし、勇者様は結構不憫な方だと思いますけど。

 でも、私はここに断言します。

 私は何も勇者様を不幸にしたいわけじゃありませんし、故意に不幸へと突き落しているつもりは…………………………………………………………あまり、ありません。

 ただ、勇者様が持ち前の不運と不憫属性で事故を呼び寄せているだけです。きっと。

 だって時に、勇者様は私達の予想以上の不幸(こと)を呼び寄せるし。

 時々、目を見張るくらいに吃驚(びっくり)していることは、勇者様には内緒です。可哀想だから。

「何より、勇者様はお友達ですもの。お友達の不幸はたのs…じゃない、どん底の手前というか、本当に危ないことになりそうなら助けるのが、お友達ですから!」

「貴女のお友達観には色々と物申したいことがありますが、呉々も間違いのないように、殿下を危地に追いやらないように頼みますよ! というか、貴女は本当に殿下のお友達なんですか!?」

 最後は何故か私じゃなくて、確認するように勇者様を見やるアディオンさん。

 そんな従者に対して、勇者様は重々しく頷きを返します。

 …荘厳な仮面の効果でしょうね。かつてなく威厳をたっぷり感じる頷きです。

 私がお友達だと肯定を返した勇者様に、従者さんは何故か悲壮なお顔。

 よよよ…と目頭をハンカチで押えています。

「殿下………お友達は選びましょう? 人を見る目はあったはずなのに…」

 さりげないどころか、堂々と失礼です。

 後できっちりこの従者さんに落とし前をつけさせよう。

 私は秘かにそう決めて、勇者様に続いて部屋を出て行きました。

 使者の方々から身を隠しているアディオンさんは、此処にお留守番です。

 ちょっと、可哀想。

 もう何日も部屋から出られず缶詰ですからね。

 仕方がないので、後でお土産を持ってきてあげようと思いました。



 数時間後、彼はリアンカの持ってきた『お土産』に苦しめられることとなる。


 リアンカが持ってきた、『タコ壺』…に、封じられていた***に………




 さて、ご対面。

 そんな言葉を脳裏に浮かべながら、私は勇者様を居間に突き飛ばしました。

 そこには、丁度着替え終わったお姉様方がいらっしゃるはずで…


 凄いのが、いました。

 流石、画伯…えげつない。

 デザイン画、完成品と見た時に思ったことと同じことですが。

 衣装を身に纏った使者さん達の姿を見て改めて思いました。

 女の子が着るには、ぎりぎり羞恥が勝つか負けるか瀬戸際を感じさせる衣装です。

 というか、これを見るとしみじみ思います。

 女の子の思う「可愛い」と、野郎の思う「可愛い」はちょっと違うんだなー…と。

 いえ、可愛いには可愛いんですよ?

 でも太腿とか、胸チラとか、色々気になる。

 女目線でも気になる。

 こんな服、破廉恥手前でギリギリ留まり彷徨う果てに迷子になりそうな服。

 画伯じゃないと、実際に着せてみようなんて思いませんよ…。


 野郎共の妄想の産物が、そこにいた。


 画伯の信奉者達の前に連れ出したら、凄い勢いで拝みだしそうな気がする…。

 そんな卑猥な格好をさせられた、当の本人達はと言うと…


 エルティナさんは、全然恥じらってませんね。

 太腿が出ていようが平気そうな顔をしています。流石森育ち。

 部屋に入ってきた勇者様の顔(仮面)を見て、一瞬ぎょっとしましたが…全然、眼中にないですね。 

 言われてみれば、確かにという感じで。

 サイさんから頂いた前情報通り、彼女の意中の人はベルガさんなのでしょう。

 気にしていない風を装いながら、複数回に渡ってチラチラと目がベルガさんに向けられています。

 なのに野郎は追いかける視線にも気付かない様子で兵士Aと歓談中。一回刺されれば良いのに。

 その向こう側で、私の視線に気付いたのでしょう。

 サイさんがさりげなく、他に知れぬよう小さくジェスチャーを送ってきました。

 意味は、『任せろ』…かなあ?


 どうやらあそこは事前に約定を交わすことに成功したようで。

 エルティナさんは勇者さんを狙う一行には加わらず、騎士三人組と出店を回るようです。

 ばったりラーラお姉ちゃんと鉢合わせるよう、サイさんが誘導することになっているけど…

 私も、アイコンタクトを送っておきましょう。

 そう、『健闘を祈る!』とでも。


 あちらはあちらで平和なようで。

 しかし私の隣では、膨大な冷や汗を流して硬直するお兄さん。

 勇者様、そんなに怯えてどうするんですか。それでも戦う男ですか。

 そう言われても怖いものは怖いのでしょうが、もう少しオブラートに包めませんかねー…

 まあ、怖いのはわかります。


 ネレイアさんはまだマシです。

 彼女は不慣れな姿に羞恥心MAXらしく、見ていてわかりやすいほど恥じらっています。

 じれじれ、頬を染めてもじもじしています。

 勇者様も直視できないようで、未だ仮面にすら気づいていません。


 一方、ミリエラさん。

 ………強かというか、抜け目ないというか、割り切り凄いというか。

 彼女はどうやら、己の纏う際どい衣装を逆手にとって利用する手段を選んだようです。

 画伯、画伯、超裏目!

 男受けのいいエロ可愛い衣装だと気付いてしまったんですね。

 でも躊躇なく、さりげなく利用する気満々なのは元修道女としてどうなんですか!?

 彼女はただ、そこで嫣然と笑っているだけ。

 でも、目が。

 目が、獲物を前にしたサーベルタイガーの目でした…。

 表面上は取り繕いつつも、恥じらいも何もないハンターがそこにいます。

 

 ………勇者様、がんばっ!



 そうして肉食獣二頭と犠牲者一匹による、修羅と戦慄の夜店見物が始まろうとしていました。


 ちなみに私達もついては行きます。

 ですが肉食さん達を刺激しない為に、ちょっと距離を取ってついて行くつもりです。

 孤立無援、味方はいないぞ、勇者様!

 どうぞ独力で頑張ってください!

 …と、無責任に激励してみます。


 なんだかんだ言いつつも、本当に危なくなったら助けてあげますからね?

 その時は、うんと精々恩に着てください(笑)




ゆうしゃ は にげだした!

だが まわりこまれて にげられない!



今夜中に、番外編置き場に前話の番外を置きます☆

しかし、内容的に好き嫌いがあるかも…

内容がね、


 ラーラお姉ちゃんの元彼(実はいた)のお話なんです……。


無理! ラーラお姉ちゃんに男とか、無理! と言う方はお気を付け下さい。

ちなみにキャラ設定は

・名前と姿は優美。

・なのに中身は深く物を考えないわんこ系。

・勢いと若さと勢い(八割勢い)でラーラお姉ちゃんと交際に成功!

・しかしラーラお姉ちゃんのガードが鉄壁過ぎて自然消滅した。

                       という様な感じの輩です。

それでもOK、受け入れるという方は番外編へGo!

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