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15.双六そのに

後書きに、村長さんの武勇伝(笑)があります。

リアンカのお父さんがどんな人か、気になった方はどうぞ。

「契約して、初めて喚ばれたと思ったら…なにこの状況」

 竜の幼子は呆れた様に言いました。

 だけど特に反対することもなく。

 呆れながらも素直に口をカパッと開いて。


 ドラゴンブレス


 水の竜ならではの、全てを水圧で押し潰そうという威力。

 水色に輝く光が弾けて。

 そしてトルネードの如く渦巻き逆巻き弾き飛ばす水柱。

 勇者様を筆頭に、四人の男が見事に吹っ飛んだ。


「わー………なんて言えば良いんだろう。たまや?」

「んじゃ、俺はかぎやか?」

「ロロ、ブレスの威力強くなったねー…」

 つい、しみじみと見入ってしまいます。


 かつて、幼い頃。

 とは言っても、五年位前のこと。

 ロロイのブレスは水鉄砲を三十本くらい束ねたくらいの威力でした。

 それに今みたいに人型でなんて、無理でした。

 あの頃は竜の姿の時のみ、些細な威力のブレスが使えるのみ。

 まあ、子供でしたからね。

 成竜のブレスと比べたら、どうしても見劣りしてしまいます。

 それが今や、ちょっとした鉄砲水を凌駕しますよ。

 何たる成長。

 私は弟の様に可愛い竜の成長を、この目で目の当たりとしてしまいました。

 これが完全な成竜なら、鋼の鎧で武装した巨人(ジャイアント)も消滅させるのだけど。

 今でもちょっとした鉄の塊ならねじ切りそうです。


 そんなものに吹っ飛ばされて、青年達もただでは済まない気がしますが…

 そこはそれ、青年達もただ者ではありませんでしたから。

 吹っ飛びはしたものの、なんと驚異の無傷ですよ。

 人間じゃねぇ、バケモノだ…

 ごくりと生唾呑み込んで、見物していた村の若衆達が手に汗を握っておりました。


「勇者様達、死んでないと良いけど…」

 呟いたら、ロロイがきょとんと首を傾げました。

「威力、加減しといたけど」

「え、そうなの?」

「だって、死んだら困る」

 ロロイが、本当に心底困った様に言います。

 殆ど接触のない人達を前に、竜のロロイがそう言うのです。

 弱肉強食を地でいくロロイに、根本的に生殺与奪に関する罪悪感はありません。

 倫理観がない訳じゃありませんけれど、自分が生き物を殺すことにあまり頓着しないんです。

 それが、殆ど会話も交わしたことのない男達を前に、困ったとな。

「何か特別に困った理由でもあるの?」

「だって、あの人って勇者だろ」

「??? 竜には、特に『勇者様』を尊重する理由は…」

「あるよ。ただでさえ人間は百年も生きないのに。今ここであの勇者に死なれたら、ナシェレットのおっさんが野放しになる」

 予想外の名前が飛び出して、少し驚いてしまいました。

 だって、ナシェレットさんはロロイの同族です。

 それを指して、解き放たれるのを回避したいとは。

 あの竜、嫌われてるのかな…

「そういう訳じゃないけど。ナシェレットが自由になったら、またせっちゃんに付きまとう」

「うん。それは予想された未来だよね。忌々しく」

「そうなったら、リリフの機嫌が悪くなる。その時とばっちりを食らうのは、リリフの近くにいる俺だし。そうならない為にも、勇者さんには最低でもせっちゃんが嫁に行くまでは生き足掻いてほしいし」

 思った以上に、切実な希望のようです。

 確かに、リリはナシェレットさんがせっちゃんに迫るのを嫌がりますしね。

 何より、そうなったらまぁちゃんも時として怒るので周囲の被害が甚大です。

 …となると、勇者様に長生きして欲しいと願うのは当然で。

 だから加減したと断言するロロ。

 聞くところによると、ブレスは見た目派手でも威力はそこそこで押さえてあるそうです。

 事情を知らなくても躊躇いなく攻撃する子竜、ロロイ。

 それでも咄嗟に打算を働かせるあたり、賢い子に育ちつつあるようです。



 ドラゴンブレス炸裂の瞬間。

 ロロイ曰く、見た目派手でもそれ程に威力は強くないとのことですが。

 それでも竜のブレスに違いはなく。

 派手な割に強くなくても、それでもやっぱり攻撃力がない訳でもなく。

 吹っ飛んだ青年達は目を白黒させていました。


 青年達はそれぞれ、素晴らしい反射神経と瞬発力、そして時の運を見せてくれまして。

 何しろ軽い怪我はただの擦り傷、一番酷くて軽い打ち身という軽傷。

 あの吹っ飛ばされ具合なら、軽く骨折くらいはしているかと思ったんですけど。

 何たる強運。

 彼等には何かが憑いているのかもしれません。

 

 勇者様は攻撃を食らう瞬間、咄嗟に地に伏せていました。

 お陰で攻撃をまともに食らうことはなかったようです。

 しかしそれでも吹っ飛ばされたのはご愁傷様でした。


 センさんはまともに受けていましたね。

 だけどロロイからは少し距離があった為、少々衝撃が少なく済んだようです。

 後、他三名が吹っ飛ばされた後だったので、多分若干威力が弱まっていたんでしょう。

 

 リス君はお義父さんの教育の賜物でしょうか、攻撃を悟った瞬間には全力で防御姿勢でした。

 彼も村にいた頃のロロイを知っています。そして、今は未だ子供であることも。

 成竜に比べればマシだと鑑みてちょっと侮っていたみたいですが、対応はソレで正解でした。


 そしてもぉちゃんは豹の獣人として卓越した瞬発力と野生の本能を持っていますから。

 コマは逃げるなと言われていたのに、気付いたら全力で回避行動に出ていました。

 即ち、逃走。しかしブレスの効果範囲を逃げ切れるほどの時間は稼げず、撃破。


 吹っ飛ばされたのは勇者様から順に、もぉちゃん、リス君、センさんの順です。

 でも全員が同じくらい吹っ飛ばされました。

 ご愁傷様と言う他に、何と言いましょう?

 いのちをだいじに、と吹っ飛ばしたロロイが呟き目を閉じた。


 ん? 今回の判定はどうなったか、ですか?

 もぉちゃんがコマの癖にマス目から退避したので、センさんの判定勝ちになりました。

 なので、次に賽を振るのはセンさんです。

 逃げなかった勇者様、頑張ったね☆

 あの攻撃を前に逃げなかった彼を、居合わせた全魔族が褒め称えて拍手を送りました。


「………拍手よりも、回復薬が欲しい」


 残念ながら、そんな呟きは拍手に紛れて拾われなかったけれど。


 



☆ 二回目 ☆


 全身ずぶ濡れの体を重そうにしながら、センさんが賽子を受け取った。

 そして心底嫌そうに賽を振ったのだけど…


 出目:六


 おおう、と一番大きな数が出たことに皆が身を乗り出して。

 指定された数だけ、勇者様がマス目を進んで。

 そして、

 マス目に書かれたお題は、


 お題【村長さんのお宝をこっそり持ってくる】


 先程以上の、静寂。

 中途半端に盛り上がっていた気勢も全て地に落ちました。

 しんと静まりかえる観衆。

 頭を抱える勇者様は、言葉にならない呻きを上げて。

 もぉちゃんは両手で顔を押さえてしまって。

 リス君は固まっていました。


 そして我が父との接触が未だ少ないセンさん。

 彼は少し気まずそうながらも、そこまで深刻そうな顔はしていませんでした。


 センさん、甘いよ…。

 お父さんは確かに、人間だし。

 そこまで強そうにも見えない、村長さんですが。

 そのお説教が、どれほど胸に突き刺さるか…

 

 センさんは、知りませんでした。

 村長(とうさん)が、先代・当代の二代にわたる魔王親子に取って頭の上がらない唯一の人間だなんて。

 それどころか、大多数の魔族にも尊重されるような人だなんて。

 魔境で名士と呼ばれるような人です。

 侮ってかかって良い相手ではないのに。


「誰だよ、このマス目書いた奴…」

 私の隣で、まぁちゃんも青い顔をしています。

 マス目のお題を書いたのは、不特定多数につき誰か分かりませんが。

 誰か本気で、四人の誰かの命を狙っているのでしょうか…?

 そんな疑念を持たずにはいられません。

 しかし、書かれていることがヤバイからと、免除するのも此方の面子に関わります。

 どうか穏便にと、願わずにもいられませんが。

 このお題を、決行することにしました。

 だってそうしないと、例外を作ったら双六への真剣味が薄れちゃうし。


 さて、勇者様ともぉちゃんは双六のコマとして参加しています。

 コマはマス目を動けません。

 …と、先程まぁちゃんも決めたことだし。

 今回はセンさんとリス君のお二人で行って貰うべきなのですが。


 →センさん:ヤバさを理解していない。

 →リス君:何かを悟ったような目をしている。


 ………大丈夫かな。


 色々と不安は残るものの、二人は解き放たれました。

 宝物という言葉に惑わされ、変な物を持ってこないと良いのですが…

 ………と、あれ?

 変ですね…?

 センさんは真っ直ぐに我が家へ向かって一目散しちゃいましたが。

 何故か、リス君がこっちに向かってくるような…?

 意図が分からず、隣のまぁちゃんを見上げたら、 

「…まあ、俺でもそうするな」

 まぁちゃんはリス君の考えが分かるのか、頷いていて。

 そうこうする内に、リス君が私の目の前に…

 ………って、もしや。

「リアンカ、こっち」

「って、宝物って私!?」

 うわ、リス君うまい!


「その手があったか…!」

 距離のある場所、双六のマス目の上で。

 勇者様が頭を抱え、もぉちゃんが歓声を上げていました。


 私は紛れもなく村長の実子で、一人娘。

 実質どうであろうと、お題は宝物。

 妻子を宝か否かと聞かれて、面と向かって否と言える人は早々いない。

 って言うか、妻子の目の前でそんなことを言う男がいたら鬼ですよ!!

 家庭内戦争の勃発を恐れて、世のお父さんなら誰でも保身に走るところです。

 一番の宝物じゃなかったとしても「宝物だ」と断言せざるを得ないでしょう。

 本人がいなくても、周囲に「宝物だよね?」と聞いた時に同意を返さない奴もいないでしょう。

 誰になんと聞こうと、問答無用に誰もが認める「宝物」です。

 …宝物と言われる方としては、ちょっとどころでなく恥ずかしいけど。

 よく見たら、周囲の人達も皆、うんうんと頷いているし。

 人間なので、自由意思というものがありますから。

 持ち出されても誰も文句を言わない宝物、此処にいました!


「………リアンカ、ちょっとよく分かってないよな」

「ああ、誰がなんと言おうと問題なく村長さんの宝物だって」

「村長さん、隠れ親馬鹿だから…」

「結構甘やかされてるし、可愛がられてるのにな」

「あの村長さんだ。実の娘でも『親馬鹿』って言葉とは繋がらないのかもな」


 人混みの中から私の名前が聞こえた気がしました。

 でも、何を言っているのかはよく聞こえませんでした。

 でも、父さんの宝物として進み出るのは凄く恥ずかしい。

 娘として、父さんに愛されていないことはないと思うんだけど…

 なんだか自意識過剰のファザコンぶってるみたいで、居たたまれない…。

 そんな私の心情を他所に、リス君は涼しい顔。

 更に用意周到に、観客に混じっていた母まで見つけ出してしまいました。

 母さん………。

「奥さんも、来てくれ」

「あらあら、まあ。私も? リアンカちゃんだけで充分じゃないかしら~?」

「村長さんの宝物、一つで良いとは言われてないよ」

「うふ…嬉しいわね。あの人、どんな顔するかしら!」

 少女のように嬉しそうに微笑んで。

 いい年した我が母も、リス君の手に引かれ。

 両手に村長の妻子を連れたリス君が、センさんよりもずっと早くゴール!

 センさんは、未だ影も形も見えない…。


 それから少しして、センさんはぐったりした顔で帰還しました。

 ……手に、なんかどっかで見たことのある物体を持って。

「あらあら…」

 母さん、口に手をやりちょっと吃驚。

 私はぐったり。

「センさん、なんてものを…」

 彼の手にあった物は、キラリとメタリックな鋼色の立方体。


 父さんの部屋にあったはずの、金庫ダイレクト。鍵はどうした。


 この男は、金庫ごと持ってくるとか…横着な。

 いや、それ以前に金庫を持ってくるのはどうなんでしょう。

 元に戻したとしても、確実に父さんにバレますよ。持ち出したの。

 それにあの中に入っているのって確か…

「母さん、アレの中身って…」

「村の収益に関する帳簿と、裏帳簿だったかしら?」

「裏帳簿…?」

 リス君が眉を寄せて難しい顔。

 だけど、それだけだったかな…?

「いや、それだけじゃなかったよね」

「あと、損益に関する書類がいくらと…先代魔王さんの弱味が幾つか? それから…」

「待って、先代魔王の弱味って超気になる…!」

「うふふ…あれはお父さんと先代魔王さんだけのヒ・ミ・ツよ…?」

「秘密って良いながら暴いて見せろと言わんばかりに意味深な…」

「いや、それ以前に裏帳簿って…」

「細かいことを気にしてたら禿げるよ、リス君」

「そうねぇ。リス君はただでさえ猫っ毛だから…今ある髪の毛、大事にしなきゃ駄目よぅ?」

 親子で意味ありげにリス君の黒髪を眺めていたら、リス君が黙りました。

 毛根が気になりだしたのか無意味に自分の髪を弄りだして…

 リス君も困った顔をしているので、後で毛根によく効く洗髪剤を届けてあげようと思いました。

 まあ、リス君の髪は結構丈夫なので、あと三十年は大丈夫だと思いましたけどね。


 さて、二巡目の判定です。

 リス君が用意したのは、村長の妻子。

 センさんが用意したのは、村長の金庫。

 金庫の中身は確かに(村にとって)大切な物。

 だけど、それが父さんの宝物かと問われると?マークが乱舞します。

 なんだか勝負の結果は見えていますね。

 勇者様が地面に突っ伏して頭を抱えています。

 まるで、雷でもやり過ごそうとするように。

 …先刻のドラゴンブレス(水)のせいで地面が微妙にぬかるんでいるんですけど。

 彼等はそれで良いんでしょうか。


 勝負の結果は見えていましたが、一応判定の為に父さんが呼ばれました。

 センさん、引導を渡される時ですね…。

 本人も失敗したと思っているようで、顔が青いです。


 そして、センさんの脳天に『村長の拳骨』が炸裂しました。

 

 センさんは、地面にめり込んだ。


 思わぬ威力に、私も吃驚(びっくり)

 私、お父さんに殴られたことないからなー…。

 実際に喰らってどうなのかが、私には分かりませんでした。


 …でも、それで済んで良かったね、センさん。

 頭を抱えてのたうち回るセンさんを、皆で温い目を持ってして見守りました。



 三回目の賽を振ったのは、リス君。

 出た目は、二。

 お題は脱走した三毛猫【ドラ】の捕獲。

 もぉちゃんが猫科動物のネットワークを活用して捕獲。


 四回目の賽を振るのもリス君。

 出た目は、五。

 お題はナンパで女の人を三人連れてくること。

 今回はセンさんが勇者様の存在をちらつかせてさっさと三人捕獲しました。


 五回目の賽を振るのはセンさん。

 出た目は、一。

 お題は………

 センさんの引いてしまったお題に記された命令は………


 お題:

 りっちゃんの目の前でヨシュアン画伯著作「新米女教師りっちゃん(以下略)」を音読すること。


「………………………マジか」

 リス君の、絶望の声がした。

 センさん、運が悪すぎです。


 場の空気が、再び重苦しい沈黙に包まれました。

 物凄く息苦しくて、今にも(あえ)いでしまいそうです。

 言わずとも分かります、皆が同じ気持ちだということ。

 皆は、一度に同じことを思いました。

 終わったな………、と。


 本当に、誰か彼らを殺す気なのでしょうか。

 そんなに忌々しい人がいたかな…?

 洒落にならない処か、殺意を感じました。


 結局五回目ではどちらもお題を達成できず。

 というか、題名を読んだ時点で逃亡する羽目になり。

 六回目の賽は、再び私が振りました。

 出目は、三。

 二組とも三つ進み、お題は先に進んでいる方のマス目に挑戦して貰うこととなりました。


 お題:一輪車で火の輪くぐり


 何故でしょう。

 先程のあれと比べてか、物凄くほっとします。

 挑戦する人達は殊更の様で、どことなし嬉しそうな顔。

 麻痺してる、麻痺していますよ、感覚が。


 火の輪くぐりに関しては、もぉちゃんが本職顔負けの曲芸を見せてくれました。

 姿も豹なので、そのまま大道芸に売り飛ばせそうな感じ。

「第二の人生目指してみるか?」

「売られてたまるか!!」


 こうして、双六は時に肝を冷やしながら粛々と進み…



☆ 二十四回目 ☆

 ここまで来る間に、ドラゴンブレス(水)が当たって四人が吹き飛ばされること、実に十七回。

 お陰様で四人は疲労困憊。

 重傷を負っていないのがとっても不思議です。


 この脅威のヒット率は、一体…

 いくらなんでも、頻度が高すぎます。

 双六の題目表を見てみると、あら吃驚(びっくり)

 確率的に三回に一回は「ドラゴンブレス(水)」が当たる計算で。

 誰がどう見ても、作為的デスね?

 誰かが、早く終わらせようとしているとしか思えません(息の根を)。

 誰だ。誰が恨まれているんだ…。

 まぁちゃんと二人、首を傾げて困ってしまいます。

 それよりも更に困っているのは、地面です。

 ロロイのドラゴンブレス(水)が乱発されたお陰で、地面がすっかり水浸し…。

 土に白墨で書いていた線が、すっきり流されてしまいました。

 もう、マス目の枠も見えません。

 なんだかうやむやになって、このまま双六は勝敗を決めることなくお流れになってしまいそう。

 もしや、それを誰かが狙ったのでしょうか…。

 なんだか、物凄く焦臭いです。

 チラリとまぁちゃんを見ると、意味ありげな視線。

「どう考えても、おかしいよな?」

 念を押す様なまぁちゃんの言葉に、私も頷きを返しました。

 ちょっと、怪しい。

 疑わしきところを見出し、探りを入れてみた方が良さそう……かな?


 私達は一つ頷きあい、そっと周囲に探りを入れました。



 

☆ 魔境で今でも語り種の、村長さんの逸話 ☆

    【先代魔王の結婚編】

 

 ある日、魔王(先代)が結婚すると言い出しました。


 結婚式当日のことです。

 しかもできちゃった婚。

 この時、お腹の中にいたのがまぁちゃんです。


 それまで二人が付き合っていたことは誰も知りませんでした。

 それどころか、先代魔王に恋人がいたことすら知らなくて。

 結婚式当日にいきなりそんなことを言われて、村長さんも固まります。

 おまけに村長さんが二人の結婚を知ったのは、当日の朝に届けられた結婚式の招待状で。

 直接口で報告されたのは、結婚式場で。

 しかも報告であり、許諾を求めるものでもなく。

 先代魔王の結婚相手は、村長さんの兄弟だというのに。

 思わず首を絞めそうになりましたが、目出度い結婚式の場で、村長さんも暴れるわけにはいかず(←先代魔王の計算)。

 うやむやに結婚されてしまいました。


 その、数日後。

 魔族恒例の、武闘大会。

 優勝者には魔王と試合をする権利が与えられます。

 その大会に村長さん出場。

 並み居る猛者を相手に順当に勝ち進み、ついには優勝。

 先代魔王、顔面引き攣り。

 そうして決戦の火蓋が落とされ…


 試合の場で、村長さんは試合開始と同時に先代魔王の顔を一発殴りました。

 そのまま、殴っただけで試合続行辞退。

 一発殴れば満足とばかり、何も言わずに試合を放棄して帰ってしまいました。


 それ以来、先代魔王は村長さんに頭が上がりません。

 魔族は村長さんの武勇を褒め称え、漢としての名を上げたわけです。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 副団長のベスト32で久しぶりの快挙、の前が村長さんの優勝なのかな? ってか優勝出来るってどう考えても人間をご卒業あそばされてますよね? 初代の人間離れした血、全然薄まってませんよねw リ…
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