『空飛ぶクジラは』
『空飛ぶクジラは』
ゆったりと空をたゆたうクジラに僕は問いかける
『なぜキミはそこにいれるのか』と
でもクジラは答えない
※
幼い頃は素直ないい子だと褒められた
でも今は素直さは相手にとって扱いやすいかどうかのただの指標にしかならない
嘘をつくことは悪いことだと教えられた
でも今は嘘をつかなければうまく生きていくことはできない
友達はたくさん作ったほうがいいと教わった
でも今はたくさん作ったほうがいいのは自分に利益をもたらしてくれる人だったりする
※
普通だったことが普通じゃなくなる
普通じゃなかったことが普通になる
『普通』
『常識』
『当たり前』
僕が変わったの?
それとも世界が変わったの?
おそらくどちらも吸い寄せられてる
僕も世界も普通や常識といった歪な中央へと迎合していく
クジラは空を飛んではダメなのだ
※
ゆったりと空をたゆたっていた何かに僕は問いかける
『どうしてキミはそこにいれたのか』と
でもクジラはもういない