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■3■

神沢村に遊びに行ってから、友人が二人亡くなった。彰夫たちは、得体の知れない不安を抱え始める。

 彰夫のケイタイが鳴った。

『彰夫、竹羽田って、この前遊びに行った仲間だよな』

 相手はカツと呼んでる仲の島岡克則。

 彼は山形県出身で、幼少の頃から中学生まであの神沢村で過ごしている。

 いい遊び場所がないか探していた彰夫に、島岡が提案したのがあの場所だ。

『ああ……そうだけど』

『その後は? 遊んだか?』

『いや、あいつバイトが忙しくて、何度か一緒に昼飯食ったくらいか』

 大学生の多くはアルバイトをしている。

それは彰夫も同じだし、島岡もそうだ。

 もともとは島岡も神沢村に行く予定だった。しかし居酒屋のバイトがかき入れ時期どきという事と、時期外れのインフルエンザにかかったバイトがいて、その代行として出勤が決まり、けっきょく休めなくなって直前で辞退したのだ。

『そうか……なんか、わかんねぇもんだな』

 島岡と竹羽田幸樹は特別に普段から交友関係があるわけではなかったが、以前にも同じメンバーでスノボに行った事はある。

 勿論その時は、島岡も一緒だった。

『ああ……』彰夫は、僅かに息を呑んで

『カツ、その前に死んだタケルもさ、あん時の仲間なんだ』

『そう言えばそうだよな』

 彰夫はケイタイを握りしめる。

 汗で滑り落ちそうな気がしたから。

『なんか気味悪いって、美登がさ』

『お前ら……』島岡が言葉を呑み込む。

 遠くの大通りから、救急車の走る音が聞こえていた。

 まだ夜更けには程遠い闇の中で、夜の喧騒が慌ただしかった。

『なんだよ』

『いや……明日、昼飯で会おう。伊達屋で』

 伊達屋とは、大学近くの定食屋だった。安くて量のある、よくありがちな定食屋。

『ああ……』

 彰夫はケイタイをジーンズのポケットに入れ、手のひらを太ももで拭った。

 少し開けた窓から入り込む6月の夜風は、まだ涼しかったのに。


 朝早く、彰夫のケイタイが鳴った。

 昨夜閉め忘れたカーテンの隙間から、陽射しが入り込んでまぶしい。

 寝ぼけ眼でケイタイを覗き込むと、相手は美登だ。

 彼が通話ボタンを押した途端『彰夫っ、涼香がっ』

 彼女は叫ぶように言った。

『落ちけよ。涼香がどうした?』

 嫌な予感がした。

 これまでのくだり、これから伝えられる事態にはおのずと予想がついた。ついたけれど、それが外れればいいと思った。

『今、涼香の家に寄ったら……』

 涼香が亡くなった。

 嫌な予感ほど当たってしまう。

 これで3人目。

 あのバーベキュウに行ったメンバー。

 神沢村に行ったメンバーが、この1か月ちょっとの間に、3人も死んでしまった。

 彰夫は目を伏せて、少し落ち着いてから顔をあげる。

 カーテンの隙間から、初夏の陽射しが部屋に差し込んで場違いに清々しい。

 不安で胸の奥が重苦しい。

 彰夫は、別に暑くもないのに額に大粒の汗を浮かばせた。






   つづく…




お読みいただき、有難う御座います。

二日にいっぺんくらいの更新でいこうかと…。

宜しくお願いいたします。

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