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辿り着いて〜前編〜

辿り着いたのは田舎の領だった。

見渡せば広がる田園、小高い丘に領主の屋敷があり、それを囲むように領民の家々が連なり、さらにその周りを田畑が囲む。

そんな土地だった。

しかし、田舎といっても王の継承権を持つ領主の収める領ではあるらしい。

いわゆる、辺境の公子……とはいっても、本人は子というより中年といえなくもなかったが。

そんな領主は領の民と繋がりを大切に思う希有な存在であり、そんな彼が治める地はとても和やかな時が流れていた。

ともかく、名も無き人形はそんな地に辿り着いたのだ。

「やぁ先生、いい天気ですねぇ」

「おはようございますロベルト、畑のほうはどうですか?」

「いやぁ、先生の言った通りに作物を植えてみたら大分良くなりましたよ」

「それは良かった」

それではまた、とロベルトに手を振る。

初めは異貌ともいえる私に馴れていなかった彼らも、今では良い友好関係を築けていた。

もとより、自動人形とは異貌なのだ。

私で例えるならば、背丈は250cmを超え、肌は異様に白い。

人らしく作られる私達は、カバラのゴーレムのように創造主に従い守る役割も持つ、補足するなら大きいほうが作りやすいというのもあるらしく、肌の色に関しては所詮人形であるということだ。

しかし、この領の民は優しい心の持ち主だった。

名前も語らぬ……いや、名前も語れぬ私を、領主領民揃って受け入れてくれた。

今では『先生』などという名称で呼ばれている。「せんせぇ〜」

トッという音と共に足に軽い衝撃を感じ、私はゆっくり振り返る。

そこには尻餅をついて私を見上げる、この領の領主の息子がいた。

「トッド、毎回体当たりはやめてくれないか?」

「ん〜……せんせぇが肩車してくれたらいいよ?」

イヒヒという擬音語が似合う笑顔を浮かべ、トッドはその手を精一杯私に伸ばしてくる。

そして私はやれやれと思いながらも彼を持ち上げ、肩にのせる。

個人的には肩車の時に髪を掴むのはやめて欲しいのだが、軽い溜め息を吐いて再び歩を進める。

逆らいたくとも、私は彼には逆らえない理由もあった。

「せんせぇ、ここには馴れた?」

「トッド、その話は563回目だ。いい加減必要性を感じない」

「えへへ。せんせぇ何言ってるかわかんない」

父譲りのちぢれた金髪を風にそよがせ、トッドは満面に笑みを浮かべているのだろう。

「ね、せんせぇ」

「……なんだ」

「僕ね、昨日ロベルトおじさんに褒められちゃった」

「なんて?」

「よくせんせぇを見つけてきたって」

「……トッド、その話は一昨日も聞いた」

「そうだっけ?」

「補足すると、その話題は244回目だ」

「せんせぇ、僕よくわかんないや」

後で少し勉強でも教えてやろうなどと思いながらトッドを見上げると、とうの本人は右手で鍬を振るお爺さんに手を振っていた。

「ね、せんせぇ。どこへ行くの?」

なかなか遅い疑問だと思った。

そもそも、この子は五歳という年齢のわりには精神が育ってなくはないか?

いや、まだ五歳ともいえるのだが……

「せんせ?」

「すまん、考えごとをしていた。一応、目的地は師父のところだ」

「そっか。えへへ、実は僕もお父さんに言われて師父のところに行くの」

「だろうとは思ったよ」

師父とはこの領で唯一の異人だった。今では私もいるので、もう一人の異人というべきか。

彼は50を超えんとする年齢でありながら、東方の国の武術家だった。

そして、今では私の師父である。

「そういえば、せんせぇと初めて会ったのも師父の所だったね〜」

「ドット、その話は……いや、その件は感謝している」

「えへへ」

ここに来て何回目かの感謝を言っているのだが、流石にこれだけは何度感謝しても足りないだろう。

「でも、ほんとにびっくりしたんだよ?せんせぇ」

時は遡る




あれから、何日たっただろうか?

私は道ならぬ道を歩き続けていた。

精気(オド)が少なくなってきたな……」

手には最低限の荷物――「父」の工房から少し歩いた所にあった「父」の住居から拝借した物――を持ち、ひたすらに山を下りてきたのだが、川伝いに歩いてきたというのに一向に町に着かない。

人間よりエネルギー効率がいいとはいっても、動くのに何も必要ないというわけではない。

私に限っていえば人間と同じように、食事をとらなければ精気(オド)が欠乏し、停止してしまう。

壊れる。死ぬ。とは違うがいつ動けるかは分からなくなる。

こんな人もこないような所ならば尚更だ。

「しかし、残存食料は無し、か……」

ギヤが軋む。

疑似血液の循環が遅くなりはじめる。

「どうやら、一時停止、か……」

私が暫く活動を停止しようと近くの木の幹に腰をかけた時だった。

「おじちゃんだ〜れ?」目の前に一人の子供が現れたのだ。

クシャクシャの金髪に碧の瞳を輝かせ、何をしていたのか大粒の汗を額に流し、男の子は私を見下ろしていた。

「……名前はない」

「ふ〜ん」

男の子は私を見ると、なにが楽しいのかその顔に満面の笑みを浮かべていた。

「小僧!どこ行きやがった!?叱らないから出てきやがれ!」

どこからか、粗野な感じの声がした。

どうやら、状況からいって少年を探しているらしい。

そして、その予想は正しかったらしい。

「こんな所にいやがったか小僧!って、誰だ?この御仁は」

「しらない」

「知らないっ、て小僧……おまえ……」

少年の後ろの茂みから姿を現した男は、私と男の子を見て、何かあったと思ったらしい。

どうやら普段から振り回されているらしく、彼は神々しく光るその頭を軽く押さえながら溜め息をついていた。

「おい御仁、どうしてこんな所で倒れていやがる」

「……行き倒れる寸前だから、と言えばいいかな?」

「そうか、残念だったな御仁、来世で会おう」

そういうと彼は両手を合わせて私に礼をした。

たしか、東の国では挨拶か葬儀の時などにする行為のはずだ。

なかなか薄情な男らしい。

「いきだおれってなに?」

「腹減ったり色々して旅の途中で死ぬ事だ」

「ええっ!?死ぬってたいへんだよ!ご飯あげなくちゃ!」

「いいか小僧、ここでこの御仁が死ぬのもきっと運命なんだ。だから、さっさと帰るぞ?」

そういうと彼は体を翻した。

本気で帰るつもりらしい。

私は、いっそ清々しくさえ思えてしまった。

しかし、男の子はそんな男の態度が気に入らなかったらしく、男の足にしがみついたり、蹴ったり、殴ったりしていた。

しかし、そのどれも男にはダメージを与えているようには見えなかった。

そして、男の子が息をきらした頃だった。

急に

「ねぇ、師父」

「なんだ?」

「〇〇〇、〇〇〇〇」

「!?」

「えへへ〜」

「小僧、それは誰に聞いた?」

「お父さん」

「やっぱりかあの野郎!」

「それで師父、どうする?」

なにやら聞き取れなかったが、どうやら男の子は男の弱点を握っているらしかった。

子供のくせに末恐ろしいと感じたのは恐らく私だけではないだろう。

ともかく、男の子の言葉で男は毛もない頭を困ったように掻いていた。

かと思うと突然私の体が持ち上げられた。

「あ〜クソッ!運べばいいんだろ?運べば!」

「ありがとう師父〜」

「ってか重いしでかいな御仁!?足引きづっちまうがそれくらいは堪忍しろよ?」

私としては、総重量200キロある私を背負う男に驚きを覚えるのだが、どうやら会話機能も停止してしまったらしい。

そんな私を見て、どうやらなにか勘違いしてくれたらしく、男は急いで私を運び出した。

森を抜け、田畑を過ぎ、民家を超えて、私は小高い丘の上の屋敷に運ばれた。

「お父さん!いきだおれの人連れてきたの!ご飯あげて!」

どうやらそこは男の子の家らしかった。

一緒についてきた男の子は、扉を開けるなり館中に響き渡るような声で叫んだのだ。

そして、それに対する反応はすぐにかえってきた。

「なにぃ!?それは大変!客室に運べ!」

男の子によく似た男だった。

クシャクシャの金髪に立派なカイゼル髭を蓄え、子供のような瞳を輝かせていた。

「おいミーナ!オートミール速攻で作ってきてくれ!」

「かしこまりました、ご主人様」

手近なメイドに指示をとばすと、彼は私を背負っている男を手伝いにきた。

「おいあんた!大丈夫か!?痛い所はないか!?ないな?

ならよし!」

なにやらおかしな連中に囲まれたようだが……結果として、私は活動の維持を可能としたのだった。

中途半端に終わりましたな。

でもね?

携帯で書くのは辛いんです(ρ_-)o

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