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【配信デスゲーム】モンスターに弱いオワコン侍、探索者同士の殺し合いでは最強でした~古流剣術は人を斬るための技だった~  作者: 緋村 獏


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7/10

負けたのか?


 そっと通路を覗いた。


ゴォッ!


「っぶね!」


即座に顔を引っ込める。火球が鼻先を横切った。

髪の毛が焦げる匂い。あと数センチ遅れてたら顔面だった。


相手パーティも、通路の向こう側から動く気はなさそうだ。

狭い通路を挟んで、お互いに手が出せない。


「こりゃ冷戦だな……」

「しばらく動けそうにないね」


リンが壁に背を預けて座り込んだ。


こっちから突っ込めば火球の的。向こうも出てくればガロの盾と俺の刀が待ってる。

どっちも先に動いた方が不利。

当分、動きはねえな。


「ふう……もう大丈夫でござる」


ガロが肩を回した。火傷の跡はアオイとミオの回復で塞がっている。

動けるなら、まあ良かった。


「リンさんも少し火傷してる。回復するね」


ミオがリンの腕に手をかざした。柔らかい光が傷口を包んでいく。


「うん! ありがとね」

「……ミオも腕」


アオイがミオの袖をめくった。

火傷していた。盾の爆炎が飛び散った時にやられたんだろう。赤く腫れている。


「……ヒール」


アオイの手が光って、ミオの腕の火傷が消えていく。


「……自分にもかけていい」

「あ……ありがとう」


ミオが照れたように笑った。

アオイがミオの頭を撫でた。無表情のまま。


こいつら、いつの間に仲良くなってんだ。


とりあえず……しばらく動きはなさそうか。

通路を挟んで膠着。向こうが出てこない限り、こっちも出る必要はない。


壁に背を預けた。少しだけ、息をつく。


「カナエ殿は頼りになるでござるな。昔っからでござるか?」


ガロが隣に座りながら訊いた。ミオに目を向けている。


「うん、いじわるされてる時はいっつも助けに来て、追い払ってくれてた」


ミオが笑って答えた。


「さすがカナエ殿……愛でござるな」

「ちょ、ちげえっつの! ミオがどん臭いから……」


そんな時もあったか。

最初は、ミオにずっと守られてた方だけどな。


『青春かよ』

『あまずっぺ』

『ガロ聞き上手すぎる』


「私も昔話聞きたい!」


リンが身を乗り出した。


「カナエの道場でずっと一緒に剣道やってたんでしょ? カナエのお父さんがお師匠さんなの?」

「おじいちゃんがお師匠さんだよ」


ミオが答えた。


「すごく居心地良くて、ずっと居させてもらってたなぁ」


目を細めて笑った。懐かしそうに。


「お守りもお師匠さんからの頂き物でござるか?」


ガロがミオの腰の脇差に目をやった。


「ううん、これはカナエちゃんからの預かり物」

「カナエ殿、妻想いでござる……」


おいおいおい。もう突っ込まねえぞ。


『妻想い侍』

『もう結婚しろ』

『リンちゃん蚊帳の外で草』


「蚊帳の外じゃないし!」


リンが画面に向かって吠えた。


「みなさん……ガロさんはどうしてこのパーティに?」


ミオが話を振った。こういう気遣いはできるんだよな、こいつ。


「拙者は元々、歴史に出てくる侍が好きだったでござるよ」


ガロの目が輝いた。デカい体を揺らして、嬉しそうに語り始める。


「カナエ殿と会った時はそれはもう感激。この時代に侍に出会えるなんて、夢にも思ってなかったでござる」

「今は対モンスターの時代だもんね」


リンが笑った。


「私はどーしてもキャスターが必要なんだ! ってカナエに誘われたのが最初かな」

「アオイ殿は拙者が加入を頼み込んだでござるよ」


アオイは親指を立てている。


俺は通路の方を警戒するふりして聞いてた。


懐かしいな……。


ガロが最初に声かけてきた時、侍の格好してきたっけ。

袴に鉢巻き巻いて、「拙者を家臣にしてくだされ!」って。

初対面で家臣って何だよ。でかい図体で正座して、額を床に擦りつけてた。

断れるわけねえだろ、あんなの。


リン誘った時も土下座したっけな。

「キャスターがいないと配信が地味で死にます」って。

リンに「地味なのはあんたの顔でしょ」って返されたの、今でも覚えてる。

それでも来てくれたんだよな。


アオイは……ガロが連れてきた時、一言も喋らなかった。

自己紹介が「……アオイ」だけ。

最初の配信でもずっと無言で、コメント欄が『botかよ』って騒いでたっけ。

それが今じゃ親指立てて意思表示してんだから、成長したよな。たぶん。


こいつらのおかげでなんだかんだ楽しくやってきた。

 

そうだよ。

こいつら、いいやつすぎなんだよ。


俺がやらねえとな。


「きゃあ!」


ん? 悲鳴?


全員の体が固まった。

通路の奥。何かあったか。


ドォン。


地面が揺れた。

壁から砂がパラパラと落ちてくる。

戦ってる……。


結構近い。この通路の先か?


ガロが立ち上がった。盾を構える。

リンの手に赤い光が灯った。

アオイがミオの前に立った。


「カナエ! キルログ!」


リンが叫んだ。配信画面を指差している。


【 KILL 】ゆめふわダンジョン → 鉄壁のアルカディア


「多分さっきの奴らだ!」

「え、どっち!?」


リンの声が裏返った。


「わかんねぇ、くっそ……どっちだ」


パーティ名どっちも聞いたことねえ。

さっきの奴らがゆめふわだったか? それとも——


通路の奥から、声が響いた。


「こいよー!」

「そっちいるのわかってるぜ!」


軽い。余裕のある声。

だいぶ慣れてやがる。

 

この声、さっきの奴らじゃない。

あのリーダータンクの声じゃない。


まじか。

負けたのか、あいつら。



 

――――

 


『え、アルカディア落ちた?』

『さっきのタンク硬かったのに』

『どこがゆめふわやねん』

『こいよーって聞こえたけど』

『アルカディア食ってレベル上がってんぞこいつら』

『これ詰んでね?』

『逃げろ逃げろ逃げろ』

 


――――

 


【配信】封鎖ダンジョン総合★75【バトロワ】

【悲報】黄金拳、開始3秒で全滅wwwwwwww

【速報】ドミネート宇宙さん、2パーティ目を破壊

【議論】殺し合いルールのレベルアップ検証スレ Part.2

ラスト侍KANAEアンチスレ ★4

【悲報】ダンジョン食堂ポポ、ドミネートに食われる

【朗報】オワコン侍、4キルで覚醒wwwww

ましゅまろ女子会ファンスレ【追悼】

MIOとかいうヒーラー可愛すぎ問題

【検証】コメント欄で偽情報流して誘導できるか試すスレ

【緊急】鉄壁のアルカディア、ゆめふわに食われた模様

ラスト侍KANAE応援スレ ★2

【考察】魔王の正体と目的を考えるスレ Part.5

赤月リンちゃんの魔法まとめ&切り抜きスレ

【悲報】企画じゃない説、ガチでありえる

 

【読者の皆様へのお願い】



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