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【配信デスゲーム】モンスターに弱いオワコン侍、探索者同士の殺し合いでは最強でした~古流剣術は人を斬るための技だった~  作者: 緋村 獏


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チキン侍


 漁夫って……

そうだ。あいつら、だいぶ体力削れてる。


ヒーラーを庇って前に出たタンクは、腕から血を流している。

キャスターも火球の勢いが落ちてきてた。

剣士は無傷だが、息は上がっていた。


チャンス。

たしかに……チャンスかも。


今なら、勝てる。


カタカタ……


震えてきた。

手汗がヤバい。柄を握る指が滑る。

ああ、止まんねえ。


「どうする? い……いく?」


リンが小声で訊いてきた。顔が青い。


「まって……ちょい、ちょいまって」


深呼吸だ。落ち着け俺。

スゥ……


カタカタカタカタ。


駄目だ。息を吸っても震えが止まらない。

膝が笑ってる。

くそっ、止まれっての。止まれクソ!


「回復終わっちゃう! カナエ!」


リンの声が焦りを帯びた。

見れば、向こうのヒーラーがタンクの傷を塞ぎ始めている。光が傷口を覆っていく。


「わかってるって!!」


今だ。今しかない。

あと数秒で、あいつらは立て直す。チャンスが消える。


足、動けって。クソ!


俯いて、足の震えを抑えようとする。太腿を拳で叩いた。

動け。動けよ。

あーくそ、怖えよちくしょう……。


 

ポン、と肩を叩かれた。

頭を、撫でられた。


ガロの手。アオイの手。


顔を上げた。

相手はもう去った後だった。


最悪だ……俺、そんな時間チキってたのかよ。


「あーあ、チャンスだったのに」


リンが長く息を吐いた。


「わりぃ……」


「もう謝んないでよね」


リンが顔を伏せた。


「ごめん……私も怖くて動けなかった」


沈黙が落ちた。

誰も動けなかった。


『ないわー』

『これはオワコン』

『チキンかよ』

『ガチ千載一遇だろ』

『侍なら突撃しろや』


「ざけんな人殺しだぞ! んな簡単にできてたまるかよ!」


思わず叫んだ。声が裏返った。


いや、まあ、ガチでチャンスだったけど。

いきなり殺し合いしてるあいつらの方が頭おかしいだろ。


「まって、配信見て!」


リンが画面を指差した。

横にログが流れている。白い文字が、赤く縁取られていた。


【 KILL 】ドミネート宇宙 → ダンジョン食堂ポポ


「これ……殺したってことか」

「嘘でしょ……」


リンの声が掠れた。


「ダンジョン食堂ポポ、めっちゃ好きなのに……」


知ってる。飯テロ系の配信で有名なパーティだ。

ダンジョン飯を実際に作って食うってコンセプトで、登録者も多かった。リンがよくコラボしたいって言ってた。


そいつらが、殺された。

てか、ドミネート宇宙って……。


遠くから声が聞こえた。


「ヤベェ隠れろ!」


咄嗟に岩陰へ身を投げた。全員が息を殺す。

足音が近づいてくる。


「なぁ、勝ったらなんもらう?」

「俺100億」

「ちっせ、俺1000億いくわ」

「はは、アホやん。俺地球の女全部いくわ」

「ちんちん足りんくね。増やしとく?」


下品な笑い声。

岩陰から、そっと覗いた。


うーわ、ドミネート宇宙だ。ヤバい……。


四人全員、上半身裸。全身に刺青が入っている。

筋肉の上を蛇や髑髏が這っていた。

手には血に濡れた武器。返り血が、刺青の上に新しい模様を描いていた。


笑ってる。

人を殺した直後なのに、笑ってる。


息を殺した。心臓がうるさい。聞こえるんじゃないか。

頼むから静かにしてくれ。


足音が、ゆっくりと通り過ぎていく。


 

永遠みたいな数秒だった。

ふぅ……


「……チキン侍乙」


アオイが配信コメントを読み上げた。抑揚のない声。


「いやあいつら無理だって!レベル上がってたろ!」


しかもあいつら、普段から『モンスターと交尾してみた』とか『捕虜にうんこ食わせた』とか、倫理観がガチで狂ってる連中だ。

人を殺すことに躊躇なんかあるわけない。


つか、全員近接アタッカーってどんな構成だよ。脳筋にも程がある。

どうすりゃいいんだよ、くそ……。


「あ、ねぇ」


リンが声を上げた。少しだけ、表情が変わっていた。


「入り口、行ってみない?」


入り口。

そうだ。このダンジョンには入ってきた場所がある。出口があるはずだ。


「あ、そうだな……ワンチャンあるかも」

 

「……さんせー」


アオイが頷いた。


「拙者も」


ガロが立ち上がる。


「よし、行ってみっか」


俺たちは元来た道を戻った。


――――


「ここ……入り口あった部屋だよな?」


見覚えがあった。ここから入ったはずだ。確かにここだった。


「で……ござるな」


ガロが呟いた。


入り口があった場所には、壁があった。


埋めたとか、そういうレベルじゃない。最初からそこに壁があったみたいに、継ぎ目すらなかった。

構造が変わっている。


やっぱり、そう簡単には出られないか。


「だよね……いこっか」


リンが踵を返した。

部屋を出ようとしたその瞬間——


「きゃあああ!!!」

「きゃあああ!!!」


二つの悲鳴が重なった。


リンが後ろに跳ね飛ぶ。俺も反射的に後退した。


出入り口に、人影があった。

四人。武装している。探索者だ。


敵パーティと遭遇した。ヤバい。


 

全員の荒い息遣いだけが響いている。

向こうも、こっちも、誰も動けない。


俺の心臓が爆音で鳴っていた。頭に響く。

やんのか……怖え……。


目が合った。向こうの斧使いと。

血走った目。恐怖と殺意が入り混じった目。


やめて……頼む……。


敵の斧使いが、斧を振り上げた。


「うおぉ!!!」


来る——


「やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


声が出た。自分の声だと気づくのに一瞬かかった。


体が勝手に動いていた。反射的に抜刀していた。

気づいたら、敵の首元に刃を突きつけていた。


完全にパニックだ。何してんのか自分でもわからない。

相手の喉仏が上下した。唾を飲み込む音が聞こえた。


「やあぁぁぁぁぁぉ!!!!」


「待てい!!」


ガキン!


ガロが盾で割って入った。

刀が盾に弾かれて、火花が散った。


「やらない……ですよね……」


ガロが相手に聞いた。

低い声。威嚇じゃない。確認だった。


相手のパーティは顔を見合わせた。斧使いが、まだ構えを解いていない。


数秒の沈黙。

相手のリーダーらしき男が、頷いた。


「……大きな音を立てたので、人が来るかも」


アオイが静かに言った。


相手のパーティは、仲間と視線を交わした後、引き返していった。

足早に。何度か振り返りながら。


足音が遠ざかっていく。


「はぁ……はぁ……」


助かった……。


膝から力が抜けそうになった。壁に手をついて、なんとか立っている。


刀を握り込みすぎて、指がなかなか離れねえ。


つか。


「やー」ってなんだよ。恥っず……。


 

あ、え、てか。

 

やばい。

 

思い出した、大事なこと……。


 

 

――――


 

『ヤーー!!』

『ヤーーー!!』

『さす侍』

『ヤーは草ww』

『クソワロタww』

『居合からのヤーは反則』

『てか、やれてたくね?』


 

――――


 

【配信】封鎖ダンジョン総合★21【バトロワ】

【悲報】黄金拳、開始3秒で全滅wwwwwwww

【速報】ドミネート宇宙さん、ダンジョン食堂ポポを破壊

【議論】殺し合いルールのレベルアップ検証スレ

 

 

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