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【配信デスゲーム】モンスターに弱いオワコン侍、探索者同士の殺し合いでは最強でした~古流剣術は人を斬るための技だった~  作者: 緋村 獏


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12/24

視聴者B


 画面の向こうで、あやにゃが泣いていた。


ましゅまろ女子会のリーダー。

いつもは「今日のリップ超かわいくない?」って笑ってる子が、顔をぐちゃぐちゃにして叫んでた。


『お願いします助けてください! 全然企画とかじゃないんです!』


声が裏返ってた。

マイクが音を拾いきれなくて割れてる。


……確かに、ましゅ女はこんな企画受けるタイプじゃない。

ゆるくて、平和で、コスメとダンジョン飯の話しかしないチャンネル。

ホラー系の案件すら断ってたの知ってる。


どうしよう。

なんとか——なんとかしなきゃ。


とりあえずSNSに書き込んだ。手が震えてまともに打てない。


『ましゅまろ女子会の配信見てください あやにゃが助けを求めてます 企画じゃないです 本当に誰か助けて #封鎖ダンジョン #ましゅまろ女子会』


投稿。

次に掲示板——


いや待って待って待って。

違う、そんなのあとでいい。


まずあやにゃ達の安全だ。


配信画面に戻って、コメントを打った。


「『まずは身を隠してください、岩陰とか通路の奥とか!』……っと」


送信。

コメントが流れていく。他の視聴者の煽りや茶化しの中に、私のコメントが紛れた。


届いて。お願い。


掲示板をチラッと見た。


『バトロワ企画ってどこの事務所?金かかってんな』

『黄金拳の首CG班有能すぎるだろ』

『ましゅまろ女子会はさすがに演技下手で草』


企画じゃないし。

何言ってんのこいつら。ふざけないでよ。


配信に目を戻した。


『信じてくれてありがとう……とりあえず、岩陰に隠れました』


あやにゃが小声で言った。

私のコメント、見てくれたのかな。

わからない。でも、隠れてくれた。


よかった……。

でも、こんなの女の子4人で生き残れるわけない。

早くなんとかしなきゃ。外から、誰かが動かなきゃ。


『あの……私の実家の住所と電話番号、言います』


あやにゃの声が震えてた。


『誰でもいいので電話して、私の家族にこの状況を伝えてください。お願いします』


住所に、電話番号。

配信で自分の実家の情報を晒すなんて、普通ならありえない。


もう確定だ。企画なんかじゃない。


あやにゃが読み上げ始めた。


『えっと……住所が——』


声が掠れてた。何度も詰まりながら、一文字ずつ絞り出してた。


私はメモを取った。手が震えて字がぐちゃぐちゃになった。


よし——私がかける。


スマホで番号を押した。

コール音が鳴る。長い。永遠みたいに長い。


『はい、どなたですか?』


女性の声。穏やかだった。


『あの、私あやにゃさん——彩奈さんのファンで……』


『あら、ありがとうね。でも電話は困るわねぇ、番号どこで……』


あ、バカだ私。違う違う、そうじゃない。


『あの違うんです! 彩奈さんが事故に巻き込まれて大変なことになってて!』


『——え? どういうこと? 詳しく教えて?』


声のトーンが変わった。


『ダンジョンに入ってたんですけど、中が封鎖されて、殺し合いに巻き込まれてて……』


『殺し合い……? そんな……彩奈は無事なの?』


『今のところは大丈夫です。でも、急がないとまずいです。本当に……!』


『わかった、警察……あと防衛庁にも電話してみるわ。ありがとう、教えてくれて本当にありがとう……!』


『お願いします!』


電話が切れた。

手がまだ震えてる。


よし、これで少し前進……。


配信画面に目を戻した。


「——うそ」


あやにゃの配信画面の端に、人影が映ってた。


上半身裸。全身に刺青。


ドミネート宇宙。


よりによって——最悪の、最低の奴ら。


まだ……バレてないはず。

あやにゃ達は岩陰に身を潜めてる。みんな口を押さえて、必死に息を殺してた。


『ふごふご……なんか雌の匂いするぶー』


ドミネート宇宙のぺろりが言った。


四つん這いで地面に鼻をつけてる。犬みたいに。

嘘でしょ……。


『おい雌おるってよ! 全員ユニフォームなれ、失礼やろが!』


リーダーのキングジョーが叫んだ。

上裸だった4人が、服を脱ぎ始めた。全裸になった。

下半身にまでびっしりと刺青が入ってる。


もう、何もかもおかしい。


お願い、見つからないで……。


『ぺろー、どこやー!』


『ちょいまてーや!! 集中させぇ!!』


ぺろりが怒鳴った。地面に顔をつけたまま、匂いを辿ってる。

這いずりながら、岩陰に近づいていく。


あやにゃ達が震えてるのが画面越しにわかった。

誰も声を出せない。泣き声すら押し殺してる。


『あ、おるおる。近いで』


ぺろりが笑った。


岩陰から、ぬっと顔を覗かせた。

目が合った——画面越しに、私と目が合った気がした。


『おったでー』


軽い声だった。

獲物を見つけた声だった。


『キングー、こっちー。女や女ー』


リーダーを呼んでる。

足音が近づいてくる。重い。複数。


『どーもー! キングジョーーーでっす!』


全裸で現れた。

乳首を指ハートで摘む、下品なポーズ。

ヘラヘラ笑ってる。


あやにゃが飛び出した。


『いやぁぁぁぁぁ!!』


剣を突き出した。キングジョーの脇腹を掠めた。

血が——少しだけ出た。でも、浅い。全然刺さってない。


 

『いってぇやろが!! なんしてくれとんかこんボケが!!!』


キングジョーの顔が変わった。

笑いが消えた。


剣を振り上げた。


『あやにゃ逃げて!!!!!!!!!』


コメントを打った。

打ちながら泣いてた。届くわけないのに。


斬りつけた。

あやにゃの体が崩れた。

他のメンバーの悲鳴が重なった。


もう見てられなかった。

私は目を瞑った。肉を刻むような嫌な音だけが響く。


『なんしてんすかキングー、せっかくユニフォームなったのに』


勇者夜露(よろ)シコがヘラヘラ笑いながら言った。

ドミネート宇宙の笑い声が響いた。


配信が——ブツッと切り替わった。

画面が真っ暗になった。


あやにゃのチャンネルのトップ画面に戻ってた。

ピンク色の背景に、4人の笑顔のイラスト。

「ましゅまろ女子会♡」


涙が止まらなかった。


スマホを握りしめたまま、声を上げて泣いた。



 

どれくらい泣いてたかわからない。


目が腫れてた。ティッシュの山ができてた。


SNSを開いた。

通知が溜まってた。


私のさっきの投稿——リポストが回り始めてた。

でもリプライの半分は「企画乙」「釣り」「はいはい」。


……誰も信じてくれない。


スクロールしていたら——一件、目に留まった。


アイコンは花の写真。フォロワー23人。

プロフィールに「二児の母」とだけ書いてある。


『娘と連絡が取れません。ましゅまろ女子会のメンバーです。先ほどファンの方からお電話をいただき配信を確認しました。あれは演技ではありません。配信に映っているのは本人です。娘の名前は——』


あやにゃの、お母さんだ。


電話した、あのお母さんだ。


投稿にはダンジョンの入口だった場所の動画が添付されてた。

壁になってる。完全に塞がってる。

カメラの奥で、誰かが泣いてた。


『お願いです。これは企画ではありません。娘を助けてください。誰か助けてください。』


私はそのツイートを引用リポストした。


『この方はましゅまろ女子会あやにゃのお母様です。さっき私が電話しました。企画じゃないです。本当に人が死んでます。お願いだから拡散してください。』


投稿した。


絶対に、拡散させる。



 

――――

 


バトロワ企画えぐすぎて寝れんのやがwww今年一番おもろい #封鎖ダンジョン

 ♡ 8,940 ↻ 2,100


あやにゃの泣き顔で抜いたわ ましゅまろ女子会最高のファンサありがとう

 ♡ 312 ↻ 89


てかこの企画の運営どこ?公式アカウントもないしプレスリリースも出てないの普通に変じゃない?

 ♡ 1,408 ↻ 4,205


配信止められないってどういうこと?運営に問い合わせたら「こちらでも原因不明」って返ってきたんだけど。誰か同じ人いる?

 ♡ 67 ↻ 4,892


娘と連絡が取れません。ましゅまろ女子会のメンバーです。配信に映っているのは本人です。企画ではありません。誰か助けてください。

 ♡ 234 ↻ 18,301

 

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