第1章 – 思いがけない初日
ミナセ・ミアの紹介
ミナセ・ミア、星峰学園の“プリマドンナ”。ピンクの長い髪と澄んだ青い瞳で、誰もが一目で彼女の存在に気づく。美しさだけではなく、優しくて礼儀正しい性格もあり、学園の生徒たちから絶大な人気を誇る。
毎日のように告白されるが、彼女は決して軽く応えたりしない。冷たくはない、むしろ柔らかい笑みで断ることで、ますます人々を惹きつけてしまうのだ。
性格は真面目で努力家。勉強でも運動でも常にトップを目指し、何事にも全力で取り組む。友達との時間も大切にするが、彼女にとって最も大事なのは「家族」、特に祖母を幸せにすること。両親を早くに亡くし、祖母と二人で暮らす生活の中で、自立心と責任感を身につけてきた。
友達の宮野志保や雅里リノと共に、学園生活を送りながらも、ミアの心は常に目標に向かっている。恋愛や人気は後回し。だが、彼女自身もまだ気づかない、心の奥に潜む新しい感情――それは、やがて彼女の世界を大きく揺るがすことになる。
星峰学園の廊下を、ミナセ・ミアは軽やかに歩いていた。長いピンクの髪が後ろでふわりと揺れるたび、周りの視線が集まる。美しさだけではない、青い瞳の輝きと、誰にでも優しい雰囲気が、彼女を特別に見せていた。
毎日のように告白されるが、ミアはいつも柔らかな笑みで断る。それでも、なぜか人々の好意は増すばかりだった。
「今日も誰か告ったみたいだね…」後ろから男子生徒のささやきが聞こえる。
ミアは小さく微笑むだけだった。彼女にとって大切なのは人気ではなく、ただ一つ――祖母を幸せにすることだった。両親を幼い頃に亡くし、彼女は自立することに慣れていた。学校での成績や名声も大事だが、それは家族の幸せの次に来るものだった。
教室では、親友の宮野志保と雅里リノがそばにいた。志保は冷静で聡明、リノは社交的で人気者。二人ともミアのことを心配していた。「もっと青春を楽しめばいいのに」と。
「人生はただ楽しむだけじゃない、志保。私は祖母を幸せにしたいだけなの」ミアはある日、二人と帰宅途中にそう言った。
しかし、安定した日常は、新しい転校生が教室に現れたことで揺らぐ。名前は黒岩タケル。入室した瞬間、教室中の視線が彼に集まった。だが、タケル自身は周囲に無関心そうで、淡々としていた。
ミアは初めて視線を交わした瞬間から、違和感を覚えた。何か…特別なものを。
そして、偶然のように彼らは道で再会する。ミアは祖母と一緒に歩き、タケルは祖父と共にいた。しかしこの出会いは偶然ではなかった。二人の祖父母の計らいで、二人は婚約させられることになっていたのだ。
「婚約…?彼と…?」ミアは目の前のタケルを見て驚いた。彼はまったく動じず、冷静そのものだった。
タケルは淡々と、しかし優しく答えた。
「もし嫌なら、高校卒業まで延期できる。お互い、本当に好きな人を見つけたら婚約は無効になる。」
ミアは戸惑った。なぜ彼は反対しないのか?まるで当たり前のことのように。
「じゃあ、気にしてないの?」ミアは半信半疑で尋ねた。
「構わない。たぶん、この婚約で他の女の子は僕を諦めるだろう」
ミアは思わず笑った。その冷静で正直な考え方が、不思議と心に近く感じられた。
二人は祖父母の用事に付き添いながら一緒に帰る。だが学校では、話す機会はほとんどなかった。
部屋に着くと、ミアの頬は自然と赤くなっていた。今日の出来事を思い返すたび、胸が高鳴る。初めてタケルを見た瞬間から、何かが変わっていたのだ。
志保とリノに相談したところ、自分の気持ちの正体を知ることになる――それは恋だった。
「最後のチャンスかもしれない…でも、彼は僕に気持ちがない…」ミアは悲しみながらも決意した。
それ以来、ミアは普段通りに振る舞う努力をした。しかし心はもはや穏やかではなかった。秘密の婚約、そして新たな感情――それが彼女の高校生活を大きく変えようとしていた。
エピローグ風の締めくくり
その日、ミアは自分の部屋で窓の外を見つめていた。
初めて心が少しざわつく感覚――胸が高鳴る理由が、自分でもよく分からなかった。
彼の存在が、これからの日常にどんな影響を与えるのか。
そして、隠された婚約という秘密が、彼女の高校生活をどんな風に変えていくのか――。
ミアは小さく息をつき、心の奥でそっと決めた。
「どんなことがあっても、私は負けない――」
その瞬間、彼女の目は未来を見据えて輝いていた。
だが、その輝きの先には、予想もしない出会いと、甘く切ない運命が待ち受けていることを、まだミアは知らなかった。