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ネコミミ☆パラドックス  作者: ピザやすし
第二楽章 心の証
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第9話 想い

部員が帰っていく度に、お疲れ様、の声が響く。

俺も、その声に、お疲れ様、と、返す。

ふと、顔を上げると、サキと目が合った。

彼女は、笑顔を浮かべて声をかけてくる。

「お疲れ様。随分と集中してたね。」

そう言って、はい、と缶コーヒーをくれる。

「……ありがとう。」

軽く手が触れ、手の温かさと缶の冷たさを感じた。

気付けば、部室には俺とサキしかいなかった。

日は落ち、空に星が輝いているのが見えた。

ナオの顔がよぎる。

契約のことを思い出し、つい俯く。

それを見ていたサキが、静かに尋ねてくる。

「……ナオちゃんと、何かあったの?」

見透かされていた気恥ずかしさと、図星を突かれて身体が強張る。

「まあ、その……何というか……」

上手く言えず、言葉を濁す。

サキが、溜息を吐きながら話す。

「……何があったのかは知らないけれど、ナオちゃんを悲しませたらお姉さんが、許さないよ?」

神妙な顔でそう言った後、ふふ、と笑顔になる。

「こないだ、ナオちゃんと話したよ。グラウンドを眺めていたから。」

「え?」

思わず聞き返した。

いなくなったと思ったら、サキと仲良くなっていたのか。

サキは、その様子を思い浮かべる様に、窓の外に目を向ける。

「ナオちゃんはさ、可愛くて、元気で、なんだか妹みたいで。」

彼女のその評価に驚いた。

サキはクスリと笑って、明るく言う。

「それに、ナオちゃんはシュウジくんの事が、大好きじゃない?」

その言葉に、飲んでいた缶コーヒーを噴き出す。

ゲホゲホと咳き込んでいるのを、サキは微笑みを浮かべてみていた。

それから俯いて言葉を続ける。

「……ナオちゃんの想いに、ちゃんと応えてあげてね。」

その言葉には、僅かな切なさが滲んでいた。

そう言うと彼女は立ち上がり、もう帰るね、と、部室から出て行く。

一人残された部室には、まだ運動部の練習する声が聞こえていた。

窓から星空を見上げながら、冷えた缶コーヒーを飲んでいた。

夜の静寂の中に、運動部の声が響いていた。


「ただいまー。」

コンビニで買った夕飯を持って家に帰る。

「おかえり。遅かったね。」

ナオが奥から顔を見せる。

「漫研で作業してたら、つい。」

言いながら頭を掻く。

……自分はナオの事を、何も知らな過ぎた。

そこに居るのが当たり前だと、受け入れていた。

話をしなければならない。

テーブルにおにぎりを出しながら、そう言えば、ナオに初めに与えたのもおにぎりだったな、と思う。

慣れた手つきでおにぎりの包装を剥いていくナオに尋ねる。

「ナオ、契約について、教えて欲しい。」

真面目に尋ねている俺に対して、ナオはおにぎりを食べながら答える。

「餌を手で与えてくれる人が、ご主人様。」

そう言って咀嚼していたおにぎりを飲み込む。

「……それだけだよ。そう言う仕組みだから……」

そう言う彼女の尻尾が、力無く床に伸びているのが見えた。

自分も座り、おにぎりを一つ手に取る。

「ナオはさ、自分を俺の所有物だって言うじゃん?それが、俺には、よく分からなくて。」

もぐもぐと口を動かしながらナオの顔が向く。

口の中の物を飲み込んで答える。

「難しく考えなくても、良いんじゃないかな。私はシュウジと居たい。……それとも、シュウジはそうじゃない?」

不安気に顔を向けるナオに慌てて答える。

「そ、そんな事はないよ。……ただ、所有、非所有とかじゃなくて、俺には、その、同じ、人間にしか思えないから……」

ナオの顔を見ていられず、俯く。

「……ナオの、一緒にいたい、と言う気持ちはさ、それは、俺の、所有物だから……?」

気になっていた事を聞いた。

確かめなくてはいけない、と、思いながら、逃げていた問いを。

りん、と、鈴の音が響く。

「……どうなんだろう。私はそうなる様に造られた存在だけど、一緒に居たいと言う想いも、造られた物なのかな……」

思わず顔を上げる。

ナオは俯いていた。

猫耳が力無く後ろに伏せていた。

「私はシュウジと一緒に居たい。けど、その想いも、そう想う様に造られていたのなら、私の心は、生きた心じゃ、無いのかな……」

俺は、その問いの答えを持ち合わせてはいなかった。

ただ、思った事を、感じた事を、そのまま言葉にしていた。

「……我思う。故に我在り。って言葉があるじゃん?あれって、自分の心を、それそのものを問う事自体が、それを証明しているって事だと思うんだ。だからさ、ナオがそう疑問に感じているのなら、その気持ちは、その心は、本物であると言えるんじゃないかな。僕はそう思うってだけだけど。」

言った後に恥ずかしくなって顔を背ける。

「ほ、ほら、無知の知なんてのもさ、自分の知識への問い掛けから発生してるじゃん?あれも、逆説的に、問えるからこそ、自分の知識の限界を知っている、その知の証明だと思うんだ。」

ナオは驚いた様な顔をしてこちらを見ていた。

ナオがその手を胸に当てる。

りん、と、鈴の音が響く。

「……うん、そうだね……」

その顔には、笑顔が浮かんでいる様に見えた。

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