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ネコミミ☆パラドックス  作者: ピザやすし
第四楽章 沈黙の主題

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第21話 静と動の即興

行き交う学生達を前に、緊張を維持し続ける事もできず、気が抜けて来た所で声を掛けられる。

「そんな気を張っていると、持たないぞ。」

コトシロと、元所有者、それと、朱い瞳をした別の猫型獣人が居た。

元所有者が、目を合わせずに言う。

「……カガリだ。同世代の別の獣人を手に入れた。……君たちにはもう手は出さない、と、誓おう。」

続いて猫型獣人が明るく笑って言う。

「ミケです。よろしくね。」

俺は、呆気に取られて生返事をする。

「あ、ああ。よろしく。」

ナオは動じた様子も無く、よろしく、と、短く答える。

「シュウジ、首輪。」

ナオに言われてはっとする。

「うん、分かった。」

ナオから首輪を外す。

手の中で、りん、と、鈴の音が響く。

外す間目を閉じていたナオが、ゆっくりと、その目を開く。

朱に染まった瞳が表れる。

ミケがそれに反応する。

「おお!青から朱に変わるんですね!お揃いですよ!」

ナオに顔を寄せて、自分の瞳を見せ付ける。

「……五月蝿い。同型なんだから、当然でしょ?」

ナオが煩わしそうに言う。

ミケは楽し気にナオに話し続け、ナオはそれに気紛れに返答していた。

俺はそのやり取りを驚いたまま見ていた。

コトシロが言う。

「同世代の同型でも画一では無い。……ナオはナオだ、シュウジ。」

ふと、二人の話が止まる。

二人の猫耳がぴくぴくと動く。

ミケが巫山戯た調子で言う。

「お客様ご来店でーす。」

周囲に意識を向けると、運動部の声が聞こえなくなっているのがはっきりと分かった。

歩いていた学生たちが立ち止まる。

コトシロが静かに言う。

「相手は過去の存在であるシュウジに手は出せない。旦那はシュウジの近くに居るのが良いだろう。そこが最も安全だ。」

カガリが寄って来る。

コトシロが尋ねる。

「……シュウジ、良いんだな?」

その問い掛けに、はっきりと頷いた。


立ち止まった管制局員の一人がこちらに話しかける。

その姿が学生から黒い制服に変わる。

周囲の局員も、同様の姿に変わる。

「……我々のターゲットは、そこにいる未来因子、コトシロだけなのだが、他の者は退いてはもらえないだろうか。」

その言葉に旦那が驚いてこちらを見る。

葉巻を取り出しながら言う。

「……伝えていなかったが、俺は未来からの干渉者だ。」

様子を窺いながら、葉巻を炙る。

「とは言え、俺を排除した後は、旦那は時空犯罪者として裁かれるのだろう?直接排除対象は俺だが、旦那も助かるわけではない、と。」

局員はその問いに答えなかった。

旦那の顔色が青くなるが、直ぐに赤く変わった。

その局員が言葉を発する。

「……交渉は、決裂かな?こんな制約の多い任務は、避けたかったんだがね。」

局員達が、その言葉を合図に銃を構える。

話をしていた局員の手にも銃が現れる。

葉巻の吸い口側を噛み切り、端を吐き出す。

「……交渉の余地なんて、あったのかね。」

言いながら葉巻を口に運ぶ。

「……局員は殺すな。獣人は構わない。……非致死性の銃を用意した。使え。」

そう言って旦那とシュウジに渡す。

旦那は少し震えながらも、その銃を握り締める。

シュウジは慣れない銃の重みに困惑しているように見えた。

ナオが俺に話しかけてくる。

「……不安、なの?」

煙を吐き出しながら答える。

「……まあ、な。」

ナオが一瞬俯く。

が、直ぐに顔を上げて局員達に向ける。

そして、こちら側の獣人二人の姿が消えた。


「はーい、こっちですよー。」

ミケの軽い声が響き、局員が一人倒れる。

局員の隙間を縫う様に走るミケに、局員が武器をナイフに切り替える。

ミケに気を取られている局員を、ナオが静かに気絶させていく。

気絶した局員の姿が消えていき、代わりに多数の同じ黒い制服を来た獣人が現れる。

爪でミケを切り裂こうと振るう腕に、逆に入り込んで鳩尾に肘を入れる。

その隙を狙った別の獣人の脚をナオが払い、ミケが鳩尾に入れられた獣人の前に伸びた腕を掴み、倒れた獣人の上に投げつける。

二人の獣人の、異なるリズムで刻まれるステップが、相手を翻弄していた。

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