表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコミミ☆パラドックス  作者: ピザやすし
第二楽章 心の証

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/23

第10話 揺れる思い

「あ、そうだ。」

私は、コトシロの事を思い出して声を上げた。

シュウジが顔を向ける。

「今日、コトシロに会ったよ。」

「え、ああ、コトシロさん。……そういや、あの人も未来から来てるんだよな。」

シュウジに、コトシロの話を伝えておかないと。

「コトシロは、私が干渉し続けると、未来が消えるかもしれないって。」

シュウジの顔が真面目になる。

「未来で造られた私も、その未来が消えると初めからいなかった事になるんだ、って、そう言ってた。」

シュウジは真剣な顔で話を聞いていた。

「……そう……それで、ナオは、未来に戻るの?」

私は静かに首を振る。

そして、笑顔で答える。

「私はシュウジと居たい。ここに、いるから。」

それを聞いても、シュウジは真剣な顔をしたままだった。

何か考えている様だった。

「あれ?嬉しくない?」

「いや、そう言うわけでは無いけど。……ナオは、自分が消えるのが、怖くないのか?俺は、ナオが消えるのは、怖いよ……」

そうか。

私は消えるだけでも、シュウジは残されるから。

「……コトシロがね、初めからいない事になった存在の事は覚えていられないって。干渉して来た未来が消えるからって。」

シュウジは一瞬驚いた様な顔をした後、俯く。

「私は、この想いが本物であるのなら、私が消えるとしても、シュウジと一緒に居たいの。……それに、あまり干渉しなければ、世界そのもののエラー訂正機能が働くから、生きてる間くらいは一緒に居られるかもって。」

そう言って私はシュウジに近づき寄り掛かる。

鈴の音が、りん、と響く。

この音を聞くと安心する。

私が、私でいられる気がする。

笑顔で体重をかけて寄り掛かる私に、シュウジは少し困った様な顔を浮かべていた。

でも、嫌がってはいないと思った。


ナオは自分が消えるかも知れない、と、言った。

そして、それでも俺と一緒に居たい、とも。

俺は、どうするべきなのだろう。

ナオを未来に帰せば、ナオが消える事は無くなる。

ナオを自分の物だ、と、言った男を思い出す。

ナオが、未来に戻ったら、あの男の物として扱われるのだろうか。

そう考えると、ナオの願いと共に、一緒にいる方が良いのかも知れない。

答えは、出なかった。

ナオが擦り寄ってくる。

りん、と、鈴の音が響く。

ナオは嬉しそうにしている様に見えた。

自分も、ナオと一緒にいられる事が、嬉しかった。


「……段階的制御構造を持つリミッターだ。」

コトシロがそう言って首輪をテーブルに転送する。

それを見て、男がくく、と、笑う。

抑えきれない笑い声が部屋に響く。

その笑いを冷めた目で見ながらコトシロが言う。

「捕えないことにはリミッターも付けられん。……まだ、手に入ってもいない物で算盤を弾くのは、理解できんね。」

意に介さず、男は言う。

「リミッターが付いていれば、如何に兵器と言えどその能力は知れている。……元々私の物なのだ。それを、取り返すだけだ。」

コトシロは黙したままその言葉を受ける。

置かれたコーヒーから上る湯気が揺らいでいるのを眺める。

「エラー率に気を付けろ。……消えるのは、ごめんだ。」

そう言ってコトシロはカップを手に取る。

口に付け、少しコーヒーを飲む。

「……従いはするが、撤退はこちらで判断させてもらう。……それが、条件だ。」

くく、と笑いながら男が答える。

「構わんよ。……一瞬で終わる。……くくっ。」

天井の高い部屋に笑い声が響く。

コーヒーの香りを楽しむコトシロの表情は、そのグラスに阻まれて見えなかった。

コトシロの後ろに控えた大柄の男は、その体も心も、動かす事はなかった。

その部屋には笑い声を上げる男の声だけが響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ