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開国祭と新たな出会い①

サーペントエイプとピクシーフォックスの討伐を終えたカイとリーナは、ギルドに報告へと向かっていた。朝方に出発して、午後には両方の魔物を討伐完了。しかも依頼掲示板に載ってからわずか二日での解決である。



「お疲れ様です、カイさん、リーナさん」



受付嬢のミラがにこやかに二人を出迎える。最近では、彼女もすっかり二人の担当のような形になっていた。



「報告ですね? はい、確認いたしました。これで報酬は後ほど……あ、そうだ」



ミラは報告用紙をまとめながら、ふと何かを思い出したように顔を上げる。



「実は、お二人宛に指名の護衛依頼が入ってます」



「指名……ですか?」



カイが首をかしげると、ミラは「はい」と頷き、続ける。



「依頼主の方が、ちょうど今いらしてまして。応接室でお話しますか?」



「……また変な話じゃなきゃいいのですけど」



リーナがぼそりとつぶやき、カイも苦笑する。以前、ギガントワイバーン討伐後に、カイ達を利用しようと一方的な契約を押し付けてきた貴族の件が脳裏をよぎったが、今回はギルドを通して正式に来ているという。恐る恐る二人は応接室へと足を運んだ。



ギルドの応接室に入ると、ソファの中央の席に座っていたのは、小太りな中年の男だった。背広のような仕立ての旅装束に、腰には装飾付きの短剣。商人特有の穏やかな笑顔を浮かべ、にこやかに立ち上がる。



「おお、お二人が噂の……これはこれは、初めまして。私はリオネル=バズグラムと申します。ノルデナの貿易商でして」



「初めまして、カイです」

「リーナです。よろしくお願いします。」



礼儀正しく挨拶を交わし、三人はソファに腰を下ろす。



リオネルは懐から依頼書を取り出し、カイたちの前に差し出す。



「実は、近々王都——アルミアで開かれる《開国祭》に向けて、私の隊が物資を輸送することになりまして。その護衛をお願いしたいのです」



「開国祭……?」



カイが目を瞬かせた。聞き覚えのない言葉に、思わず口に出ていた。



「道中、王都に集まる商人を狙って盗賊の活動が活発になっているんです。他国の商隊も来るので狙われやすくて。信頼できる冒険者に頼みたかったのですよ」



「でも、僕たちCランクですよ? 本当にいいんですか?」



そう問うと、リオネルは手を振って笑う。



「この街で、あなた方の強さを知らない者はいませんよ。街を毒の魔物から救った英雄じゃありませんか」



思わずカイとリーナは顔を見合わせ、少しだけ頬を赤らめる。



「それに、Bランクでもおかしくない冒険者がCランクの価格で依頼できるなら……商売人としてはお得でしょう?」



「……さすがは商人ですね」



カイが苦笑し、リーナも肩をすくめた。



「ところで、その……王都の《開国祭》って、どんなお祭りなんですか?」



カイがふと尋ねると、リオネルは「え?」と目を丸くする。



「知らないんですか? 国の一大イベントですよ……」



カイは「やばいっ!」と内心焦りながら誤魔化す。



「えっ、ああ……そうですね、少し遠い国の生まれなもので。実はまだこの国に来て1年も経ってないんです。」



「なるほど。そうでしたか」



リオネルは深く詮索せず、頷いて説明を始める。



「開国祭は三日間にわたって行われます。元々軍事国家だったアルミア王国が平和外交へ舵を切り、隣国との交易を正式に開始した日を記念していて、今では国内外から観光客や商人が殺到するビッグイベントなんです。王都中が屋台と音楽で溢れ、稼ぎ時でもあるんですよ」



「へぇ……それは楽しそうですね」



「ところで、護衛のお仕事、お願いできますか?」



「はい、僕たちで良ければ、ぜひ! 祭りも楽しみにしてますから!」



カイはそう答え、リオネルと固く握手を交わした。



こうして、王都アルミアへの旅路が幕を開ける。

まだ彼らは知らない。この旅の途中で、ある少女との運命的な出会いが待ち受けていることを——。



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