最高の防具を探し求めて⑥
グランツの街へ戻ったカイとリーナは、一度ギルドに素材を預けて休息を取ることにした。ポイズンスレッドワームとの戦いで毒まみれになった服を洗い、昼食をとったあとのことだった。
「さて……次はミストライト鉱石、か」
カイはギルドで受け取った地図を広げ、眉をひそめる。その鉱石は、街から南東の火山地帯にあるという。熱気と炎の魔素が渦巻く過酷な土地だ。
「なあ、リーナ。俺、暑いの、大っ嫌いなんだけど」
地図を指差しながらぼやくカイに、リーナはくすりと笑った。
「私は暑いのは平気ですよ。火魔法が得意ですので、周囲の火の魔素を操れば暑くありません。」
「……天才かお前は」
思わずため息をつくカイに、リーナは首をかしげたが、内心では少し誇らしげだった。
とはいえ、カイがそのまま炎の渦に突っ込むのは無謀だ。背に腹は変えられない、と決意した彼は、魔道具屋へと足を運んだ。目的は――冷却効果を持つ装備。
「これと……これだな。冷涼付与ローブと、水属性のネックレス……」
出費は痛かった。ギルドの報酬がじわりと消えていくのを感じながら、カイは溜息をつく。
「くそ、俺の財布が火山よりも焦げてるわ……まあ、暑さ我慢する方がキツイしな」
カイはさらにもう一つ、同じ効果を持つローブを選び取った。
「リーナ、これも着てくれ。少しでも魔力の無駄遣いは減らしたい」
「えっ、でも私は平気ですよ?」
「火山で何が出てくるかわからないし、万が一の時に魔力が切れてたら困るからな」
そっけなくローブを受け取ったリーナだったが、その頬はほんのりと朱に染まっていた。
「……では、一応、いただいておきます」
カイは気づいていないふりをして、荷物をまとめ直した。
こうして、冷却装備を身にまとったカイと、微妙に照れているリーナは、次なる目的地――灼熱の火山地帯へと足を向けるのであった。