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最高の防具を探し求めて③

魔道具市の賑わいから少し離れたところで、カイとリーナは地元の商人に尋ねていた。目的はただ一つ――毒に耐えうる、強靭な防具を手に入れることだ。



「この街で一番腕のいい防具職人って、誰か知ってますか?」



若い二人の問いに、露店の中年商人は顎に手を添え、少し考えてから答えた。



「……ああ、それなら間違いなく“ガイン”だな。ドワーフの親父でな、腕前は本物だ。だが……気をつけな。あの男、気に入った相手にしか防具を売らねぇ。頑固ってレベルじゃねぇからな」



その言葉に、カイとリーナは顔を見合わせる。不安はあったが、他に選択肢はない。二人は教えられた道を頼りに、ガインの店へと向かった。



グランツの石畳を抜けた路地裏、古びた木造の建物が目の前に現れた。看板には〈鍛鋼工房ガイン〉と、焼き印のような文字が刻まれている。扉を開けると、金属の匂いと火薬の残り香が鼻を突き、店内には所狭しと防具が並んでいた。



鎧、篭手、肩当て、具足――どれもが無骨で実戦的。それでいて、細部には繊細な装飾が施されており、素人目にも只者ではないと分かる出来栄えだった。



「す、すみません……」



カイが恐る恐る声をかけた、その瞬間だった。



「誰だお前は! ガキに売る防具はねぇ、さっさと帰んな!」



怒鳴り声とともに、店の奥からずしりと重い足音が響く。現れたのは、茶色くボサボサの長い髪と髭をたくわえた、頑固そうなドワーフの男だった。身長はカイの胸にも届かないが、腕には鋼のような筋肉が浮かんでいる。



「……あの、話だけでも聞いてもらえませんか」



ひるまずにそう答えるカイに、ドワーフ――ガインは胡乱な目を向けながら問い返した。



「ランクは?」



「……Cランクです」



「はっ。Cランクが俺の防具を使いこなせるわけねぇ。Bランクになってから出直してこい。まあ、Bでも生意気な奴には売らねぇけどな」



口は悪いが、それがこの職人の流儀なのだろう。だが次の瞬間、ガインの目がカイとリーナの装備に留まり、僅かに眉が動いた。



「……お前ら、その防具。どこで手に入れた」



「これは、俺が防具屋で買った装備に毒耐性と防水の付与をしたものです」



その言葉に、ガインは一瞬目を見開き、口元を緩めた。



「お前が? ほぉ……この付与仕事をガキがやったってのか。なるほど、ただの若造じゃねぇな。良い腕をしてやがる」



がらりと態度が変わった。興味を持ったようにガインは店の奥を指差し、にやりと笑う。



「気が変わった。話くらいは聞いてやる。こっち来い。」



不安だった出会いは、意外な方向に転がり始めていた。


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