初仕事はキノコ狩り?③
キノコモドキの巣は、町からそう遠くない森の奥。前に迷子になったのとは別の方角だったが、今回は地図で予習したから余裕だ。
さっそく森の中を歩いていると、ぬるり、とした違和感のある空気に包まれた。
「……来たか」
そして次の瞬間、ぷよぷよとした巨大なキノコが、跳ねながら飛び出してきた!
「おぉ……お前がキノコモドキか!」
ぽんっ、と軽い音を立ててキノコが弾けると、もわぁんと紫色の煙があたりに広がる。見事なまでの毒ガスだ。
だが俺は、それを鼻で吸いながら思う。
「……くっさ。でも、ちょっと納豆っぽいかも」
喉が軽く焼ける感じはするが、平気だ。これは、サバイバル生活で慣れている。
よし、行ける。
剣を構え、足元の地面を蹴って飛び出す。
「うおおおおっ!」
毒胞子モドキは素早くもないし、動き方も単調。ただ、突っ込んできて毒を撒くだけだ。
斬って、避けて、突き刺して――数分後。
「……よっしゃ、一体撃破!」
少し粘性のある体液と胞子をまといながら、俺はガッツポーズを決めた。
これならいける。何体か倒して、素材もゲットして……そう思ったその時。
「……ん?」
空気が変わった。
森の奥、影の中から、ヌル……と、禍々しい気配が現れる。
「……でけぇ。……お前、Eランクじゃないな?」