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毒を以て毒を制す⑤

「なんで、俺の事を……!」



目の前で倒れ込んだバルドに、カイは叫んだ。血が止まらない。ギガントワイバーンの毒が回っているのか、ギルドマスターの顔色は見る見るうちに青白くなっていった。



「……冒険者を守るのが、ギルドマスターの役目だろ……」



かすれた声で、バルドは笑った。そのまま力尽きたように意識を失い、動かなくなる。



「バルドさん!!」



リーナが魔法の詠唱を終え、電撃を放つ。轟音と共にギガントワイバーンの身体が痙攣し、動きが止まった。



その隙に、カイは震える手で解毒薬を飲み、さらにバルドにも回復ポーションと解毒薬を無理やり飲ませた。肩を抱え、後方へと引きずる。



「頼む……死なないでくれ……!」



戦線から少し離れた安全地帯にバルドを置き、ようやく顔を上げたカイの目は、怒りと悔しさに燃えていた。



「……不甲斐ねぇな、俺……!」



静かに立ち上がり、薬剤ポーチを漁る。そして、一際濃い紫色を放つ小瓶を取り出した。



「いいか、ワイバーン野郎……これはな、ヒュージポイズンスライムの毒に、《シャドウベイン》、《ネクロシュルーム》、《パラリゼア》の成分を掛け合わせた、俺特製の毒――《死神の晩餐(グリム・ダイナー)》だ」



麻痺毒、激痛毒、溶解毒、神経毒全ての性質を併せ持つ最強の毒をナイフに塗りたくり、ギガントワイバーンへと走り出す。



リーナももう一度ギガントワイバーンの動きを止めようと、雷魔法を放つ。しかし――



「ブォオオオオオッ!!」



リーナから放たれた巨大な稲妻がギガントワイバーンに当たると同時に、ブレスが放たれた。直撃ではなかったものの、漏れた瘴気がリーナの身体を麻痺させる。



「ありがとう、リーナ。あとは任せてくれ。解毒薬を飲んで、休んでてくれ」



カイはそう言い終えると、一直線にギガントワイバーンの足元へと突っ込む。バルドが斬り裂いた腹部の傷を見つけ、そこめがけてナイフを振りかぶり――



「喰らえッ!! 《死神の晩餐(グリム・ダイナー)》!!」



ギガントワイバーンの腹に、毒の塗られた刃が深々と突き立てられた。絶叫とともに、その巨体が激しくのたうつ。



だが――怒り狂ったギガントワイバーンが、再びブレスを放ってきた。



それに対し、カイは――



「もう避けねぇよ」



真正面からブレスを受け、肺に毒が入り込む。視界が歪み、身体が麻痺しそうになる。



「……効くけど、死にはしない。」



すぐに解毒薬を口に放り込み、耐える。そして、尻尾の一撃が飛んできた。これもわざと避けず、掠めるように受ける。



そんな光景を見て、リーナが目を見開く。



「……わざと食らってる? まさか、カイさん、ギガントワイバーン相手に――実験を……?」



カイは呼吸を整え、毒の影響で鈍くなったギガントワイバーンの動きを冷静に観察し始めていた。ギガントワイバーンは激高しており、動きは単調になり、ブレスも尻尾も読みやすくなっている。



「いいぞ……もっと来い……!」



再び放たれたブレスが直撃する。



(来た……!)



その瞬間、カイの脳内に電子的な声が響いた。



《毒耐性スキルのレベルが最大となりました。ユニークスキル【狂気の(マッド)科学者(サイエンティスト)】を取得しました》



全身を貫くような衝撃と共に、カイの意識が一段上の階層へと突き抜けたような感覚に包まれた。


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