表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/91

毒を以て毒を制す①

重く湿った空気が、ギルドの会議室に張り詰めていた。昼過ぎ、バルドが机に地図を広げ、そこに数本の赤い線を引いた瞬間、その場にいた全員の顔が険しくなる。



「……これは確実な情報だ。北の山脈からワイバーンの大群がこの街に向かってきている。偵察隊が確認した数は三十から四十。早ければ三日、遅くとも四日で到達する」



その言葉に、ギルドに集められた冒険者たちはざわついた。ワイバーンはCランクに分類される強力な飛行魔物で、鋭い爪と槍のような尻尾、そして毒を含むブレスを持つ厄介な相手だ。



特にその毒性は強く、まともに浴びれば高ランク冒険者ですら命を落としかねない。しかも、それが「群れ」で来るというのだ。



バルドは一呼吸置いて、冒険者たちを見回した。



「悪いが、Dランク以上の冒険者は全員、出撃の準備をしてくれ。街を守れるのは――お前たちしかいない」



誰も言葉を返せなかった。かすかに誰かの唾を飲み込む音がした。中には眉をひそめ、床を見つめている者もいる。目を逸らす者すらいた。



それも無理はない。ワイバーン単体であればまだしも、群れともなれば討伐には死者が出る。それは誰もが知っている事実だった。



「……逃げたいなら、今のうちだ」



その時、ひとりの男が手を上げた。



「俺は行くぜ。ここで逃げたら、冒険者の名が廃る」



それを皮切りに、少しずつ他の者たちも立ち上がり始める。恐怖はある。だが、それでもこの街を守ろうとする強い意志があった。



カイは、リーナと並んでその様子を見つめていた。リーナはわずかに表情を引き締めながら、カイに小声で言う。



「これが……冒険者の覚悟、なのでしょうか」



「ああ。……だけど、このままじゃダメだ。俺にできることがあるはずだ」



そう呟いたカイの眼に、決意の色が宿った。毒を知り尽くした自分だからこそ、この危機に何かできる――と、確信していた」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ