初仕事はキノコ狩り?①
「ふはぁ……やっと、まともな布団で寝た気がする」
朝、硬いベッドの感触に目覚めながら、思わず漏れたのはそんな言葉だった。
もっとも、布団と言ってもギルド宿の簡易ベッドで、藁と獣毛が混ざったクッション性ゼロの一品だ。けれども、地面の上に葉っぱを敷いた寝床に比べれば、天国のように感じるのが人間というもの。
「よーし、今日も冒険者生活を始めるぞ!」
着替えを済ませ、少しだけ顔を洗い、宿を後にする。向かう先はもちろん、《冒険者ギルド》
ギルドは、冒険者たちが依頼を受けたり報酬を受け取ったり、情報を交換したりする拠点。朝から賑わうその建物の中で、俺は早速、掲示板に貼られた依頼書の群れを見上げていた。
「うーん……さすがにいきなりドラゴン退治はないとして……お、これとかいいんじゃない?」
俺の目に止まったのは、《キノコモドキ》なるEランク魔物の討伐依頼。森に生息するキノコ型のモンスターで、空気中に毒胞子をばらまきながら、ぷよぷよ跳ね回るやつらしい。
報酬はまずまずだが、依頼書にはしっかりと「※毒の対策をしてください」と赤文字が添えられている。
「毒……対策、ね」
くくっと小さく笑ってしまう。
森でのサバイバル中に何度も毒キノコ、毒草を食べ、、毒虫に刺された俺が、いまさら毒キノコなんぞに怯える道理はない。
むしろ、今ではちょっとした毒なら無害どころか、どこか美味く感じてしまうくらいだ。