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実験は爆発だ!

毒が効かない魔物なんて、山ほどいる。岩甲トカゲはその一例にすぎない。



「いつまでもリーナに頼りっぱなしじゃダメだよな……」



カイはギルドの空き部屋で腕を組みながらうなった。彼女の《ファイアーボール》は頼もしいが、毒使いとしての自分にできることは、まだあるはずだ。



「毒が効かないなら……溶かせばいいじゃん」



ギルドの空き部屋。その片隅で、カイは何やらごちゃごちゃと錬金器具を並べていた。鍋のような坩堝(るつぼ)からは怪しげな蒸気が立ち上り、鼻をつく酸っぱい匂いが部屋中に充満している。



「岩甲トカゲみたいな硬い奴に毒が効かないのは、単に毒が届いてないからだ。だったら、外側を溶かしてやればいい」



瓶の中では、紫色の液体がぷくぷくと音を立てていた。



「この『溶解毒』さえ完成すれば、どんな鎧も鱗も通り抜けて……ぐふふふ」



ニヤつきながら調合を続けるカイ。だが、次の瞬間――



「うわっ!?」



小さな爆発音と共に、瓶がひとつ破裂。酸が勢いよく噴き出し、机の表面を直撃した。



ジュゥゥゥゥ……



「げっ!? おいおい、マジかよ……!」



みるみるうちに机の一角が黒く変色し、そこから煙と焦げたような異臭が立ち上る。表面はボロボロに泡立ち、ついには脚の一本が折れてバランスを崩した。



机の表面がみるみるうちに変色し、炭のようになって崩れ落ちていく。異臭が部屋中に立ち込める中、カイは慌てて拭こうとするも――



「おいコラァァァ!!」



部屋の扉が乱暴に開かれ、ギルドマスター・バルドが仁王立ちで立っていた。



「またお前かァァ! 今度は何をやらかした!? 異臭と爆音でギルド中が避難騒ぎだぞ!!」



「ちょ、ちょっとした酸の実験でして……!」



「酸で机を溶かすなッ!! どういう頭してたらそんなもん作ろうと思うんだこのバカ毒野郎!!」



「す、すみません!!」



カイは正座しながら両手をつき、床に頭をこすりつける勢いで謝罪した。



バルドの怒鳴り声に肩をすくめていると、廊下の方からもう一人の来訪者が現れた。



「ふふふっ……あっははははっ!

カ、カイさんが……正座して怒られてる……っ!」



「いや、これは違うんだって! 実験がちょっと失敗しただけで!」



「ふふっ、……錬金術って、爆発するものなんですね」



笑いが落ち着いた頃、リーナはぽつりとつぶやいた。



「……それならいっそ、爆発する薬でも作っちゃえばどうです?」



「お、おいおい……爆薬とか危なすぎるだろ」



「でも……もし私の《ファイアーボール》と合わせて使えたら、もっとすごい威力になるかもしれませんよ?」



「……合体技、か。必殺技っぽくていいな、それ」



カイは一瞬想像してゾッとした。だが、悪くない……どころか、ちょっとワクワクしてしまっている自分がいた。


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