恐怖に火を灯す③
森の中、2人は慎重に進んでいた。
「来るぞ、リーナ。前方、三匹!」
カイが警戒の声を上げると、黒い毛むくじゃらの毒ムカデたちが地を這うように接近してきた。リーナが《ファイアーボール》を放つと、あたり一面が炎に包まれ、敵は一撃で消し炭に。
「……つ、強っ!」
「へへっ……毒を気にしなくていいから、ちょっと自信ついてきたかも」
だが、カイの関心は別のところにあった。
「ああ……焼き毒ムカデの香ばしい匂い……これは当たりだな……!」
カイはおもむろに一匹を掴むと、むしゃむしゃと口に運んだ。
「ちょっ、え!? 食べてるんですか!?」
「ふむ……。カリッと炭化した表皮の下から、ねっとりと甘い蜜がとろける……まるで焼き芋に蜂蜜をかけたようだ。苦みの奥にコクがある、これは逸品だ!!」
「えっ!毒も慣れたら美味しいって冗談じゃなかったんですか!?」
リーナが引き気味にツッコむも、カイは一心不乱に毒ムカデを食べていた。
「……リーナも食べたい……?」
「絶対に食べません!!!」
しばらく進んだ後、毒胞子を撒くキノコモドキが現れた。リーナは思わず息を吸ってしまうが――
「……あれ? 身体が……平気?」
「さっきのポーション、効いてるだろ? おかげで吸ってもほとんど影響なしだ」
「す、すごい……! いつもなら、体が動かないのに……!」
リーナはカイの作る毒耐性ポーションの効果の高さに驚いた。
(やっぱりカイさんは凄い人なのかも……)




