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恐怖に火を灯す①
⸻翌朝
「依頼の再挑戦をお願いします……!」
受付嬢は書類をまとめながら顔を上げ、カイと、それに付き添うリーナを見て目を丸くした。
「……岩甲トカゲの依頼ですか? 前回で懲りなかったんですか? あの魔物、毒まったく効きませんよ?」
口調は丁寧だが、どこか茶化すような響きが混じっていた。
「分かってるさ。でも今回は強力な助っ人がいるからな」
そう言いながら、隣にいるリーナへと目線を送る。受付嬢は彼女の顔を見て「あら」と軽く頷いた。
「リーナさん…なるほど、前に運び込まれた時より、ずいぶん元気そうです」
「はいっ。カイさんに助けてもらってから、少しずつですが冒険者としてやっていけるように……」
リーナは照れ臭そうに答えたが、受付嬢は笑いながら依頼書を手渡してきた。
「それじゃ、討伐再挑戦を受理します。くれぐれも、無茶だけはなさらぬように」
「はいはい。無茶は……ほどほどにな」
受付を済ませたカイとリーナは、そのままギルドの一角にある長椅子に腰を下ろし、依頼の詳細を確認しながら作戦を立て始めた。




