召喚されたら毒でした③
それからさらに三日後——
「街だあああああッッ!!!」
崖の上から広がる景色に、俺はガッツポーズを決めた。
ついに樹海を抜けたのだ。煙が立ちのぼる大きな町が見える。
腹ペコだった。
文明が恋しかった。
そしてなにより、風呂に入りたかった。
「もうキノコも虫もごめんだあああ!」
……と言いつつ、その晩に食った毒ムカデは妙にジューシーで後引く旨さだったのだが、それはさておき。
翌日。
街の中心、レンガ造りの立派な建物にたどり着いた俺は、そこで“冒険者ギルド”の看板を見つけた。
「ここからが……冒険の始まりか……」
受付の女性は、にこやかに俺を迎えてくれた。
手続きはスムーズで、あっという間に“Fランク冒険者”として登録完了。
クエストボードにはずらりと依頼が並んでいる。
「うわ、Eランクの魔物退治で銀貨5枚!? 結構いい金額……」
しかし、その横には注意書きがあった。
《※この依頼は毒魔物に慣れた者向けです。初心者の方はご遠慮ください》
「……へえ。やっぱ毒って敬遠されてるんだな」
そりゃそうだ。
下手すれば命を落とすし、解毒薬の費用もバカにならない。
だが、俺には毒耐性がある。
そして、毒魔物の素材は貴重らしく、他の依頼に比べて報酬も高い。
「なるほど、一石二鳥ってやつだな……!」
こうして俺は、他の冒険者が避けて通る“毒魔物”専門の狩人として、第一歩を踏み出したのだった。