初めての挫折と再会①
第5章は短めです。
――それから数日。
カイはゴブリン相手に試した毒薬の調整に明け暮れていた。麻痺毒の持続時間を伸ばしたり、激痛毒の効果範囲を広げたり、酩酊毒の濃度を調整したりと、まるで研究者のようか生活だ。
作業机の上は薬瓶とメモで埋まり、カイの目は完全にマッドサイエンティストのそれとなっていた。
「ふふふ……完璧だ。これでまた新しい毒実験ができる……!」
自作した毒の効果を確かめるためにカイはギルドで依頼を探していた。
「ゴブリンはもう試したから。次はまだ戦ったことの無い魔物がいいなぁ」
そしてある依頼書に目が止まる。
内容は――岩甲トカゲの討伐。
「ふーん……強そうだけど。俺の毒があればた余裕だろ」
前回の成功体験で完全に調子に乗っていたカイは、依頼書を受付嬢に持っていった。
受付では、いつもの受付嬢が顔を上げると、少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「あら、毒専門のカイさんが、毒の魔物以外の討伐依頼なんて珍しいですね?」
「う……うるさいな!いつまでも毒の魔物だけだと成長できないって思ってさ!」
「ふふ、そうですか。でも、岩甲トカゲはかなりの強敵ですよ? 本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫、まぁ、何とかなるって」
――その言葉が、後に後悔の種になるとは、まだこのときのカイは思っていなかった。




