16/91
毒に襲われた村③
「アンタ、本気で行くつもりなのか?」
ローナ村へ向かう馬車の荷台で、荷運びを兼ねた若い村人がじっとカイを見てきた。無理もない。どう見ても年端もいかぬ少年――それが事実だ。高校生が異世界に来て2か月足らず。まだ身なりも装備も一人前とは言い難い。
「まあね。毒の耐性持ってるし、それなりに戦えるから」
「毒の……? そりゃまた珍しい。でもなあ……前に来た奴らも、村の畑に近づいた瞬間やられたんだ。巣に近づくのは無謀すぎる」
警戒されるのも無理はない。でもカイは知っていた。毒には段階がある。蓄積によって効力が増すもの、即効性のあるもの、麻痺系――そして、それらの錬金術による解毒のアプローチも。
翌朝。ローナ村に到着したカイは、村人たちの冷たい視線に出迎えられた。
「また若いのが来たか……どうせ逃げるのがオチだ」
「頼むから邪魔しないでくれよ。もう十分なんだよ、犠牲は」
無言でその声を受け流し、彼は診療所へ向かった。




