毒に襲われた村①
キノコモドキの討伐後、カイは毒の魔物に関する依頼を片っ端からこなしていた。そんなある日、
「……あれ? これだけ他の依頼と文字の色違くね?」
カイはギルドの掲示板にぺたりと張りついていた紙に目を留めた。周囲の依頼よりも一段濃い赤で「要注意」と囲われている。内容はこうだ。
依頼内容:毒棘蜂の群れによる村の被害への対処
依頼主:ローナ村 村長バロル
報酬:銀貨50枚~応相談
備考:麻痺毒の被害者複数。前回の討伐依頼者(Dランク2名)が全員戦闘不能。
「おぉぉ……これは……」
毒の魔物。そして報酬がやたら高い。
「銀貨50枚って……今月ずっとパンとスープ生活だった俺にケンカ売ってんのか?」
思わず唾を飲む。銀貨50枚といえば、一般的なEランクの依頼10件分に相当する。しかも“毒の魔物”というカテゴリ。つまり――。
「毒耐性スキル持ちの俺にとっては、うま味しかない……!」
にやり、と笑みが漏れる。ふと背後で聞こえた声が耳に刺さった。
「はは、あの依頼また誰かが見てるよ」「行って帰ってくるだけで精一杯だっての」「俺はごめんだね。蜂なんて無理無理」
なるほど、他の冒険者たちは完全に敬遠しているらしい。そりゃそうだ。ドレッドワスプは毒性と機動力に加え、集団戦を得意とする魔物。FやEランクの冒険者には荷が重い。
「まぁ、普通の冒険者なら近づきたくもないよな」
だが、カイにとっては話が違う。
彼はこれまでのサバイバル経験や試行錯誤で、徐々に毒への耐性を育ててきた。
毒を摂取すればするほど味覚が冴え、そしてより強い毒を求めるようになっていた。
「……やってみる価値は、ある」
カイは依頼書を手に取り、受付へと歩いた。




