錬金術は命がけ!③
ボンッ
「ぎゃあああっ!? なんで爆発すんの!?」
小さな爆発音とともに鍋が吹き飛び、顔に黒い煤がついた。
「……イモリノ葉、多すぎたか」
爆発の余韻が収まった森に、ふわふわと焦げ臭い煙が立ちこめる。
「うっわ……服が焦げた。ってか、焦げ臭っ!」
俺はひとまず鍋を拾い上げ、鍋底をじっと睨んだ。中身は──真っ黒。
こりゃダメだ、完全に失敗。
「原因はイモリノ葉か……これって、加熱すると成分変わるとか言ってたっけ」
ふと、錬金術ノートの余白に走り書きされた言葉が目に入った。
《不純物が多い素材は、いったん水洗いしてから使うこと》
「……ああ、やっちまった。何のために前日にメモったと思ってんだよ俺!」
もはや自分で自分に突っ込みながら、草むらの向こうに見えた小さな小川へ向かう。
手元の毒草を丁寧に水で洗い、再び材料を刻み、量を調整して鍋に投入。
火の強さを控えめにして、根気よくかき混ぜること数十分──
「…………できた?」
鍋の中には、先ほどとは違う淡い緑色の液体。
強い刺激臭はないが、微かにツーンと鼻を刺す匂いがある。
恐る恐る木の棒ですくって、手首の内側にちょんっと乗せる。
「うおっ、ちょっとピリピリするけど……これ、多分……」
──《毒》じゃない。
肌の感覚で、そう分かった。
「よし! 成功だ!!」
両腕を天に突き上げ、誰もいない森の中で思いっきり叫んだ。
成功した──たった一つの簡易解毒薬だが、俺の“はじめて”の錬金術。
達成感で胸がいっぱいになる。




