召喚されたら毒でした①
目が覚めたら、そこは深い森の中だった。
「……え? どこ?」
まるでリアルすぎるVRゲームのような景色。
いや、VRどころじゃない。空気の匂い、葉のざわめき、木の質感、そして全身に広がる土の湿気と寒さ。これは間違いなく本物だ。
「えっ、ちょっと待って。ログアウトボタンは……ない!? うそ、マジで!?」
周囲を見渡すが、見慣れたHUDも、メニュー画面も出てこない。
自分の体は完全に“肉体”であり、ヘッドセットもなければ、どこにもコンソールの類はない。
「まさか……ほんとに転移したってやつ!?」
ついさっきまで、自宅のベッドの上でスマホゲームをポチポチしてたはずだ。
しかも、やっていたのはあの噂のVRMMORPGだった。
最先端のフルダイブ型RPGで、都市伝説のように「時々、異世界に召喚されるプレイヤーがいる」とネタにされていたが——
「ネタじゃなかったのかよッ!!」
木の根に足を取られて転び、派手に泥だらけになりながら、俺は絶望した。
装備もアイテムもない、レベル1。
初期リスポーン地点が“チュートリアルの街”ではなく“モンスター出現率の高い"樹海"だったあたり、もうツッコミどころしかない。