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Armed Change Insect

作者: 白湯

コンテスト用に書きました。

 今日もじいちゃんに呼び出された。

 俺、刑異賢二(おさかいけんじ)は今日もじいちゃんである刑異博士である刑異形太(けいた)の所に向かっている。家は研究所で「刑異研究所」と書かれた看板が掲げられている。

 じいちゃんは変な物を発明する事が多い。昔はちゃんとした物を発明していたけど、最近は自動で書けるけど人を不快にさせる言葉しか書かないペン、身につけるとなんでも人あげたくなるネクタイ、生地が透明な下着、果てにはアンドロイドも作ったのだけれど、やれる事は何かを持つことだけ。運んで移動する事は出来ず、そのまま動けなくなってしまう。そのアンドロイドは現在はじいちゃんの部屋の置物と化している。何でもスタンドミラーを持たせているとか。

 このように碌な物を作らない。今度は一体どんな物を作ったのやら...。そんな事を考えていたらじいちゃんの部屋...もとい研究室の前に着いた。ドアを開けると白髪に白衣と老人博士のテンプレートのような格好をしたじいちゃんが机に座っていた。周りには発明品と思われる物が沢山ある。そしてアンドロイドの姿もあった。ちゃんとスタンドミラーを持っており、見事に鏡台と化している。

 それともう一人白衣を着た黒髪の人物がいた。俺の父ちゃんの刑異甲平(こうへい)だ。何故父ちゃんまで?


「じいちゃ〜ん。来たよ〜。」


「おぉ!待っておったぞ形太!今度作ったものはすごいぞ!」


「それで?何で父ちゃんもいるの?」


「父さんも、今回は親父の発明に協力したのさ。親父にお願いされてね。それに二人ならイイものが作れると思ってさ。」


 父ちゃんはじいちゃんの発明とは違って、自動でかける不快にさせない実用的に使えるペンを作ったり、ちゃんとしたアンドロイドを作って見せたりとちゃんとした物を作っている。じいちゃんの発明を改良した物だけどね。


「今は親父の作った物を改良するのがほとんどだけど、いつかは自分で考えた物を作ってやるつもりだよ。もちろん親父の作った物よりすごい物をな!」


「出来るのかの〜お前に?」


「いつか必ずして見せるさ!今回協力したのも親父の技術を盗むという事も目的の一つだ!」


 なんかこのまま続くと口論になりそうだから、そろそろ本題に入らせようかな...


「そのじいちゃんと父ちゃんが協力して作ったすごい物って?」


「それはな...これじゃ!」


 じいちゃんが勢いよく机に置いたのは、両手サイズぐらいある白色のコガネムシのような昆虫メカだった。


「...何このでかい虫は。」


「賢二。これを。」


 父ちゃんから渡されたのは、三つのボタンとマイクが付いているブレスレットだった。俺が腕に巻くとじいちゃんがボタンを押してみろと言われたので試してみる事にした。ボタンはSword、Gun、Shieldの三つのボタンがある。

 Swordのボタンを押すと頭の部分が変形し始め、頭は剣にへと変化した。マイクで僕は飛べと言うと、メカは飛び始めた。そして父ちゃんに向かうように指示するとメカは父ちゃんに向かっていった。


「危な!」


「すげえ!本当に向かっていった!」


 次にGunのボタンを押すとメカの頭が銃口に変形した。じいちゃんが紙コップを持ってきた。この紙コップに撃つように命令した。パァンと音がした。撃たれたのは空砲だった。弾丸なんて入ってたら重くなるから入っていないらしい。

 最後にShieldのボタンを押した。メカの頭は盾の形になった。剣と銃は角の形みたいだったが、正面から見て盾の形なので上から見ると頭がなくなったように見える。でもそうじゃないと盾としては機能しなくなってしまうからだろう。


「まぁ、じいちゃんの作った物としては凄いじゃん。」


「そうじゃろう。...としてはとはどういうことじゃ?」


「それで、このメカの名前は?」


「ケジタテムシじゃ。」


「ケジタテムシ...なんかもっとほかにないの?」


「じゃあほかにあるのか?」


「ううん...ま、まぁ名前は気にしなくてイイか!」


「よし!それじゃあこのケジタテムシをお前にやろう!」


「存分に暮らしに役立てるのじゃぞ!」


 えぇ...こんな物持っていたら捕まるんじゃないの...?ケジタテムシを受け取った俺は自分の部屋へと戻った。


「賢二。おじいちゃんまた何か作ったの?」


「お兄ちゃんなんか持ってる!」


 部屋に戻る途中、母ちゃんである刑異佳代(かよ)と妹の明花(めいか)だ。


「何それ虫?デカイね!」


「そうだな。本当に...」


「また変な物作ったのね。」


「まぁ、変ではあるけど、変じゃないというか...」


「おじいちゃんの事、うっとうしいと思うけど、おばあちゃんが亡くなって寂しいのよきっと。だから悪く思わないでちょうだいね?」


「分かってるよ。俺もじいちゃんの事をうっとうしいとはあんまり思ってないし、面白いからな。」


「それにしても、まさか甲平さんも協力するなんて...」


 家は研究所と書いてあるが、ほとんど修理屋のような感じになっており、父ちゃんが機械を修理することで家の主な稼ぎになっている。あとは母ちゃんのパート。俺は小6、明花は小3。おかげで研究所なのになにも作ってないと学校で言われている。けど俺はそんな戯言には耳を傾けないようにしている。それにしてもこのメカをどう使おうかな?僕は二階の自分の部屋で考える事にした。


 翌日

 結局使い道が思いつかず一日が過ぎてしまった。今日は休日なので外に出てこのメカの使い道を考えよう...すると階段を駆け上がってくる音が聞こえてくる。俺の部屋に女の子が入ってくる。


「賢二君。おはよう。」


「おはよう。今日もおかまいなく入ってくね。ちゃん。」


「何もないから賢二君と遊ぼうかな〜って。」


 俺に挨拶をしたこの女の子は本山 蓮華(もとやまれんか)ちゃん。ショートヘアーでぱっちりした目が特徴の女の子。馬鹿にされる事が多い俺だけど幼稚園の頃からの付き合いがある蓮華ちゃんはいつも一緒にいてくれる優しい子だ。一緒にいる事が多くてじいちゃんが作った物を試すのに一緒に付き合ったりしてくれている。


「昨日は何だか音が聞こえてたみたいだけど、また何か作ってたの?」


「そうなんだよ。なんか虫のメカを作ったみたいなんだけど...」


「へぇ~どんなの?」


 僕は蓮華ちゃんにケジタテムシを見せてた。それを見た蓮華ちゃんはでかいと感想を言った。まぁ、こんな両手サイズの昆虫を見たら誰だってそんな感想が出るだろう。俺だってそう思うもん。

 そして一通りの機能を見せた。それを見た蓮華ちゃんは目を輝かせていた。


「うわー!すごーい!顔が変形するなんて!形太おじいちゃんって変な物しか作れないと思ってたけど、こんな凄い物も作れるんだね!」


「こ、興奮してるね...蓮華ちゃん」


「だってこんなの見たら興奮もするよ!」


「それで、このケジタテムシを持ってこれから出かけようかと思ったんだけど...」


「そうなんだ!じゃあ私も一緒に行く!」


「ちゃんも?」


「だって面白そうなんだもん!それとも私がいたら迷惑だった...?」


「いや、ちゃんがいるとこっちも心強いよ。」


「そ、そんな事言ってくれるなんて、嬉しいような恥ずかしいような...そ、それじゃあ行こうか!//」


 ちゃんは顔を赤くさせながら階段を降りていった。俺も一通り準備をして外に出ていったのであった。


 外に出た俺達は横に並んで、話をしながら町を散策していく。このケジタテムシをどうやって役に立てられるかを蓮華ちゃんと話し合う。

 歩いているとグラウンドが見えてくる。すると、そのグラウンドから野球ボールがこちらに向かってきた。俺はGunのボタンを押して、ケジタテムシの顔を銃口に変形させて野球ボール目掛けて撃つように指示した。ケジタテムシは羽ばたき始め、僕たちに当たりそうになる直前に野球ボール目掛けて空砲を発射した。撃たれた野球ボールは地面に転がっていった。グラウンドから一人の選手が、怪我はありませんか?とこちらに言って近づいてくる。俺はボールを手に取って、大丈夫です。と言ってボールを渡すと選手はグラウンドに戻っていった。


「なんとか大丈夫だったみたいだ...役立て方を一つ見つけたかな。」


「助かったよ〜。ありがとね!賢二君!ケジちゃん!」


 蓮華ちゃんはケジタテムシをなでる。感情があるか分からないけど、俺の中ではケジタテムシは嬉しそうに感じた。それにしてもケジちゃん...まぁ、ケジタテムシって少し言いにくいから縮めた方が言いやすいか。

 事が解決した俺達はケジタテムシ...縮めてケジの役立て方を見つける為、引き続き町を散策することにした。


 歩いていると、おじいさんが棒で木を突いている様子が見えた。どうやら自分の家の柿の木で届かない所に出来ていて取れないようだ。おじいさんは諦めて家の中へと入っていった。Swordのボタンを押して、ケジの頭を県に変形させて柿の元へと飛ばせた。頭を動かして柿を木から切り離した。柿は地面に落ちていった。こういう人知れずな役立ち方もあるのか。俺は引き続き散策を続けた。


 しかし、それからはしばらく歩いても役立て方というものは、そんな簡単には見つかるはずもなかった。やはり銃口や盾は日常生活に使う事なんてめったにないだろうし、そんなものがごくありふれた日常と化した所になんて住みたくない。このメカは本当に必要な物なのだろうか?

 すると近くから銃撃音が鳴り響いた。俺達は音の響いた場所に急行した。

 銃撃音が鳴った場所は銀行だった。銀行強盗が銀行の前に立ち、銀行の前には数台のパトカーが強盗を取り囲んでいる。強盗は銀行員を人質にして、逃走用の車を要求している。事あるごとに右手に持っている拳銃を発砲して警察官達を威嚇する。


「怖いね...賢二君。何とかならないかな?」


「あの拳銃をどうにかすればいいのか?だったら、ここはケジの役立ち時だ!」


 俺はケジを強盗の元に行くように指示して、ケジは羽ばたいた。ケジを見た強盗は困惑した。


「何だ!?このバカデケェ虫は!?撃ち落としてやる!」


 そう言って強盗は拳銃をケジに向ける。俺はShieldのボタンを押してケジの頭を盾に変形させた。強盗は発砲したが、ケジは傷は多少は付いたものの盾で見事に弾を防いでみせた。


「何だと!?」


 Gunのボタンを押して銃口に変形させ、ケジに発砲させる。発砲した空砲は強盗の右手に命中した。強盗は拳銃を落とした。それを見た警察官達は一斉に突撃して強盗を取り押さえて人質を救出した。強盗は逮捕されて、この事件は無事に解決されたのだった。事件の一連を見た俺達はケジを戻し、その場を去った。


「まさか事件を解決させちゃうなんて、やっぱり凄い発明なんだな...。」


「凄いよ賢二君!やっぱり形太おじいちゃんって凄い人だったんだね!」


「今もちゃんとした物を発明出来るって事が分かったよ。」(父ちゃんと共同開発だけど)


「解決してくれてありがとね!ケジちゃん!」


 空を見上げると夕日出ていた。気が付けばもう夕暮れ時になっていたので、俺達はそろそろ家に帰ろうとした。


 帰宅の途中、交差点で怪しげな二人組の男達を見かけた。金髪と赤髪の二人組で手には、金髪は拳銃、赤髪は金属バットを手に持っていた。交差点には帰宅途中の人達がたくさんいた。

 そんな中で金髪は拳銃を上に向けて発砲し始めた。


「はっはっはー!今からここにいる奴らを殺しまくってやるぜー!」


「俺らの手であの世に送ってやるぜ!」


「に、逃げろー!」

「ママー!」

「こ、怖い...」


 それに驚く通行人達。逃げ惑う者もいれば、腰を抜かす者もいる。中には小さい子もいて、母親に縋りつく様子も見られた。


「まずはお前だ!」


「うがぁ!」


 金髪はスーツを着た男を容赦なく射殺した。


「死ね!死ねぇ!」


「あっ...ぐっ...」


「パパー!うわ~ん!」


 赤髪は子供のいる父親を金属バットで撲殺した。何でこんな事しているんだこいつらは...!


「さぁて、次に撃たれたいのはどいつかなぁ~?」


「次に俺に叩かれたいのはママか?それともガキか?」


「賢二君...怖いよ...助けて...」


 その場の惨状を見ていた蓮華ちゃんは俺の背後に身を隠し、身体を震わせながら俺を抱きしめて涙を流している。もうこれ以上、犠牲者を出す訳にはいかない!俺はGunのボタンを押してケジの頭を銃口に変形させて金髪に向かわせた。


「なんだこの虫は~?撃たれてぇのか?」


 金髪が銃を構えた瞬間、金髪に突撃するようにケジに指示した。金髪の手に発砲し金髪は拳銃を地面に落とした。


「虫のくせにちょっとデケェからって!今すぐ撃ち落としてやる!」


 Swordのボタンを押して頭を剣に変形させたケジで金髪の右手の指を全て斬った。


「ぐぁぁぁ!俺の指がー!」


「大丈夫か兄貴!よくも兄貴の指を!このクソ虫がー!」


 赤髪がバットでケジを叩こうとするが、その場から上昇して叩けない位置まで移動しているため叩かれないでいる赤髪の姿は滑稽だった。


「クソー!むしゃくしゃしてきたー!あのガキ共からめったくそに叩いてやらぁー!」


 赤髪はさっきの撲殺した父親の親子の元に駆け寄っていく。Shieldのボタンを押して盾に変形させたケジを親子に元に急いで向かわせる。赤髪は親子にバットを振りかざそうとした。そこに親子の前にケジが現れて、振りかざしたバットを親子から防いだ。間に合って良かった...。

 しかし、その瞬間銃撃音が響き渡る。その銃弾はケジの体に命中しケジは地面に落とされた。


「む、虫野郎を、う、撃ち落としてやったぜ...!」


 金髪は左手でケジを撃ち落とした。ケジは体を銃弾で貫かれて停止してしまった。


「よくもやってくれたな!このクソデカ虫が!」


 赤髪はケジを叩いた。その様子を見た俺はいてもたってもいられなくなってしまい、ついに声を上げてしまった。


「やめろ!ケジをこれ以上叩くな!」


「お前か...このクソデカ虫を操ってたのは!」


「こんなガキが俺達の邪魔をしてやがったのか!てめぇは完膚までに叩きのめしてやるぜ!覚悟しやがれ!」


「...分かった。その代わりケジやほかの人達に手を出すのやめろ。」


「それは...どうかなぁ?」


 赤髪は俺の目の前に立ち、バッドを振りかざそうとした。すると誰かが赤髪の手を掴んで振りかざすのを止めて、そのまま取り押さえた。取り押さえたのは警察官だった。金髪も同様に取り押さえられていた。どうやら誰かが通報をしてくれていたみたいで、二人は喚きながらパトカーに乗せられていった。

 俺達はすぐさまケジの元に駆け寄った。ケジの体は粉々になっており頭の部分しか残っていなかった。


「ケジ...お前がいなかったら、俺は殺されていたかもしれなかった。お前のおかげでこの最悪な事態を止める事が出来た。ありがとう...ケジタテムシ...」


「がんばったね...ケジちゃん...ありがとう...ケジちゃん...うぅ...」


 ケジの頭を見て俺達は涙を流し、ケジに感謝をした。俺はケジの頭を持って家に帰る事にした。


 家に着いて、それぞれ帰宅して、俺じいちゃんの部屋を訪れた。俺はケジの頭を見せて今日あった事を話した。


「ごめん。じいちゃん。せっかく作ったのに...」


「賢二が無事だったのなら、それだけでわしは発明した甲斐があるものじゃ。それにしてもそんな不届き物がいるとは...今度は悪人を成敗する発明でもするかの!」


「前向きだね。じいちゃん。」


「それにまた作ればいい事だからの!」


 俺はこの日を一生忘れることはないだろう。一台のメカ...いや相棒によって命を救われた事を。自分の部屋に戻り、空を眺めながら、俺はケジの頭を両手で包み込んだ。

後半、急展開になっちゃったかな...

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