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正義のみかた

作者: 仄々 とろろ

 俺は正義の味方になりたい。それが俺の持論だ。

 そうやって今までの学生時代を乗り切ってきた。なんとなく生きてきてもなんとなく夢は持っていた。いつでも、今のところいつまでも。


 俺の友達はやめといた方がいいと言っていた。映画で見た正義の結果を必ずしも正しくない正しさを信じていた。俺は違う。秤がない世界で何にはかりを当てれば良いのだろうと考えたところで、自分自身が信じる正義以外は信じることなんてできることがないのだから。俺は俺なりの正義を貫いている。それがなきゃこんなクソみたいな社会ではやってられない。というよりも俺自身が俺自身になることができないのだから。


 今日も教室は平和だった。俺がいるせいではない、ただ単に平和だからだ。正義の味方は正義を執行する前にそれを執行する相手や環境がなければ成立しないのだ。だからこと、今は正義の味方は存在のみで、成立している。それが俺の持論だ。

 だからと言って何もないとこんなにも何もないんだからと考えている。何か起きないと考えてしまうことは人間としてはいけないことではないんじゃないか?


「よう、儒艮、今日も何もないかい?」


 友達が近づいてきて聞いてきた。こいつは俺が開放的になって正義について打ち明けた瞬間にやけにいじり始めてきた。彼なりの戯れ方だととっておいていたら、気が楽になった。


「正義の味方も大変だな、何も起きないと何位もないんだもんな。いや、それが正義の味方にとっては一番いいのかな」


「俺は自分を貫くための正義を信じているだけだ、別に人を助けるだとかの正義の味方なんてなりたいとも思わないし、思ってはいけないんだ」


「そんなことで縛られるのも辛くねーの?学生なんだし」


「学生だからといって何にも努力しないのはどうかと思うけど」


「いうじゃん」


 こいつといるとホイホい雑談が捗る。こんなにも友達として良い人はいないんじゃないかもしれない。ちょっと惚れている。


「席つけー!」


 ドアがピシャリと閉められ授業が始まろうとしていた。それなのになんの違いもないかのようにせめてものコソコソ話続けた。


「なぁ、今日はカラオケ行かないか?」


 掲示、ちなみに友達の名前は、今日クラスの中の少人数でグループを作って駅前のカラオケに行かないかと誘っていた。俺ももちろん行くつもりだ。

 俺には病気がある


「お願い!儒艮くん!君にしか頼めない!」

「なぁ、儒艮ー。なんとかならねぇか?」


 そう言われてしまうと断れないのだ。

 こんなことだから正義の味方も自分のためにかなれないのか。


「まぁそんな性格だから正義の味方ができるのかもしれないな」


 掲示はそんなふうに適当そうに言っているが、それによって救われることもある。しかし、それは人それぞれで、その適当さが人を傷つけるときもある。

 それによって掲示は半数から好かれていて、半数から嫌われている。しかし彼自身はあまり気にしていないようだ。

 そのまま授業は続いていき、こんなことが続いているのも、時間が限られているからなのかもしれない。授業は早く終わってほしいと思っている。

 二限の鐘がなって授業はやっとひとまず落ち着いてきた。

 授業は半分しか終わっていないのに仕事がもう終わったのかのように足すみが訪れた。休みとはただなだけで合って本当は食事を取るための時間である。休みとは幼稚園のお昼寝時間のことをさす、それが俺の持論だ。


「そんなに考えてもなんもわからないぜ、どうせ全部のことを自分のことを知ることなんてできないんだから」


 こんなことをひたすら言っていてもしょうがない、ひとまず悪役でも日常に入れてみようか。

 放課後、カラオケの予定が入っていたので、親に連絡した後、都会の方に行った。田舎でもカラオケはあるのだが、その雰囲気を楽しむために都会に行くようだ。ショッピングならともかくも、カラオケだけのために電車賃を払うのは某テーマパークの心理とはなんの変わりもないのだろう。掲示は進行を務めていて、なんにしてもこれはこれこれはこれとみんなをうまく仕切っていた。彼は自分を仕切ることができないのに他人を仕切ることはかなりうまいのである。自分ができないことは他人にすることができて、自分が嫌いなことは、自分の嫌なところを投影しているだけ、と聞いたこともある。そんな単純なのかなと考えていても、そんな雰囲気で自分を仕分けできるのだろうと考えてもいるので…う、俺の持論ではあるけど。


「では、メインコースのカラオケはこちらになりますー!」


 メインコースでもクソでもないカラオケが街に出て数時間経ってやっときた。オールはできないと伝えてあるからもう半分の時間をただ都会を練り歩くだけで使ってしまっていて俺は少しイライラし始めていた。自分の時間を他人のために管理される、使われるのは一番嫌いなことである。なぜか走らないが。

 あいも変わらず狭い受付では、裏で店員が吸っているタバコの臭いがかすかにしている。ここは学割料金でかなり安くフリータイムができるからこれだけでまちに出てくる価値はある。いや、これが安いからことプラスの費用がチャラになると考えてもいいのかもしれない。これからの予定もわからないままカラオケはオールになる雰囲気がしていた。


「誰かお酒買ってきて」


 それは言ってはいけないことではあるのだが、学生の間のバカをやるのにはうってつけのセリフではあった。そんなことをやっているのは学生のうちだけであることが親から散々聞かされていたが、高校ではなく大学であると聞いていた。つまり高校からやっていると大学の時に先に進めることにはなる。そのことで俺たちは進んでいけるのかもしれない。だからこそ正義は俺たちと共にある。

 外気に触れるといかに地球が空気で溢れているかわかる。ジャケットのジッパーを閉めながらコンビニに早足で向かった。


「儒艮、バックもってきてないじゃん」


 ジャンケンに負けて掲示と俺は買い出し係になってしまった。というのも掲示はジャンケンで勝ったことがないくせに俺に挑んでくるようなやつだった。何もこんなに勝負をしなくても自分から行けば負けを免れることができるのに。

 そんなことよりバックをもってきていないことは痛い誤算だった。そんな掲示ももってきていないが、それはただ単に彼がバックを持ち運ぶことを嫌う人間だからだ。

 とりあえずコンビニに入りいかに自然と大学の雰囲気を出せるかを考えた。この組み合わせはラッキーだった、掲示はいかにも大学に入れば友達が増えそうなやつだったし、俺もどこにいても自然に振る舞える自信を持っている。

 自然に冷蔵庫から取り出し、自然と買うだけ。都会であれば良いのはこのことからでもある。身分証明を取り出さなくても良いフィフティーチャンスだからだ。店員は外国人店員、良しと思いながら何を買うかに集中した。


「これでいいんじゃね?」


 掲示は金色のビールを取り出し、いうが、それがなんなのかはわからなかった。それは掲示も承知済みで、何がなんなのかわからないサインでも合った。普通に考えてば俺たちが学生であることは見たところでわかる。そのことを考えれば安いものを買うことで一貫だろう。しかし学生はビールなんていう普通のものを買うのだろうか?大学生はテキーラが大好きと聞いたが、それはカラオケで買うものではないことくらいわかっていた。というよりも考えればなんとなくわかる。

 安い、たくさん、そして買う時には話しながら。ツッコミどころをなくすことに集中すれば、ある程度何を買っても大丈夫だろう。今考えてみれば、なぜこんなに酒には種類があるのだろうか。


「こんくらいでいいんじゃね?」


 自然とフォローを入れた掲示に俺も同意した。

 銀色のビール6本、瓶のお酒を1本、という結果になった。

 そのままレジに進み、自分たちの若さゆえの自信をありったけ出し切り、レジを待つことにした。前にはサラリーマンが二人、一人は女性で、今レジでタバコをっているのが男性だ。

 タバコを買うことで自分たちの大学生ライフを出せるのかもしれない、しかしそれによりチャンスを上げると同時に圧倒的にキルムーブになるかもしれないことが承知していた。


「109番」


 行くべきか、それか大人しく酒を買い出しするべきか、俺が大学生だったらどうするか。まずタバコは吸わないだろう。しかしそんな悩みは無駄に終わった、掲示がすでに番号を言っていたからだ。


「101番、赤いやつの8ミリで」

「12ミリだよ」

「あ、それで」


 ミスは許されているのか、そこでもうバレているのかわからない。バレていたとしてもとにかく外に無事に出られることで成功と見做される。掲示はミスを重んじてか、俺に話し出した。


「儒艮、バックとか持ってない?袋いる?」

「いや、ジャケットに入れればいいだろ」


 店員が顔を上げる。お願いだから何も言わないでくれと思いながら掲示に無理やり話し続けようとした。


「掲示こそバックもってきてないの悪いだろ」

「お客さん、身分証明書ありますか?」


 この時点で何もかもが終わったと思った。最終的には忘れたことを伝えて全てをキャンセルすればいい話なのだが、それは敗退に終わることである。なんとかして現状を復活しなければ。

 凍った時間は一瞬であり、その間に掲示と俺は脳みそをフル回転させて言い訳を思った。人間の脳はフル回転をして答えを出すのに最速の縛りがあるのか俺たちは同時に財布を取り出すためにポケットに手を入れた。


「あ、掲示もってる?」

「え?あーわからん」


 何か答えを、せめて時間を増やしても何かを探さなくては行けない。時間は無駄にしてもいい。社会の決まり事なんて何も言われなければいくらでも無視しても無理してもいい。しかしそのやり方には嘘をつくように積み重なっていく。こうなったら俺が財布を弄り出す。何かがあるのかは自分の財布であってもわからなかった。


 整理整頓なんて文字もない財布からはレシートが溢れ出し、今の段階で助けの手を出してくれるかのように散らかっていた。何か、何かないかとカードを目でスキャンしながらカード取り出していった。



 コンビニの外に出て、再び外気に触れて、れフレッシュどころではない異常なほどのアドレナリンと横にいる掲示という友達に感謝しながら、逃げるようにカラオケにもでって言った。

 カラオケでは何事もなかったのように、少し落ち着いた空気になっていた。何事もなかったのようにコンビニのビニール袋を置くと、一斉に部屋の感情が昂った。それからは学生であれば皆がやるようなつまらなくとも必要である空気ともに、それぞれ親に連絡をして、夜から朝になるまで駆け抜けた。




 儒艮

 掲示

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