序章
これは長くなりそうです。結構グロいかもしれません。
ある日私はネットニュースを漁っていると、自分が推しているアイドルグループのメンバーの1人が行方不明になったという情報が飛び込んできた。
「美幸ちゃん....嘘だろ....まてまてまて......最悪の結果だけは辞めてくれ....」
そう心の中で願っていながら、なにか手掛かりは無いかと、様々なSNSで「花咲美幸」と手当り次第に検索していった。すると、とぅいったーでとあるとぅいーとを発見した。
「某フリマサイトで花咲美幸の唾液が手に入るらしいwwwwww」
と写真付きで載せられていた。1日前のとぅいーとでそれはリツイート数もいいね数もまだ10件以内。写真にはジップロックに入った気持ち悪い色をした液体が少量。ただものすごく信ぴょう性が低い。その商品名には「花咲美幸の唾液」とだけ書かれている。どうせただのおじさんのものに決まっている。しかも値段も318円って、微妙に高いのはなんだ....。
あまりに気持ち悪いのでそのままタブを閉じたが、少しその商品が気になり、そのフリマサイトで検索をかけてみた。当たり前だが、その商品のヒット数は1件。さっきの汚い奴だ。ただ一つ気になる点があった。それはコメント欄に書かれているとあるコメント。
「これ某フリマアプリで出品されたやつのパクリやん。おもんないで」
なんと、他にも唾液を出品している人が別のアプリにいるとは。その某フリマアプリも確認してみよう。
そう思って新しく登録を済ませ、検索をかけていった。さっきの人が言っていた通り1件見事にヒットした。さっきと別の、綺麗なジップロックに入った透明な唾液。
「花咲美幸の唾液」
300円。
一瞬でもお買い得だと思ってしまった自分を殴りたい。いや、そうじゃなくてこれもただのおじさんのものに違いない。しかも俺は何故わざわざこんなものを調べているんだ。
我に返ったのでアプリをアンインストールしようとしたが、その出品者の評価が書いてある欄にこの人は☆5がついていた。感想合計48件。どういうことだ?みんなネタで書いているのか?少し気になって、その出品者が投稿している商品を知りたくてページを開いた。私は、その行為を今でも後悔している。
「なん...だこれ....なんなんだこれ......」
「花咲美幸のカバン」「花咲美幸の靴下」「花咲美幸のリップクリーム」「花咲美幸の血液」「花咲美幸の爪(洗浄済み)」「花咲美幸の右手の指(指紋認証で解除できるスマホ付き)」「花咲美幸の足首」「花咲美幸の胸」「花咲美幸の骨盤」「花咲美幸の脳」
私は固まりざるを得なかった。それは全て買占めれば、花咲美幸が完成してしまうんじゃないかと思うぐらいの狂気的な出品量。リアルな作りをしている。いや、もうリアルとかそういう次元ではない。「本物」だった。それを決定づけたのは、花咲美幸関連の1番最初の出品「花咲美幸の頭(脳摘出済み)」それは紛れもなく痩せた花咲美幸の顔だった。
「うわぁぁぁぁあああああぁぁぁ!!!!」
私は絶叫しながら襲いかかる吐き気を抑えつつゆっくりとページをスクロールした。見ていると、恐ろしいことに何個か「sold out」となっている。それら全て星5。
私は恐怖と混乱という衝動に駆られ通報を押そうとした瞬間、目に入るその文章。それは私に通報ボタンを押させせない1文。それは商品詳細の下に書かれていた。
「こいつは私の作業を邪魔して警察に通報しようとした。絶対に許せない。」
結局私は何も出来ずに堪えようのない恐怖を感じ、泣きながら寝た。
次の日の朝、そいつのアカウントは凍結されていた。いったいなんだったのだろうか。花咲美幸の事務所からの新しい声明も未だ無し。本当にあれは花咲美幸だったのか。私は、名も知らぬ出品者の復活を恐れながら毎日検索をかけた。やはり、数日後には復活していた。だが出品欄に花咲美幸関連のものは無い。ただ、新しい商品が追加されていた。それは毛深い男性の足や太い首など、明らかに、こいつに新しく殺された人だった。
「雪本誠司の足」
860円
私のアカウントを通報した人間。こいつのおかげで出品した商品は全てパーになった。生かしてはおけない。
私はもうこいつに関わってはいけないと思い、ゆっくりとタブを閉じた