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第87話  学園長との究極の約束

「これらの魔法属性は、天性の才だったり、血に組み込まれていたりするのぅ」


 血――遺伝子……私の言う、刻印魔法の一種か?

 物に刻み付ける刻印魔法だが、人体――遺伝子にも適用されるのか……。


「もちろん、これらは後天的に習得することができる。吾輩も、君に負けない程度には、習得しておるぞ」

「後天的に習得できるのなら、特に問題はないのでは……?」

「いや、かなり難しいんじゃよ。しかし、他の二つよりは習得しやすいし、人を選ばん。究極の努力の賜物、とでも言おうかの」


 究極の努力の賜物、か……。

 確かに、いろんな世界を渡り歩いてきた私の今までの積み重ね……努力か。


 まあ確かに、他の……所謂いわゆる、四大属性と大差なく習得できた。

 初級魔法には存在しなかったが、それも誤差の範囲内でしかなかった。




 学園長の話から察するに、理由は何となく想像がつく。『複雑属性』は四大元素の応用。

 初級魔法にそれらの属性がなかったのはそれが理由だろう。


「そして次に、『空間魔法』じゃが……わかっておるな?」

「ええ、〈転移テレポーテーション〉ですね。あとは〈転送アポート〉ですか。……その言いようだと、他にもあるんですか?」


 まあ……そりゃあ……、あるだろうな。


「ん? まあ、あるにはある……が、これが特に血に宿るものでなぁ……。吾輩は恵まれておらんかったがな」


 血……か。

 ティシザス皇家の血にも何か宿っていないかな?

 あったらいいなぁ。何か強いやつが。

 あっても使えないけどな。


「血に宿った魔法は、最初から使えるのですか?」

「わからん。個人差があるし、宿った魔法のレベルも影響するし、何より、百パーセント受け継がれるとは限らないんじゃ」


 となると、私の血に何かの魔法が宿っていても、血が目覚めてくれるのを待つしかない、と。

 その可能性も百じゃないときた。

 仮に目覚めても、完全に目覚めるのとは別物ときた。


 皇帝の血だもんな……仮に宿っていても、皇家から離れた私が目覚めさせることはできるのか……怪しいものだ。

 皇帝の血に宿った以上、皇帝が使うべき能力なのだろうからな。


「そういった血を持つ貴族の一部は、能力が発現したものを次期当主とするようじゃぞ」


 なるほど、血に重きを置く貴族ならではの風習だな。

 まあ、遺伝情報……血に宿るのであれば、隔世遺伝もあり得るからな。


「高位貴族なんかの血には、それなりのものがあるようじゃぞ。それこそ、切り札的なものがの。……吾輩は貴族ではないから知らんがな」

「え、貴族じゃないんですか!?」

「うむ。大陸最強の魔法使いとして名を馳せた結果として、貴族位を貰ったんじゃ。平民から一気に侯爵じゃ、凄いじゃろう?」


 ああ、はいはい。すごいデスネ~~。

 大陸最強ねぇ……。正確には、周辺諸国最強だろう? 南の亜人国家とは不干渉なんだしさ。


「それと、『時間魔法』に関しての説明は……大丈夫です」

「なぜじゃ?」

「私には……使えないので」

「…………そうか。では説明は終わりじゃ。まあ、また聞きたくなったらまたいつでも来るといい」


 どうせ、私は時間に関する魔法は扱えないのだ。

 時間魔法習得に費やした時間は、優に百年は超えるだろうな。だが……――

 

 つまり……そういうことだ。


「君はこの試合で、空間魔法に加え、氷属性と雷魔法まで行使した」

「ええ、ですが……後天的に習得はできるんですよね?」

「――じゃが、君は自分の若さをわかっておるのか? 齢十五で――」

「――あ、今日で十六です」


 そう、今日は私の誕生日――五月十六日だ。

 今まで生きてきた日数はおおまかにしかわからなかったから、適当に決めた。

 まあ、ほぼほぼ間違いはないかな。数日など、誤差の範疇だろう。


「ほぉ、そうか! 誕生日おめでとう。……残念じゃが、一教師が一生徒に贈り物を贈ることはできんのじゃ」

「構いませんよ。それが当然ですから。お祝いのお言葉をくださっただけでも、私の心は満たされました。これ以上は溢れかえってしまいます」

「ほう……では、もうじきお主の器は砕け散るであろうな……」


 そう言って学園長は、それはそれは楽しそうに笑い出したのだった。

 もしかして、知っているのか?


「では、私は――」

「待て待て、話はまだじゃ」


 まだあるというのか。

 いい加減、帰って寝たい。


 魔力を久しぶりに、それなりに消費したからな。

 まだ半分は残っているから、全然動けるけど、いつもより若干眠気が……。


「魔法の熟練度に関して言えば、君より上の存在はまだまだおる」


 でしょうね、なんて口にはしない。

 私はまだ五歳……六歳児だ。確かに、波長が少ない魔法は大分見つかったと思う。

 だが、もっと多いものは発見が難しいからな。まだ少ない。


「例えば、学園長……あなた、ですね? …………そもそも、大陸最強の魔法使いを前に、それ以外の返事がありましょうか?」

「……そうじゃな。…………持って生まれた時間魔法への適性と、空間属性を操る師。すべては、恵まれた環境に生まれ育った故……こうなるのは必然じゃった」


 さらっと言い放ったが……時間魔法を使えるのか。羨ましい限りだ。


「空間属性……〈転移テレポーテーション〉や〈転送アポート〉が一般的ですが、時間魔法……どのような力が?」


 もしかしたら、この世界では……なんて、毎度毎度思わずにはいられない私は、諦めが悪いのだろうか?


「そうじゃな……。究極の魔法に関しては言えんが、物の時間を巻き戻したり、早めたりじゃな」

「見せて頂けますか?」

「……よかろう」


 そう言うと学園長は、机の上に置かれたコップの中に水を生成し、並々まで満たした。

 そしてそのコップを持ち上げ……こぼした。


 机の端には重要そうな書類が山となっており、机の上を流れる水は徐々に書類の山に近づき……やがて、侵食を開始した。


「よく見ておれ。――〈逆行リバース〉」


 学園長が魔法を行使すると、水が徐々に机の中央に集まり、浮かび上がり……コップの中へ戻り、消えた。

 水浸しになったはずの書類はすでに乾いていた。

 

 そしてやはり、波長をハッキリと見ることはできなかった。

 魔法が発動する気配を感じることしかできなかった。


「物の時間を巻き戻す魔法じゃ。……まあ、時間魔法はその効果の関係上、空間魔法よりも人を選ぶ。ただし、対抗策はいくらでもある」

「貴重な体験を、ありがとうございました。いつか、その究極の時間魔法を見せて頂きたいですね」

「ならば、究極の空間魔法を完成させることじゃな。吾輩も見てみたい」


 私は学園長と少し、空間魔法と時間魔法に関する話をし、部屋を出た。


 このあと、ファンたちと予定がある。

 時間は……ギリギリか。話し込みすぎたな。











「『重力魔法』……まさか、そのようなものまで存在しておるとはな……」




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