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第61話  生徒会withファンクラブ

 シンシルスの恋路に幕が下ろされた翌日。

 

 私が侵入者たちを撃退したという噂は学園中に広がり、生徒たちの視線がより強いものに変化していた。


 ちなみに、シンシルスはもう立ち直っている。

 恋に落ちるのも、立ち直るのも速いとはな。……それも恋が実らない原因か?


 私が廊下を通ると、みんなが避け、道を開ける。上級生や一部の同級生は別だがな。

 私と一緒にいることが増えたシンシルスが、気まずそうな表情を浮かべている。

 まあ、生徒たちの視線の先にシンシルスはいないし、まず気付かれていないかもな。


 そして、私のファンクラブとやらも大々的に活動を始め、規模も拡大しているようだ。

 廊下を歩くだけで、一部の女生徒が、遠慮気味に小さく手を振ってくる。


 そんな彼女らに対し、私はしっかりと笑顔で返す。

 どこの世界でも……特に王家にいた頃は受けたものだ。こういうことには慣れている。

 

「レスク……その笑顔は敵を増やすんじゃ……?」


 シンシルスが耳元でそう呟くが、


「よく見てみろ。私と張り合う気は、さらさらないようだぞ?」


 男子生徒たちの顔や波長には――少し前までは苛立ちや嫉妬が残っていたが――諦めの感情が浮かんでいた。

 もちろん、シンシルスの顔にもな。





「「はぁ~~~」」


 放課後。

 今日は生徒会の集会(不定期開催)の日だ。


 私と王女は席に着くなり、大きな溜め息を吐いた。

 私と王女は、同じ苦労を持っている。


 私や王女の制服のポケットには、何通もの手紙が入っている。

 いずれもラブレターやファンレターだ。


「二人してどうしたの……って、原因は明らかね」


 生徒会長が私たちのポケットの手紙を見て、くすりと笑った。


「会長もファンクラブありますもんね」


 テオ副会長が話に入って来た。


「私のは……有志ね。二人のと比べて、かなり落ち着いているしね。まあ、レスクくんは……自分で油を注いでいるようだから、自業自得ね」


 ふむ……。自覚はある。

 手を振られたら、手を振り返す。当然のことだ。仕方ない。

 

「マイスさんのファンクラブは、私と同じでかなり大人しいようだけど……」

「私は……」

「なるほど、行動力のある男子に告白されているのね。気苦労はファンクラブじゃないのね」

「……その通りです」


 毎度毎度、相手を振るのも疲れるのだろう。


 私は……メンヘラ毒女にしか、面と向かって告白されていない。

 高みの存在――高嶺の花として映っているのだろうか?

 ……幾度も経験済みで、慣れたものだ。

 それに友達や仲間がいる以上、まだマシだ。孤高でも、孤独でもない。




 ……にしても、王女は……相手が男連中だからか、告白まで行っているとはな。

 呼び出されるのも面倒だろうし、振るのも、相手への配慮が必要になる。

 それだけ、“告白”という勇気ある行動を無下にする“振る”という行為は気が重くなるものだ。


「――さて!」


 パンパンッと会長が手を叩いた。

 いつの間にか、全員集合していたようだ。


「今日集まってもらったのは、他でもないわ。先日、レスクくんが取り押さえた侵入者たちについてよ」

「……取り押さえて、事情調査して、はい解決……じゃなかったんですか?」

「普通ならそうなんだけど……今回ばかりはちょっと面倒でね……」


 ああ、読めたぞ。

 裏にいる組織が判明し、おまけにそれが私たちを狙っているといったところか?


「みんな、今の私の一言で察したと思うけど……やつらはこの国の裏に生きるとある組織の傘下に入っていたの。そして、今朝。学園宛にメッセージが届いたわ。内容は……テオ」

「はい。――我ラノ仲間ニ手ヲ出シタ代償ヲ……です」


 テオ副会長が声を低くし、エッジの利いた声でメッセージを読んだ。

 それにしても、単純なメッセージだな。大した組織じゃないんじゃないのか?


「そう。いつ襲撃が来てもおかしくないの。これを受け、学園長がこの学園に結界を張ったわ。でも……」

「外に出たときが最も危険だということです」

「そして、その外に出るイベントが……もうまもなくだ」


 もうまもなく?

 クラスのないこの学園。

 つまり、学年単位で動け、なおかつ外で行われるイベント……。何がある?

 体育祭……文化祭……合唱祭……遠足……。


 ファンゼル副会長はワクワクを抑えられずに、口角がぴくぴく動いている。

 波長は尚更だ。

 楽しい行事……。なんだろう。


「それは……」

「――課外授業だな!」


 やっと言えた、とでも言いたそうなスッキリとした顔をしている。

 大して長い時間溜めこんだわけでもあるまいに。


「……そういうことよ。明日にでも、学園長から直々に伝達が掛かるでしょう」

「そこで、俺たち風紀と会長、副会長、庶務……計九名は別の任務があるんだ」


 マガルコフ風紀委員長が細目を僅かに広げた。

 任務か……メンツで判断できるな。どうせ護衛関連だろう。


「たった九人で、ですか?」


 ローズが質問を投げる。


「心配ないわ。マガルコフのファンクラブは腕利きが多いから!」


 やはりファンクラブがあったか。

 

「まあ、周辺の警護の任を託されるわけだ。慣れないかもしれないが、頑張ってくれ」

「その分、しっかりと装備を整えていいからね。一応、上位の信頼できるアドベンチャラーを各学年に一人雇うから、安心してちょうだい」


 フル装備でいいのか。

 ローブは……収めておくとして、指輪やブレスレットも装備しておこう。

 いつ戦闘に入るかわからないしな。


 ただ戦闘に入るならこの服装で問題なのだが、他の生徒を巻き込めないからな。

 速攻で終わらせるしかない。アルティナを抜く決断もな。


 しかし、上位アドベンチャラー一人か。

 金がないのか、信頼できるアドベンチャラーが少ないのか……。

 後者が主だろうな。


「はい、また課外授業の前日に打ち合わせがあるから。今日はこれだけ。一応、万が一……いや、億が一に備えて日頃から警戒しておいてね。解散!」


 今日の集会は、「こういうのがあるから先に知っておいてね」というものか。

 不定期なわけだ。

  





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