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第43話  遺品調査

 私は一度宿に帰り、部屋に入った。

 やるなら……今だ。

 休憩? そんなのあとだ。


 私は〈転移テレポーテーション〉を発動させ、先ほどの、遺跡最奥に位置する小部屋の前に転移した。


 髑髏がまた襲ってきたが、先ほど同様の手で無力化させた。

 マジックアイテムのおかげで、〈障壁バリア〉の耐久度は大幅に上昇した。

 先ほど破れなかったこれが、今回破れるはずがない。

 安心して調査できる。


 この大量の本を読破できるまで、一体どれだけの時間が掛かるだろうか。

 …………これらも盗んでしまおうか。


 いや、魔術書……本自体に魔法が込められた本があってはまずい。

 読んでいる最中に魔法が暴発、なんて洒落になれない。

 

 一冊一冊調査して、安全が確定し、役立ちそうなものを貰おうか。

 ……結局、一冊一冊読まねばならないということか。


 私がここにいられるのも、残り一か月半もない。

 その前にこれらを読んで…………別にいつでも来れるのだし、ゆっくり読もう。

 魔法万歳、転移万歳。


 とりあえず、魔法を習得できる本から探したい。

 ある程度、種類ごとに纏まっているようだし、探すのは楽だろう。

 ざっと眺めた感じ……おそらく、この区画にある本がそうだろう。

 




 魔術書は全部で、十冊見つかった。

 十冊あった魔術書のうち、九冊がハズレだった。

 波長が一から三までの、初級、中級魔法までしか書かれていなかった。


 しかし、最後の一冊が当たりだった。


 この一冊は魔術書だが、魔法は習得できない……この本自体が魔法を発動させる媒体。

 習得できないのは、呪いのように波長がブレブレのせい――念の為、呪いではない――だったり、複数の波長が癒着してしまっているせいだ。


 この書には、様々な魔法が封じられている。

 それを使うことができる。


 波長が癒着したものは、相乗効果によってか、高火力の魔法ばかりだ。

 最初の数ページしか読んでいないが、超級魔法に匹敵するものもあるかもしれない。

 今のところは、波長六個以上に相当する威力の魔法しかない。波長は四つや五つしかないが、癒着の結果、威力が底上げされている。

 

 これを見て確信した。


 ――波長の癒着は人工的に行うことができる。


 これらの波長を使い続けていれば、いつか私にも習得できるだろう。

 無理やり波長を融合させようものなら、あらぬ効果を生み出しかねない。体内で魔力が爆発するかもな。


 簡単な説明書きがあるが、自分の眼で見ないとわからない。

 この説明書を書いたやつを殴ってやりたい。こんなの、文字を覚えた子供なら誰でも書けるぞ。


 ……。

 …………。

 ………………。


 念の為、ハズレ九冊も持ち帰ろう。

 魔術書自体、希少だ。中級までとは言え、いずれ役立つときが来るだろう。金に換えたりな。


 強いて有効活用する術を上げるとすれば…………ハズレ九冊は、他人に魔法を習得させることができる。簡単なものだしな。

 私はすべて習得済みだ。必要ない。


 私は十冊の本すべてをブレスレットに収めた。

 

 他の本はどれも、役に立ちそうにない。

 謎掛けがある可能性も捨てられないが、今、そんなものを探す時間はない。


 と言うのも、背表紙を見た感じ、残りの本はほとんどが物語なのだ。

 部屋の主の趣味だろうか。


 ……悪魔の召喚に本を用いたりはしなかったのだろうか。


 推論だが、答えは見えている。


 あの部屋を見る限りでは、おそらくは使用しなかったのだろう。

 大量の信者たちの『悪魔を召喚したい』という強いベクトルを持った思いと犠牲が、悪魔の召喚を可能にしたのだろう。

 

 それ用の魔法を使えば、より少ない時間、犠牲で悪魔を召喚できただろうに……。

 まず、悪魔を召喚するな、と言う話ではあるのだが。


 ……ブレスレットの容量は、まだ余裕がある。

 ものはついでだ。

 本はすべて頂いて行くとしよう。

 後から来る調査団に怪しまれないよう、本棚ごと頂こう。

  

 私は本を、棚ごとブレスレットに収めた。コッソリではなく、ゴッソリ頂きます。

 この部屋には一切、埃がない。ここに本棚があったことなど、誰も気付かないだろう。


 さて、次は魔法を実践……といきたいが、さすがに今日は疲れた。

 魔法は、あの悪魔と戦った部屋で試せばいいだろう。

 やるときは〈障壁バリア〉で床や壁、天井を保護してな。


 私は〈転移テレポーテーション〉で宿の部屋に戻った。





 そろそろ、ここを旅立つ用意をせねばな。

 学園の入学試験は三月の二十七日。


 あと二週間。

 試験の一週間前には、エヴァンスに戻らねばならない。つまり、ここにいられるのも残り一週間だ。


 ワーグナー邸を出立してからの、およそ四年と少し。

 その期間で得た収穫は、目を見張るものだった。


 ライアル鉱石の入手、錬金系魔法の習得、この赤い宝石のブレスレット、罠探知の鈴、防御関連上昇のローブ、糸を生成できる指輪に、魔術書。

 そして、大規模な魔法を誰にもバレずに実践できそうな場所の確保。

 暗殺組織死神の右手(タナトス・バディ)から命を狙われないという保証。

 ワーグナーや死神の右手(タナトス・バディ)のボスから貰った、多くの物品。大半は日用品だがな。

 他にも、発見した様々な魔法。そのうちの一つ、超級魔法〈禁忌大爆発ニュークリア・ブラスト〉。


 あとは置き土産として、この都市で適当に依頼をこなせば、安心して帰れるだろう。

 ……この無法地帯も、だいぶ丸くなったものだ。


 治安が良くなったおかげで、この都市も綺麗になり、発展した。

 都市長から感謝状を貰った。そこそこの金もな。


 あとはイトシとケメに任せておけば、万事問題はあるまい。


 

 



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