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第24話  キマイラ・ゴーレム

 キマイラをかたどった土の塊は、一瞬、黄金色の温かい光を纏った。

 

『ガルルルル……ッ』


 キマイラ・ゴーレムは唸り声を上げる。

 

 これがゴーレムか。

 本物の尾を使用したはずだが、尾も土で覆われている。

 だが、蛇の牙は本物か。一応、毒は使えるのか。


「これがゴーレム生成魔法……錬金魔法か」

「そうだ。核となる魔鉱を用意さえすれば、好きな形にできる、応用性抜群の魔法だ。思いが強ければ、疑似的な意志を作り出すこともできる。まあそれも、テンプレート化されたものでしかないけどな」


 ふぅむ……。

 核となる魔鉱石か。


「……魔鉱石に大きさは関係あるのか?」

「ああ。大きければそれだけ多くの魔力を込めることができる。そして、多くの魔力が込められていれば、より大きな物を生成できる」


 ふむ。

 魔鉱の大きさと魔力量が比例し、魔力量と生成物の大きさが比例しているのか。


 魔鉱を作る魔法は……なかったな。私は知らない。

 魔鉱とは、魔力親和性の高く、魔力を多分に含んだ鉱石のことであるのは、見てわかった。

 今まで、核は物質化した魔力の塊だったのだが………………それでできないか?


 私は右手の中に魔力を集めた。

 これで魔力が物質化してくれたら実験は成功だ。


「……それはなんだ?」

「ふむ……。実験は成功か」


 純粋に魔力を集め、凝縮し、疑似的な核を生成した。

 しかし、早く依り代を用意せねば消える。……鉱石の方が効率がいい。


「まあいいや。これをお前にやる。サービスだ」


 ケメは、ゴーレムに使用したものより一回り大きなパプリエル鉱石を渡してきた。

 魔力はほとんど込められていない。だが、魔力を込められるだけのスペースがあるのがわかる。

 自分で入れろということか。……容量いっぱいまで入れたいな。


 と、いうわけで私は魔力を込める。

 ふむ……鉱石には波長があるようだ。この波長に合わせればいいのか?


 私は込める魔力の波長を、鉱石の波長に合わせる。


「――ッ!?」


 途端、私の魔力が急激に吸い込まれた。


 どれだけ私の魔力を食べるつもりだ、こいつは!? 

 ……ふっ。まあいい。こんな機会は滅多とない。

 食べたいのなら、腹がはちきれるまで食わせてやるまで。


 ――……と思ったら、鉱石内の魔力がいっぱいになった。

 魔力の吸収も止まった。


 ふむ……。これは果たしてパプリエル鉱石なのか?

 紫色だった鉱石が、今や輝く黄金色だ。私の魔力が隅々まで張り巡らされているため、私の思い通りに形が変化するようだ。


「それは……。そんな……まさかっ!?」

「どうした、ケメ」


 我ながらどうしたもないだろう

 ケメが驚いている原因は明らかだ。


「それは……伝説の魔鉱石、ライアル!」

「ライアル……ここの都市の名前か?」

「ライアルは、所持者の思うままに形を変える黄金の魔鉱。それで作られる物は、普通の魔鉱(パプリエル)で作られた物とは比べ物にならないという……」

「……で、なんでこの都市の名前と?」


 私の質問に答えてもらっていないのだが。


「昔、ライアル鉱石を操っていた錬金術師が、ライアルが埋まると記した場所があった。錬金術師の死後、その伝承の地に都市ができたが……見つからず、廃れた」


 廃れた結果が、無法地帯……堕ちたアドベンチャラーの流れ着く終着駅、か……。

 そして、ケメがここにいるのは……その錬金術師としての浪漫だろうか。アドベンチャラー業の傍らとして錬金術師。

 それとも、家系の問題か? こちらの方が可能性は高いな。


「まさかそれが……。……なあ、どうやって……どうやった?」

「何も、魔力を込めただけだ。この魔鉱が望む通りにな」

「望む通り…………そうか。俺もまだまだだな。まあいい。このまま準備を済ませよう」

「ああ、そうだな」


 私はケメに連れられ、洞窟の奥へ進んだ。





 まさか……ここまでとは……。


 私の目の前には、巨大な漆黒の塊があった。


「こいつがネグロだ」


 仮面の〈闇視ダーク・ヴィジョン〉でそのキマイラの姿は、はっきりと映っている。


 新月の夜を思わせる漆黒の毛並み。尻から生えた真っ赤な三匹の蛇。知的な緑色の瞳。少し開いた口から覗く真っ白な牙。

 その波長は……巨王や銀狼に勝るとも劣らない。


 山脈の四天王の一角に取って代われる可能性を秘めている。

 もし、まだ実力を引き出しきれていないのであれば……。


「…………全然、怯まないんだな」

「ああ、山脈の東と西の王と面識があるからな」

「……お前はとんでもないやつだな、ほんと」


 照れる。 


「さて、これを洞窟の奥に待機させれば、準備は完了だ。……レスク、ネグロを頼む」

「今からか? 討伐隊はいつ来る?」

「おそらく…………早くて明日の朝。遅くても明日の夕方」


 かなり早いな。

 仕事が早いようで何より。それだけ腕利きなのか、暇なのか……。


「わかった。それじゃあ、私は森の中で隠れているとしよう。……ネグロは、私の言うことを聞くのか?」

「……ネグロ、こいつはレスク。俺の友人だ。事が済むまで、こいつの言うことを聞いてくれ。頼む」


 ネグロはゆっくりと頷いた。


 ふむ……。良い信頼関係が築けているようだ。

 種族の壁を越えるだけでも珍しいのだが……まさかここまでとはな。


「ネグロ、行くぞ」


 私はネグロとともに、森へ入った。

 私は〈隠密ハイド〉で姿を消し、ネグロは……自身の能力で気配を消しているようだ。

 これはネグロ自身に刻み込まれた魔法か。他者が使用することは不可能……か。こんな魔法があるとはな。


 ケメは目撃者たちがネグロを発見した場所の近くに居合わせたアドベンチャラーという立場のため、目撃者たちに同行するらしい。

 そこで上手くキマイラ・ゴーレムを操作するということか。




 そして、夜が明けた。


 



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