表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

126/132

第126話  魔のありなし

「「潰せぇっ!」」


 私がこいつらを倒すか倒すまいか葛藤している最中でも、こいつらは一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 まあ、二、三人はラブの方へ向かっているが……あいつにも自衛手段はある。

 もしかしたら、化けの皮を剥がせるかもしれない。


「ラブ、問題は?」

「問題ないさ」


 ふむ……。マジックアイテムは問題なく起動しているのか。

 まあ、あくまで体外で魔法が発動しないだけだから、物体内で魔法を発動させるマジックアイテムが起動させることができても、不思議ではない、か……。


 しかし、こいつら……。

 攻撃しても感触は軽いし、おまけにこいつらの一撃は重いときた。

 気と霊気で強化した私の方が、結果的に威力面では上回っているが……常人の域を超えている。だってこいつら、強化していないんだもんな。


 攻撃が単調で、連携がまるでないのが救いか。

 この人数、威力で工夫なんかされたら、さすがに私と言えどもキツイ。


 ……一応言うが、私の強みはあくまで魔法だが、モノは平凡だ。

 平凡の中の極付近には立っているのだろうが、あくまで凡才の領域だ。


 最も効率よく成長させただけの『柔』の筋肉。

 魔法を波長として認識、発動させることができるが、魔力量は中の上かそこらだ。

 気は誰にでもあるし、霊力はレアだが……それでも、私だけ特別というわけではない。


 特別なのは、先も述べた、『魔法=波』として見ることができるこの眼ぐらいだろう。


 それ以外は、今までの人生の積み重ねの結果でしかない。そういうことだ。




 少々、自己採点が過ぎたな。

 さて、と。そろそろ決断しないと。私だけではない。ラブもしんどいだろう。


 会話で集められるだけの情報を集め、帰ろう。

 オークション側に利益を与えるのもなあ、と言うわけで。


 ラブの方は……と。

 思ったより善戦しているな。


 持ち前のマジックアイテムで適度に距離を取りつつ、逃げ回っている。

 冷気を発するマジックアイテムを使ったのだろう。敵の動きが鈍く、手の先が青く変色している。指の色はもう、白に入りかけている。


 だが、ラブはあくまで物に頼っている。

 そう遠くないうちに限界が来るはずだ。

 今はまだ動けているが…………


 ――違和感


 何かがおかしい。

 何か、致命的な何かを逃している気がする……。

 いや、気のせいではない。

 なんだ? 私は何を見逃している?


 この場にいるメンツは、長くても、すべてここ一週間で初めて出会った連中。

 遡るのは、ここ一週間の記憶だけでいいだろう。

 いや、答えは……そこにしかない。




 外に待機しているあいつ?

 そうだ、確かに目的は不明だ。ずっと遺跡の入り口に居座っている。

 私の眼を引きつけるための囮だったのか、万が一のための予備人員なのか。


 不明な点が多すぎる。故に、除外。


 ……ラブか。

 ラブを見た瞬間に違和感を覚えた。

 ヒントはあそこにある。


 ラブが現在相手にしているのは二人。

 一人は撃破済みか。意識があるところを見るに、何らかのマジックアイテムで動きを封じているのだろう。


 ラブは、腕に嵌めたブレスレットからマジックアイテムを取り出しては使用している。

 ベルトには、先ほど取った悪魔のかがやきが差さっている。


「「余所見とは余裕だな」」

「強者の傲りだ」


 私は回し蹴りをしてきた男の足首を掴み、そのまま壁に叩きつけた。


「がぺ……」


 だが、足はまだ離さない。

 肩を視点に、男を頭上で、布のように振り回した。


 そして、距離を詰めてきている男に向かって、勢いよく投げ捨てた。

 男同士がぶつかり、もつれ合いながら通路の奥へ飛んで行った。


 いつもは魔法でどうにでもしてきていたからな。違和感ギャップが……。


 そうだ、違和感……


 ――なぜラブは軽々と動き回れているんだ?


 あいつは確かに、悪魔の赫きを持ち上げたとき、すごく重そうにしていた。両手で、腰を曲げて持っていたのに。

 だが彼女は、気も霊気も、魔力も使っている様子はない。

 マジックアイテムを起動させてはいるようだが、防御用だろう。


 ラブを相手にしている連中の動きにキレがないのか、と言われればそうではない。

 だが、ラブの眼……明らかに、戦い慣れた戦士の眼。そう思わせるほど鋭い。


 まあいい。

 違和感の正体はそれぐらいか。


 ただ、ラブへの不信感が増した。


 …………まあいい。

 一度アンウェンに戻ろう。


「ラブ、こっちへ来い」

「……わかったさ!」


 ラブは煙幕を張り、こちらへ駆けてきた。


「「どうやって逃げるつもりだ? この、魔を封じられた空間で!」」

「魔法で、だ」


 私は、戦いが始まってから体内で練り続けていた魔力を解放した。


 この空間は、空間内の魔力を消し去る。

 原理はまるでわからないが、そこは重要ではない。


 解放した魔力は、私の周囲――魔力を消し去る空間を歪ませる。

 大量の魔力を解放しても、意味はないだろう。だから、消し去るのが難しいほど、複雑に魔力を練り上げた。

 まあ、なんだ。簡単に説明すれば、縄張り争い的な? 押し合い的な。


「それじゃあな。いいか、警告しておく。……二度と私に関わるな。次は容赦しない」


 私は声に〈全体転移マス・テレポーテーション〉の波長を乗せ、魔法を発動させた。

 こいつらの相手をするのは超が付くほど面倒だから、殺気混じりに警告しておいた。これで手を引いてくれればいいのだが……。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ