第124話 扉が開く条件
弓を持ったゴーレムが弦を引くと、そこに、魔力が矢の形を取って現れた。
……なるほどな、そういう使い方か。いい武器じゃないか。貰って帰ろう。
大盾を持ったゴーレムが、通路のど真ん中を、盾を構えながら接近してきた。
その両脇後ろに、大剣を持ったゴーレムと槍を持ったゴーレムが隠れて接近してくる。
自動人形にしてはよくできた陣形だな。
そこまでプログラムされているのか?
ふむ……。
強引に突破せずに、まずは盾の耐久性から確かめよう。
まずは属性別。
私は剣先で床を四回叩いた。
一回目――〈火球〉
二回目――〈水球〉
三回目――〈土球〉
四回目――〈風球〉
四発の魔法が、順々に盾に激突し、弾ける。
大してダメージはなさそうだ。
だが、強いて言うなら三発目――〈土球〉と二発目――〈水球〉には少し反応があった。
……属性と言うより、質量の問題か?
ふむ……。
そうだな、まだ属性が残っている。
そちらを試したあとで、魔法耐性の強さを調べてもいいだろう。
私は右手と左手、それぞれに〈冷気爆弾〉と〈横天雷〉の波長を発生させた。
大盾を持ったゴーレムに、まず〈冷気爆弾〉が衝突し、そこらを白い空気が包み込む。
だが、ゴーレムたちは構わず突き進んでくる。
まあ……ゴーレムに冷気が通じるとは思っていなかったが……。
本命はこっちだ。
私は電気を纏った右手を、ゴーレムたちに向けた。
そこから電気が直線状に走り、ゴーレムたちを貫いた。
――雷属性の貫通攻撃だ。
そして名前の通り、〈天雷〉の亜種だ。〈天雷〉が上から下向きなのに対し、〈横天雷〉は横向きだ。
ちなみに、波長は〈天雷〉と同じく四つ。
向きが違うだけだからな。
それと、検証の結果だが……一番効果が薄かった。
土くれから造られたゴーレムは、電気が極端に効きやすいか、効きにくいかのどちらかとなる。
今回は効きにくいどころか、効かない類だったようだ。
ゴーレムに流れた電気が、ゴーレムたちの足から地面に流れていった。導体でできているのか。
となるとやはり……水と土の二属性……か。
水の方が見やすいな。
私は剣先で地面を叩き、波長四つの水属性魔法〈水塊〉を発動し、すでに剣の間合い近くにまで迫っていたゴーレムの盾にぶつけた。
質量に重きを置いた水属性の魔法だ。
水の塊を真正面から受けた大盾を持ったゴーレムは、その質量に圧され、大きく後退した。
しかし、大剣を持ったゴーレムと槍を持ったゴーレムは、構わず前に出てきた。
こいつらを倒す最も効果的な攻撃方法は、質量攻撃。
有効な手段が質量攻撃とわかった今、これ以上調べる必要はない。つまり、こいつらにもう用はない。
ここで斬り捨てて……
――ヒュッ
魔法の矢が、私の頭上を通過した。
精度が高いのか低いのか……なんとも微妙だな。
宝の持ち腐れだな。これら四つの武器はすべて頂くとしよう。魔力を帯びているし、そこらの武器より使いやすいだろう。
アルティナを使いたいが、ラブの目がある。やめておこう。
岩の塊に、剣は相性が悪い。効果が高いのは殴打攻撃。
まあ、アルティナには関係ない話か。
私は剣を納め、〈閃撃〉を発動させる。
そして勢いを殺さずに、ゴーレムの持った大盾に蹴りを食らわせた。
体勢を持ち直したばかりのゴーレムは、そのまま後ろに吹き飛び、弓を持ったゴーレムに衝突し、ガアァァン……と音を響かせた。
そして向きを変え、途中で〈閃撃〉を解除――慣性の法則を利用して進み、槍を持ったゴーレムの頭を鷲掴みにした。
隣に立っていた、大剣を持ったゴーレムが反応し、大剣を大きく横に振るった。
……やはり、所詮はただの土の塊か。
ゴーレムの大剣が、槍を持ったゴーレムの頭を砕いた。
私はもちろん避け、槍を持ったゴーレムの背後に降り立っていた。
ゴーレムの核は腹の部分にある。
これを破壊しない限り、ゴーレムは活動をやめない。頭はただの飾りだ。
私は拳に気を集め、更にそこへ霊力を織り交ぜた。
そして一気に拳を……――振り抜いた。
――ズドンッ
鈍い音を響かせ、二体のゴーレムは糸が切れたように、ぼろぼろ……と土塊へ姿を変えた。
ふむ……。やはり霊力はすさまじいな。
少し混ぜるだけで、威力を底上げしてくれる。二体も貫通するとは。
さて、次だ。
私は未だ起き上がれずにいる二体のゴーレムの下へ駆け寄った。
……腕や足に罅が入っているのか。好都合だ。
私は上に覆いかぶさっているゴーレムの腹を、気を込めた右手で貫いた。
そして中にあった硬い球体――核――を握り締め……破壊した。
弓を持ったゴーレムは、ゴーレムの持っていた大盾が直撃したせいで重傷だった。起き上がることもできないだろう。
腹にも罅が入っており、核を破壊するのは容易だった。
罅からゴーレムの腹をこじ開け、紫色に輝く核を破壊した。
――討伐完了。
大剣、弓、槍、大盾は土に戻っていない。
やはり、ただの武器だったか。戦利品だ。ありがたく受け取るとしよう。
核はいらないから捨てる。
「……終わったさ?」
「ああ、終わったぞ」
ラブが角から顔を覗かせ、声を掛けてきたのは、私がちょうど四つの武器をブレスレットに収めたところだった。
ギギ……
そのとき、通路の奥の扉が自動的に開いた。
「……守護者を倒しても開く仕組みだったんだな」
「……特定の言葉に反応するって聞いて、メモしてきたのに、無駄になったさ……」