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第118話  目玉商品

 数分が過ぎ、早や十を超える品が流れては落札されていった。

 どれもアドベンチャラー向けだったな……。

 貴族向けの品がまったくなかった。これからだろうと思うが……。




 そこから更に五つの品が流れた。そしてようやく……


「――皆様、ここで本日の目玉商品その一の登場です! こちら……耳にしたことのある方もいらっしゃるのでは? その名も……月の翼」


 満月から銀色の二対の翼が生えたようなアクセサリー。


 その名が出た瞬間、幾人かの女性が反応を見せた。

 私も、名前だけは聞いたことはある。

 確か、最上級の恋愛成就のお守りだったか……。


 しかし、それだけだと、このマジックアイテムの希少性が薄れる。

 おそらく、一般には知られていない、それ以上の価値と効果があると見ていいだろう。


「――では、十万リルから!!」


 女性連中が反応を見せている。そして、恋愛成就のお守り。おそらく、効果はそんなに離れていない……。

 となると……美容関連か?


 なんにせよ、恋愛成就の時点でワーグナーには必要ない。

 ガイオスは……自力でどうにでもできそうではある。

 恋人がいないのは、ガイオスが仕事一筋なのが原因だろうしな。仕事先(ワーグナー邸)に住み込みしている時点で、その熱量が窺える。


 一番必要とするのはシンシルスだろう。


「――三百万」


 お?

 どっかの誰かが一気に三十倍の額を提示した。


「「…………」」

「――月の翼、三百万リルで落札です!」


 すごいな。どこの誰だ。

 まさか、私の想像以上の何か凄い効果があったりするのか?


 まあ、どうでもいい。


「――それでは、目玉商品その二! 超希少金属である霊石れいせきを鍛えた全身鎧。霊鎧れいがい


 それは、白銀色の全身鎧だった。

 結局のところは、霊剣の鎧版だな。つまりは霊具。


 こういうのを霊具と一まとめにするらしい。

 霊剣なんかも霊具だ。


「魔法への高い耐性を持つこの鎧! いかなる魔法をも弾き、いかなる刃をも通さないこの奇跡の一品! 四百万リルから始めましょう!」


 なかなかいい品……と思ったが、ゴテゴテし過ぎている。

 それに、ガイオスの持つ鎧の方が高性能だろう。

 霊具としてのレベルは低い。物理防御力はかなり高いようだが、魔法防御力は低めかな。

 たしかに、他の一般的な鎧と比べると高いし、希少ではあるけど。


 それなら、霊具の作り方を知っている職人に頼んだ方が早い気がする。

 商売上手なやつなら、これより安い金額でより良いものが手に入るだろう。


 私はこれにも手出ししない。

 そうだ、霊具を作れる職人を探し出そう。エヴァンスのあの人――ギニアとか言ったかな――に聞いてみよう。





 そこから三十分が過ぎた。

 霊鎧の落札――ちなみに額は八千万リルだった――されたあとで、適当な品を数品挟み、また目玉商品に入ったところだ。


「今オークション、最後の品。皆さん、名前だけは聞いたこともあるのではないでしょうか?」


 ほう……最後の品か。

 もう、半ば諦めていた。

 正直な感想を言うなら、落胆だ。贈り物に相応しい品はなかった。


「その名も、不死鳥の羽。持つ者に炎の加護を授ける、伝説の一品」


 ――あ、これ……偽物だわ。


 鮮やかな赤い羽根は、確かに美しい。

 だが、それが纏うのは魔力と僅かな霊力。


 私だって、(この世界の)不死鳥の逸話ぐらい聞いたことはある。

 その伝承を聞く限り、不死鳥は神だ。となると、当然宿るべきは神力だろう。


 精々、あれは鳥型の炎の精霊の羽かな? それとも、鳥の羽に火精霊が宿ったものか?

 まあ、霊力をなまじ感じられる者や、精霊に関する知識が薄い者なら、それを本物だと信じるかもな。

 私のように、霊力を一エネルギーとして認識できる者ならそれを偽物だと見破れるだろう。


 ちなみに、精霊の独特のエネルギーは霊力とは少し違う。

 神力と同様に、霊力からの派生だろう。詳しくは私も知らない。




 もう飽きた。賭けは失敗。

 もう帰って寝るとしよう。


 そうだな……鎖帷子くさりかたびらでも作らせようか。

 エルゲレンの鱗に神力を付与して、鎖帷子に埋め込もう。よし、そうしよう。


 そうだな……ウーゼンティシス候に手紙でも出して、この国一番の鍛冶師でも教えてもら……ああ、ライアルに行こう。

 あそこなら、私の名前はよく通っているし、融通も利くだろう。

 そこらの腕利き鍛冶師に頼もうものなら、いつ出来上がるかわからないしな。


 うむ、いい考えだ。

 ライアルに行き、治安を良くしたのは正解だったな。ここで活きてくるとは。全部偶然だけどな。


 あそこは、元はライアル鉱石という伝説を頼りに集まった、鍛冶師集団の末裔。

 ケメがそうだった。


 よし、そうしよう。

 帰ったら鱗に神力を込め、明朝、ライアルに出発するとしよう。





 私は会場を後にした。

 何も、終わるまで部屋を出れないとかいうデスゲーム要素は、ここにはない。

 あっても無理やり出るけど。


 エルゲレンの鱗は四枚あるが……二枚もあればいいだろう。

 あくまで、鱗はお守り的な意味合いで埋め込む。量ではない。あるかないかだ。


 鎖帷子なら、服や鎧の下からでも着られる。

 何より、軽い。斬撃への耐性も高い。打撃への耐性は若干、低いがな。

 あるかないかで大きく違う。


 鎖帷子なら、オーダーメイドを頼むまでもない。

 まあ結局、追加オプションを頼むから半分オーダーメイドになるが……そもそもが安い。


 お財布に優しい上に高性能な防具だ。

 一般人でも手が出せる程度の防具の中でも最高峰。……と言うより、一般人向けに開発された防具なのだろう。




 私が地下オークションから出て、裏路地に出たそのとき


「……もし」


 と、声がかかった。








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