表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/132

第117話  アンウェン地下オークション

 バーのマスターに言われた通り、三番通路を進むと、屈強な男が二人、通路を塞ぐように立っていた。

 この洞窟のような通路と相まって、山賊のねぐらに来たような気分にさせられる。


「何用か」

「ここより先は、関係者以外の立ち入りを禁止としている」

「「用がないなら帰ってもらおう」」


 ……でかい声。洞窟が崩れたらどうするつもりだ?

 まあ、崩れないんだろうけどさ。補強されてるし。


「ほれ」


 そう言い、私は先ほどマスターから貰った棒を手渡した。


「「……ふむ」」

「確認した」

「さあ、入るがよい」


 二人は道を開けてくれた。

 その先には真っ黒な、重厚な扉があった。


 棒を受け取った男は、懐から鍵を取り出し、その扉を開けた。





 扉を潜り、少しばかり進むと……だんだんと人の気配がしだした。

 それと同時に、道の先に光が見え始めた。だが、そんなに強い光じゃない。あくまで上品な光。


 私が一歩踏み出すにつれて、光は近づき、大きくなる。


 こつ……こつ……コツ


 ここか……アンウェン地下オークションの会場は。


 通路の先は部屋になっているが、私のいる部屋には私以外の人間はいなかった。

 一人か……気兼ねなく商品を観察できるな。


 私の入った部屋の向かい側に、壁はなかった。

 そこには柵があるだけ。その先は、すり鉢状の空間となっており、この部屋と同じような部屋がいくつも並んでいる。

 人がいるものもいないものも。

 ……だが、人の細かい姿までは見えない。

 隠蔽されているな。破れなくもないが、それはそれで問題か。


 さてさて、オークションはいつ始まるんだ?

 バーで注文する時間と暗号だけは知らされたが、いつ始まるとは聞いていない。


「――お越しの皆さん、こんばんは。本日も多くの方にお集まりいただき、感謝の気持ちで胸がいっぱいでございます」


 お、ちょうどよく始まったか。


「オークション開始まで、残り十分を切りました。何かあれば、近くの係の者までお申し付けください」


 ……なんだ、まだか。

 確かに、そんなにうまく事が進むわけがないな。


 近くの係の者まで、と言っていたが……なるほど、このゴーレムか。


 部屋の隅に待機している、人型のゴーレム。

 強い魔力は感じない。

 おそらく、ある程度の用意された答えを質問に合わせて出すぐらいだろう。


「失礼、今回のオークションの品は?」

『……オ答エデキカネマス』

「そうか。……では、オークションの開始時刻は?」

『二十一時三十三分、残リ九分ト二十秒デス』


 ふむ、なるほど。

 やはりこの程度か。にしても、微妙な時間に始まるんだな。


 予め用意されておいた質問に反応し、答えを出すだけ。

 どこまでいっても、ここは秘密至上主義なんだな。





 そして、ようやく時間となった。


「――皆様、大変お待たせしました! ただいまより、オークションを開始します! 今日も粒ぞろいの品ばかり! さあさあ、眠れない夜をどうぞ!!」


 声のした方……柵の向こうを見た。


 宙に一人の男が浮かんでいた。

 黒いシルクハットに、同じく黒の燕尾服を来た男。顔には仮面を着けて……。

 …………ホルスの仮面に似ている。


「本日の司会を努めますは、私、ラバーと申す者。ではさっそくですが、一品目! こちらは南方の亜人国家から秘密裏に入手した一品!」


 亜人国家から……?

 最初から上手いものを出してきたな。


 亜人国家には行けないし、秘密裏に入手したと言われれば、それを確かめる術はない。

 つまるところ、入手経路不明の品。


「武器の鋭利さを増大させる、コーティング液! 一度塗れば一年は、その切れ味を落とさない一品!」


 男がそう言うと、小瓶が空中に浮かび上がった。

 部屋の横の壁に、映像が映し出される。ゴーレムが映しているのか。

 別に、肉眼で見えるから問題ない。肉眼じゃないと、込められた魔力とかがわからないしな。


 小瓶のサイズは手のひら大。中には、銀色の液体が入っている。

 大した魔力は込められてなさそうだ。まあ、コーティング液だしな。


「まずは一万リルから!」


 十分の一の千リル……一人の一日の食事代に匹敵する。リルはこの国の金の単位だ。

 ちなみに、一、十、百……と、桁が変わるごとに硬貨が変わる。


 紙に金銭的価値を持たせないのは正解だな。




 そこから、その液体の値段は上がり続け、最終的に三十万リルで落札された。

 元が安かった。デモンストレーションだったんだろうな。


 ――それでも、三十倍。


 落札したのは……アドベンチャラー風の男だ。

 服装だけは一級品のようだが、身なり、佇まいからど素人であることが見て取れる。

 どこぞの金持ちか貴族のボンボンだろう。

 まあ、それすら偽装の可能性もあるけどな。


 アドベンチャラーになっている辺り、貴族だとしても三男以降だろう。

 家業を継ぐ心配がない――否、継げない、ただのごく潰し。

 金に物を言わせている世間知らず。


 まあ、あの液体が本物なのかどうか……私にはわからない。

 本物だとしても、私には必要がないしな。

 ガイオスのプレゼントとしても微妙だろうと判断した。


 二人にはお守り的なマジックアイテムを、と思っているが……実用的なものでも問題ないだろうと思っている。

 一つでも落札できたらいいだろう。

 日辺りの金の消費量は一般人より少ないし、全財産を出しても、正直なところ……問題ない。貯まる一方だからな。







 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ