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第112話  海水浴

 リスガイ王国有数の観光名所、ウェルダル。

 ウェルダルは特に、海水浴場として名を馳せていた。


 ウェルダルはウーゼンティシス領にある。

 領主の邸宅もそこにある。王家の別荘もな。それほどの大都市ということだ。




 そんなウェルダルの海水浴場は、今日も大賑わい。


 だが、私のいるビーチは……ウーゼンティシス家のプライベートビーチ。

 切り立った崖に囲まれ、反り返す海流によって完全に孤立している。


 それ以前に、一般公開のビーチがかなり広い。

 おまけに――かなり緩いが――入場制限も敷いているため、人がごった返しになることはない。


 隠された海岸を探す人はいない。

 まあ、三方を崖で囲まれており、加えてその崖の上は、一般人が立ち入れないようになっているような場所だ。

 このプライベートビーチに行くには、ウーゼンティシス家の庭にある隠し通路からでないと行けない。

 出口は、ビーチを囲む崖の一か所にぽっかりと開いた洞窟。


 脱出口にもなっているのだろう…………それを王女はともかく、私にも教えていいのか?


 ……と思ったが、なるほど。これはダミーの脱出口だ。

 一定距離まで泳ぐと、海流によって海岸に引き戻されてしまう。本当にプライベートビーチなんだな。


 ――ま、普通に泳げば……だがな。




 パラソルビーチで休む私。

 水辺で水を掛け合って遊んでいる王女、会長、アルグレットの三美女。


 王女、マイス・リスガイ。

 黒色の艶やかな長髪は、水で濡れて海藻のようにうねり、肌にへばり付いている。


 水着は灰がかった緑色のシンプルなデザイン。

 赤い派手な瞳が強調されている。王女の外見を強調させる良い水着だ。


 私の贈ったネックレスもちゃんと着けているようだ。何より何より。

 いつ何が起こるかわからないからな。


 私も、手首に赤い宝石のブレスレットとライアル鉱石を着けている。

 装備もブレスレットの中だ。


 会長、アリス・ウーゼンティシス。

 毛先が若干カールしている、艶のある茶髪も、今は水に濡れてストレート。

 紫色の水着。そして上から、背中に水色の剣の紋様の描かれた白いパーカーを羽織っている。


 ……あの模様、いいな。あれの赤色だとアルティナそっくりなんだがな……。

 まあ、剣なんて大体あんなものなんだけど。


 そして、悪魔アルグレット。

 かつて私を苦しめた、悪魔ディヴィアルの実の妹という……。

 少し前にこの世界に召喚された悪魔だ。


 四肢が黒く染まってしまっており、それを見られると悪魔だとバレてしまう。

 それは彼女にとって、そして、彼女を匿っている私にとって都合が最悪に悪い。


 バレたらいけない。

 そういうことで、彼女の水着は極端に露出が少なくなっている。

 上下ともに黒のダイビングスーツ。まあ、見る人からすれば…………うん。眼福だろうな。


 あれだ。露出が少なくなりすぎると逆に、エロさが増幅されるという謎理論だ。

 一定値以下まで行くとプラスになる、2次関数的な理論。




 私はまだ若干、倦怠感が残っているせいで、あまり動きたくない。……が、せっかくの海は楽しみたい。

 そんなわけで、こうしてここにいる。


 私の水着? ここに来る前に王都で買っておいた。

 黒と青色の海パンに、黒をベースに右胸に紫色でバツの描かれたウェットスーツ。

 あと、サングラス。これは王女の別荘の執事にパシ……お使いとして頼んだものだ。

 日光が痛かったからな。純白の砂浜に加え、人がいないから、海がほとんどの筆耕を反射するおかげで、目が痛い。

 レンズは黒。あくまで日除けだ。




 神力の回復に時間が掛かっているのは確かだが……やはり一度、枯渇寸前までエネルギーを消費したことが気だるさの原因か……。

 会長の話によると、〈合体ユナイト〉》〉の反動もあるかも、とのことだ。

 会長はあまり反動を感じないらしいが、少なからず疲れは出るとのことだったしな。

 ま、身体能力が一時的に上昇するからな。その時間が長いほど、元に戻った時に反動が強くなるのは当然だ。




 ……なんて物思いに耽る暇もなく。


「レスク、泳ごう」

「……ああ」


 いつの間にか後ろに回り込んだ王女にサングラスを奪われた。

 王女のご機嫌取りだ。

 病は気からって言うしな。体を動かせば気も紛れるだろう。


「レスクくん、もういいの?」

「ええ、まあ……」

「それじゃ、あの島まで競争しましょうか。今晩はウェルダルの、街を上げての大肝試しだから、体力は残しておくようにね?」


 あの島……ねぇ。どれだ。

 一番近い島でも、どう見積もっても十キロメートルはあるが……。

 おまけに、海流が邪魔している。


「なんて…………ちょちょちょいッ!! 冗談冗談冗談!! マイスさん、落ち着いて! 冗談だから! 泳がない……ってか泳げないから」

「…………そう?」

「海流の流れ的に厳しいものがあるのよ。…………まあ、強引に突破できなくともないけどね」


 王女…………泳ぐつもりってか、泳ぎ始めてたのか。

 おや……。気を使えているな。それも、まだ無意識のようだが……半分は意識的か。

 今の段階では、力を込める感覚に近いのかもしれない。


 ――だが、ローズと同じ段階に並んだはずだ。


 この短期間でここまで……と考えると……これからが楽しみだ。


 だが……神力(霊力)を知覚し、気付いた。


 ――王女の霊力量は私よりも多い。


 会長も霊力を纏っているが、王女の霊力の気配が強すぎる。

 問題は、これを王女が知覚しているのかどうかだ。

 霊力は魔力、気と反発せず、これらを強化する。神力と同じだ。

 これを知覚、認識できれば……強くなる。




 今すぐにでも確かめたいが……今は休息。


 この海水浴を楽しもう。




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