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第109話  デゼルグイエットの本体

 アルティナが持ち帰った、デゼルのローブと数珠。

 それ以外の所持品は……ああ、ネックレス。


『レスク。やつは……デゼルグイエットの正体はコレだ』

「どれ……」

『これ』


 アルティナは剣から出て人の形を取り、ネックレスを持ち上げた。

 〈精霊使役〉は私が意識を失っても持続する、と。


「これか……。……よっと」


 アルティナが戻ったことで、神力が大幅に回復した。もう歩ける。

 とは言え、やはり私の中の神力はまだ量が少ないな。アルティナが大半を保持していたのか。

 アルティナを所持していれば、神力は共有されると見ていい。所持……おそらくは肉体的接触のみ。

 私の中にあるのはあくまで霊力。一部が神力に変換されている状態だ。


 私は起き上がり、ネックレスを指で挟んだ。


 確かに、注視してみると……ネックレスからは神力を感じる。かなり薄いがな。

 反対に、ローブからは濃密な魔力を感じる。濃密なローブの魔力の気配は、ネックレスの神力をも隠せそうだ。


「おい、デゼルグイエット」

『…………』


 反応なし。

 これは意地でも動かないな。


 だが、僅かに神力が揺れた。

 これがデゼルグイエットの本体と見ていいだろう。


「アルティナ、この数珠とローブが何かわかるか?」

『うーー……ん。推測…………と言うより勘? なんだけど、数珠とローブで一対の神具だね。効果は、君が予測していた通りだと思うよ』

「そうか…………」


 だが、それだと謎が残る。

 デゼルは戦闘不能状態に追い込まれているにも関わらず、無傷の数珠は三つも残っている。

 そう、デゼルのライフはまだ残っている。


 …………となると、効果が他にある?

 ダメージの吸収は効果の一端?


 アルティナにネックレスを預け、私は数珠を観察する。

 まずは、私以外の意見を求めよう。


「アルグレット、これについて、どう思う?」


 私は数珠を持ち上げ、アルグレットに問いかける。


 関係性はどうであれ、デゼルは彼女の召喚主だ。

 些細なことでも、何か知っているかも……と思ったのだが……


「……………知らないわね。つい最近まで、はっきりとした意識がなかったしね」

「そうか。なら、別の質問だ。お前が召喚されたとき、これが何個割れていたか……わかるか?」


 デゼルが現れたときは、すでに一個に罅が入っていた。


「……ん~~、たしか…………一個ね」


 ふむ……。やはり、謎は深まるばかりか……。


 ダメージを吸収するという数珠が、まだ三つ残っているにも関わらず、デゼルは戦闘不能。

 アルグレットの呪いを代行しているのは一個。残り二個はなんだ?


 召喚主であるデゼルが死んでいない。

 だから、アルグレットはこの世界に留まっている。




 しかし、この数珠がデゼルの本体ではく、ただの神具……物であるとわかった。


 であれば、これ自体に害はない。

 私が装備すれば……………敵なしかもな。


 今はとりあえず、ネックレスに閉じこもったデゼルを首に………


『――待て、わかった!』


 私の心の内を読み取ったのか、突然、ネックレス――デゼルが声を荒げた。


「なんだ、意識があるんじゃないか。さっさと返事しろ」


 しかし、なぜこのタイミングで……?

 よし、もう一度………


『――待て、待て!! 私を取り込むな(・・・・・・・)!!』

「ほう……どういう意味だ?」

『……っ』


 何かを言おうとしだが、すぐに言葉を呑み込んだようだ。


 だが、代わりにデゼルの幻が現れた。相変わらずローブを羽織っていて、中は闇。

 幻影なんだし、少しは遊べよ。


『……これで少しは話しやすいか?』

「話しやすさなんざどうでもいい。取り込むとはどういうことだ? お前はなぜそんな物に収まってるんだ? 洗いざらい吐いてもらうぞ」

『………………ッ~~! まあいい。これが私の本体で、私を身に着けたもの(・・)の体を乗っ取るからだ』


 なるほど、こいつは一種の寄生虫か。

 生き物だけでなく、道具にすらも宿ることができる、と……。


「この数珠はダメージを吸収する神具だろう? なぜ、まだ三つも残っているのに、お前はその状態なんだ?」

『もちろん、その効果もあるが……代償の代行もできる。そこの悪魔と……龍を完全に支配下に置くために二つ。私の器とするために一つ』

「つまり、これを壊せばこいつは解放され、魔界へ帰り、海龍エルゲレンはお前の支配下から解放される、と」


 海龍エルゲレンの行方は不明。

 とっくに〈麻痺パラライズ〉の効果は消えているはずだ。効果持続の波長は組み込まなかったしな。

 まあ、それなりに強い一撃を加えておいたし、ド派手な戦闘だった。とっくに逃げたか。


『そうだ』

「で、お前はどうなる? 死ぬのか?」

『死にはしない。ただ、この器を二度と使えなくなるだけだ』


 なるほどな……。

 寄生虫で、宿主は一度きり。半永久的な命、か……。


「そうなると、私としては最高なんだがな。よし、壊そう」

『待て、ま――』

『――お待ちなさい』


 ん……? 突如現れた謎の声。

 気配は……ない? 私が感知できない……だと?


 どこだ……どこから……


「どうしたの、レスク?」


 私がキョロキョロしていると、アルグレットが声を掛けてきた。

 アルグレットには聞こえていないのか?

 〈念話テレパシー〉……いや、違う。魔法の気配は感じない。


『私はそこにはいません。別の場所から、神力を通して話をしています。時間もあまりありません。手短に話させて頂きます』


 神力か。

 どうすればいい?

 〈念話テレパシー〉の神力バージョンってことだよな? なら、口に出す必要は……。


『この気配…………まさか……ッ』


 デゼル……怯えている?


「どうした? 知り合いか?」

『知り合いなんてもんじゃない……。この気配は……。――海神……シーミンターネスッ!!』




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