表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/132

第108話  ディヴィアルの妹

「ディヴィアルは私の兄。私がこっちに来る少し前に帰って来たの。あなたのおかげって話してたわ」

「私の…………? ありえないな。私はあいつを殺そうとしたんだが? 恨まれこそすれ、感謝される筋合いはないと思うんだが」

「さあね。でも、嬉しそうだったわよ? 今度あなたに出会えたら、感謝を伝えたいって」


 まあ、もう会うことはないだろうから、どう思われていてもいいけど。


 しっかし、こいつもなかなか可哀そうなやつだな。

 八百年も離ればなれだった兄と再開したと思ったら、今度は自分が召喚されて。


 それにしても、あの変な喋り方じゃないんだな、こいつは。

 てっきり、悪魔ってのはみんなあんな喋り方なのかと思っていた。

 昔の人間たちの喋り方があんな感じだったのかな?


「あなたの言う回復不能の呪いってのは、兄のものね。魔界でも指折りの実力者だった兄と組み合わされば……最悪の呪いね」

「そうだな。…………しっかし、ディヴィアル――特定個人を再召喚しないと、あいつの傷は癒えないのか。……まいったな」


 収穫はなし……いや、ほぼなしに等しい。


「特定の個人の召喚、ねえ。……数百年もこっちの世界に捕らわれ続けていた兄を再びこの世界に呼ぶと……?」


 途端、アルグレットの気配が敵意に満ち満ちた。


「安心しろ、アルグレット。そんなつもりはない。あいつともう一度戦うのは面倒だしな」

「…………そう」


 しかし、今の応答で確信した。


 ――魔界から、特定人物(悪魔)を召喚することは可能。


 おそらく、デゼルがアルグレットを召喚した術がこの船のどこかに残っているはずだ。

 アルグレットを縛り付けていたのなら尚更だ。


 あとで船内を探索しよう。神力が回復して動けるようになってから、だけどな。

 まだまだ時間は掛かりそうだ。




 まあいいや。

 聞きたかった呪いに関する情報は聞けた。


 それなら、次は悪魔の生態系について聞いていこう。

 どうせ召喚魔法なんて、聞いても教えてくれないだろうしな


「それで、お前は少なく見積もっても八百歳以上……悪魔は寿命が長いのか?」

「レディーにそれを聞く? ……はぁ、まあいいわ。答えは否。向こうとこちらでは時間の流れが違うのよ」


 八百年か。私の精神年齢は六千オーバーだけどな。

 十五分の二ってところか。かなり長い。


 時間の流れが違う、か。

 こちらの時間の流れの方が早いのだろうな。

 五十倍から百倍ってところか?


 それっぽい数字を出したが、確かではない。

 悪魔の寿命と人間の寿命が同じであると仮定したうえでの計算だ。


「なら、ディヴィアルは……。そうか、封印か!」

「そうでしょうね。おそらく、その封印は肉体のときをも止めていたのね。でないと、封印から覚めたときにはすでに白骨ね」

「悪魔の寿命は?」

「さあ? 答えたくないわ」


 ふむ……。

 悪魔にとって不利か。

 …………それとも、歳の問題を女性に聞くことが間違いだったか?


「で、もう質問はいいかしら?」

「とりあえずはな。……で、お前も私に聞きたいことがあるんだろう?」

「察しが良くて助かるわ。でも、私があなたにするのは“質問”ではなく“お願い”。……どうかしら?」

「内容次第だな。内容次第では呑もう」


 正直、こいつを保護しろっていう話なら問題ない。

 むしろ、私から願いたい。


 悪魔を手中に収めるというのは、表向きには最悪だ。私の立場を考えてもな。

 ただでさえ今は貴族連中の評価を買わないといけないのに。


 だが、悪魔に関する情報は少しでもほしい。




 いろんな物語や歴史書で描かれているように、悪魔は立場が良くない。

 召喚するのは人間のくせにな。


 立場が悪い原因も、召喚するのも人間。


 召喚された悪魔は、先ほどアルグレットが言ったように…………強い。

 悪魔は歴史の表舞台には出てこないが、悪魔として歴史書に記されていないだけ。

 あくまで人間(・・・・・・)として記されている(描写から、悪魔っぽいやつらは見当がつく)。


 それはなぜか。


 理由は簡単シンプルだ。

 自国外戦力の使用というのは、メンツの問題に直結するから。

 そんなのが嫌なら召喚しなければいいのに……と思うが、勝利は最優先事項。背に腹は代えられないってやつだ。


 ――だが後世の人間は、そんな背景はあまり気にしない。


 だが、『悪魔は忌むべき存在』という共通認識が存在している以上、悪魔に対する偏見を解くのは難しい。

 それこそ、神聖なる悪魔でも現れない限り。




 だが、今回は別だ。

 悪魔に対する偏見を解くつもりはない。


「私を保護してほしい」

「――いいぞ。だが……なぜだ?」


 そう、理由が大事だ。

 

「召喚主が死ねば、向こうに送還されるはずなんだけれど……」

「死んでないのか?」

『――死んだはずなんだけどね。ただいま、レスク』


 海から一本の剣が浮かび上がって来た。

 その剣にはローブと数珠が刺さっている。


 アルティナだ。


『ほんと、楽じゃないんだけどね。一応、僕は剣なんだ。そこんとこ……』

「――あーー、はいはい。……でも、ああしないと勝てなかった。許してくれ」

『まあいいけどね。結果が結果だし』


 話がわかるやつで助かった。




 そう、私はあの衝撃波を受ける直前、アルティナを三種のエネルギーでコーティングし、投擲した。

 アルティナとの〈合体ユナイト〉を解除するのは危険性リスクが高かったが、間一髪だった。

 もう少し遅れていたら、防御力最低の状態で受けて、今頃は死んでいただろうな。


 アルティナ自身がコーティングに意思を込め、〈精霊使役〉で顕現。

 剣からエネルギーを取り出し……あとは知らない。


 あとはデゼルと一騎打ちになり、無事に勝利を収めたのだろう。


 ただ、あくまで私が回復するまで時間稼ぎと踏んでいたんだが……まさか戦闘不能にまで追い込むとはな。

 生前のアルティナの強さに賭けて正解だった。

 賭けに勝ったというわけだ。


 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ