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第103話  格の違い

 私の剣――アルティナと、デゼルグイエットの剣の形をした神力――エネルギーがぶつかり合う。


 神剣には、初めから神力が少なからず宿っていた。それを引き出せなかったのは、私が認識できなかったから。

 だが、霊力を獲得したことで、霊力の上位に位置するその力を認識できるようになった。


 そして、元の所持者であるアルティナと一体化したおかげで、今では自在に扱える。


 デゼルは、それらの神力で剣を形成した。

 緻密な神力操作により、デゼルの剣はエネルギー体ながらも、物質に干渉する。


 私は常に〈防護膜プロテクション〉と、その上から〈雷神の法衣マント・オブ・グレート・サンダー〉を纏っている。

 二重の防御魔法だ。

 おまけに、〈雷神の法衣マント・オブ・グレート・サンダー〉には神力を付与し、強度は更に増している。


 神との戦いにおいて、万全の準備のはずだ。


 ただ問題があるとすれば……経験値の差、神力を自覚してからの時間の差だろう。

 アルティナは神剣ではあるが、亜神級。少なくとも、神には及ばない。


 アルティナは元は幽霊。つまりは私と同じ、人の子。死者だ。

 私とアルティナは、エヴァンスの武器屋で出会い、アルティナがそこの売り場に並んでいた剣に宿り、今に至る。


 最初は大したことなかった。ただ、アルティナが宿っているだけの剣だった。

 そこから私との同調レベルの上昇によってか、神剣にまでランクアップした。


 多分、これだけですごいんだろうなぁ……。


 アルティナは学園入学前に死んだらしいが、その時点ですでに、かなりの実力者だったらしいし。

 まあ、何の偶然か、〈成長マチュアル〉が暴発して実年齢より肉体年齢が五歳ほどアップしちゃったらしいけどな。

 全盛期の肉体に、若くして到達したんだ。肉体の最盛期は、実力の最盛期だ。魔法は別だがな。




 つまり、だ。

 アルティナの神としての歴はかなり短い。


 神力が魔力や気と同じく、使い続けることで強く、量も増えるのかどうかは謎だ。


 だって、自覚したばっかりなんだし。

 知るわけない。

 だから、この戦いに勝ったら、いろいろ実験しないとな。


 とりあえず、デゼルグイエット師匠から学べることは学んで……


『――甘い!』

「ぐあっ!」


 ――訂正する。


 学んでいる余裕なんて……ない!

 

 神力同士の戦いでは私の方が分が悪いが……デゼルはそっちに持ち込んで離さない気だ。

 そもそも、神力は魔法や気にも付与できるから、今更元の戦い方には戻れ……


 ――戻れ…………?


 そうだ、なぜデゼルは今まで神力を使わなかった?

 私を侮って? いや、追い込んでいたのは私の方。


 ――使えなかった?


 神力は……そうだ、霊力の上位互換だ。

 霊は見える人と見えない人がいる。おまけに、大抵の人は見えない。見える方が少数派マイノリティ


 なら……神力を、霊力を持つ人が相手じゃないと効果がない?

 だから、魔力や気と混ぜて使うのか?


 …………辻褄は合う。


『戦闘中に考え事か。……いつまで余裕ぶっているつもりだ? 私は今すぐにでもウーゼンティシスを滅ぼしたいのだが?』


 く……まずいな。

 分が悪すぎる。


 かろうじて神力を纏っているおかげでダメージは軽減できているが…………。

 相手の神力が大きすぎて……というか、私たちの神力が弱すぎて、剣をぶつける度にダメージを負ってしまう。


「させないって言っているだろう? 年寄りだから記憶力がないのか?」


 そうだ。

 会長を傷つけさせはしない。あの街を滅ぼさせはしない。


 そのために私は戦っているんだ!


『そうだ、レスク! 行こう!』


 接近戦は分が悪すぎる。

 私が得意なのはなんだ?


 ――魔法だ。


 私は距離を取り、傷を癒した。

 そして……


「――〈台風の目(ストームズ・アイ)〉」


 神力を雑に込めたこの魔法は、大爆発でも起きたのではないかと思うほど、広範囲に亘って、あらゆる物質を吹き飛ばした。


 これで距離を稼げる。


 それに……もう、神力が心許ない。

 私はアルティナと〈合体ユナイト〉して、今できる最も強い状態だ。


 私には……いや、アルティナは神力を有しているため、デゼルの神力を使った攻撃が有効。

 いや、幽霊が見える私には、そもそも神力の攻撃が通じるだろう。

 なら〈合体ユナイト〉を解いても意味はない。




 ……いやそもそも、なぜ神力じゃないと大きいダメージを与えられないんだ?

 霊体ではない。肉体を持っている。


 ……神具か?


 いや、考えたところでしようがないのか?

 だが、数珠はまだ残っている。

 正直、このまま神力を消費し続けると……こちらが先に尽きる。


 やはり、魔法で攻めるか?

 魔法が通じないわけではないし。


『――レスク……神力ならある』


 喋れたのか。

 もちろん、私の口を使っているわけでは……待て待て。

 神力が……ある?


「は? どこ……」


 ……剣に、再び神力が溢れていた。


「どこから? ……まさか……」

『ごめん、魔力と気を変換させてもらった』

『魔力と気を神力に変換……? 何を言っている? そんなことできるわけがないだろう、神力はそれ以外の何でもない』

「『神は黙ってろ』」

『――ッ!!』


 同時に発せられた、私とアルティナの殺気が相乗効果で膨れ上がり、デゼルでさえも怯ませた。


 まあいい。


 私は鈴の周りの空気を常に循環させ続ける。

 魔法以下の風魔法だ。消費魔力量はめちゃくちゃ少ない。


 鈴の音に合わせて、デゼルに適当に魔法を――波長三つ以上――を撃ちまくればいいだろう。

 もちろん、神力はなしだ。謎が多すぎるからな。


『僕は君との同調によって位階を上げてきた。その過程で神力を獲得したわけだけど……。君の魔力に対する持論のせいか、それとも僕の特性なのか……』


 私の持論?

 何か言ってたっけな? ……心当たりがありすぎる。


『魔力はエネルギー。神力もまたエネルギー。なら……変換できるんじゃないかって』

「つまり……?」

『つまり、僕は――エネルギーを神力に変換することができる』






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