表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/132

第102話  神力

『――我、デゼルグイエットが命じる。海よ、猛れ。風よ、切り裂け。大気よ、唸れ。天よ、割れろ。我が力を糧に、我が前の敵に天罰を与えよ』


 そのとき、久しぶりに私は――恐怖した。

 あまりに自分が小さく見えるほど、デゼルという存在が大きく見えた。


『レスク、落ち着くんだ。これは……これこそが神力。魔力や気とも違う、霊力の上位の……第三のエネルギーだよ。怖がる必要はない』

「……すまない、ありがとう……アルティナ!」


 私は魔力を練り、気を通した。

 そのうえで、アルティナの言う第三のエネルギー……神力を探した。


 私が恐怖した原因はすでにわかった。


 神力とは霊力の上位互換だが、そのことに大した意味はない。

 神力はおそらく、魔力や気以上に、存在の格を顕著に現すエネルギーなのだろう。


 強大な魔力や気を前にしたら、弱き者は恐れ慄く。

 それがより顕著に現れるのが……神力なのだろう。


 永い時間、海の神として君臨してきた、正真正銘の神。

 それが……そんなやつの神力が弱いはずがない。

 対してこちらはぽっと出の亜神。どちらが格上かなんて、火を見るより明らかだ。




 デゼルの長い魔法詠唱は、神力による特殊な魔法の発動のためだろう。

 神力の持つエネルギーは絶大だ。たった少し混ぜる(・・・)だけで、その力は膨れ上がる。


 神力が混ぜ込まれた魔法は、波長の数から推測される強さを無視する。


 ……いや、神力が込められた魔法は変容するのか?

 デゼルの練り上げる魔法詠唱が示すものは、自然現象そのものだ。いや、そもそも魔法なのか?




 魔法を当てて強引に魔法をキャンセルさせたいが……デゼルを中心に濃密な魔力や気、神力が渦巻いており、攻撃は通りそうもない。


 まあ、神力の使い方を学べるいい機会だ。

 無駄にはしない。


 デゼルには、私の師(仮)になってもらうとしよう。


『――〈神罰パニッシュ〉』


 ――ズガンッ!!


 これでもかと立ち込めた分厚い黒雲から、極太の雷が落ちてきた。せっかく晴らしたのに。

 魔法ではない。普通の……自然の雷。


 だから、私に当たらなかった。


 そして、周囲の風が竜巻を形成した。

 下手に私を巻き込んでいないのが、余計に質が悪い。


 おまけに、竜巻が海水やら雲やらといった、大量の水を巻き込んでおり竜巻の向こう側が見えない。

 おかげで大きい距離の転移ができない。


 加えて、竜巻は全方位にいくつもできており、行動範囲がかなり限られる。


 周囲に電気が渦巻いており、雷が縦横無尽に駆けまわっている。

 魔法じゃない普通の雷だから、下手すると魔法より最終的なダメージ量が大きくなるかもしれない。


 波長を解放しても逆効果だろうな、きっと。

 波長を解放したらまた天変地異だ。自然現象はコントロール不可能。


 ――ズドドンッ!


 そのとき、体中に熱が走った。


「ぐぁッ!」


 雷が落ちたのか……ッ!

 内部まで焼かれたように痛い。


 私は〈回復ヒール〉を唱えようと――


 ――息ができない。

 ――目が回る。


 竜巻に飲み込まれたのか?

 いや、この体を覆うこれは……水だ。この様子……〈防護膜プロテクション〉が破られたか。

 

 この竜巻……水を取り込んだのか。

 苦しい…………。


 まずい、抜け出さないと………窒息する!

 すぐに〈閃撃〉を……


 鈴を鳴らし――鳴ったのかはわからなかったが――〈閃撃〉を発動させた。

 竜巻の流れに逆らわず、流れに沿って……かつ、外へ動き出した。

 その際、自分の体は動かさない。少しでも酸素の消費量を少なくしないと、息が続かない。


「ぷはっ!」


 なんとか抜け出した。

 私は鈴の音に合わせ、〈回復ヒール〉を発動し、傷を癒した。そして〈防護膜プロテクション〉を張り直す。


 だが……これだと薄い。すぐにまたダメージを負ってしまう。


「――〈雷神の法衣マント・オブ・グレート・サンダー〉」


 とりあえず、この状況下ではこれが一番の防御魔法だろう。

 竜巻も強引に防げるかな? 〈防護膜プロテクション〉の上から発動できているし。


『――レスク、神力を付与するんだ』

「こう、か…………?」


 私は神剣アルティナに意識を向け、気とも魔力とも違う別のエネルギーを引き出した。

 ……これって……さっき幽霊どもを一刀両断したときに湧き出たエネルギーか。


 引き出したエネルギーを〈雷神の法衣マント・オブ・グレート・サンダー〉に付与した。


 エネルギーを取り出し、付与した瞬間……目の前の景色が一変した。


 わかる……周囲に溢れた魔力とも気とも違うこのエネルギー――神力。

 そうか……これが環境を支配していたのか。操っているのとは違う気はする。


 …………。

 途端、周囲の荒々しい気配が静まった。

 私の周囲のみ。私を守るように、私の周囲だけが静まった。


『ふっ……神力は大したことないようだな。所詮は人の子か』

「神力でしか人の子に勝てないお前は神未満じゃないか」

『減らず口を……あの世で後悔してろ』


 そのとき、デゼルの纏う神力が強くなった。

 神力は形を成し、デゼルの手の中で剣の形を取った。


『私の神力の剣とお前の亜神級の神剣。……どっちが強いか。この状況を見れば明らかだな』

「力比べか……。いいだろう、望むところだ! 海神・・!!」


 久しぶりに……ああ、楽っしいっ!!

 この戦闘でまた私は、新たなステージへ……更に先へ!!!

 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ