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第101話  〈合体〉

『いくら考えたところで無駄だ。……お前は確かに逸材だ。だが、我が覇道の上ではただの障害物』


 デゼルは水を圧縮してできた大剣を再び生成し、それを握り締め、向かってきた。

 先ほどよりも密度が大きい……?


『――レスク、僕を忘れてないかい?』


 それを受け止めた神剣アルティナから声が聞こえた。


 アルティナ……何かあるのか?

 まあいい、あるから聞いてきたのだろう。


 私は後退して距離を稼ぎ、その際に鈴が立てた音で〈精霊使役〉を発動させ、アルティナを顕現させた。


『驚いた……そいつ、まさか亜神級……神級に手を掛けつつあるのか』


 アルティナが亜神級ねぇ。


『面白い。そいつがお前の切り札か!』

『デゼルグイエットって言ったっけ? レスク、神に大ダメージを与えるには……神力が必要なんだ』

「神力……? 霊力とは違――」

『話が長い!』


 ――ドンッ!!


 足元の海水が大音量と共に噴き上がってきた。


 ……ふむ。

 湯気……かなり熱そうだ。質量も半端じゃない。


「話の途中だ、少し待て」


 私は少し上昇し、足元に〈超重力ハイ・グラヴィティ〉を発動させ、上って来た海水を押し戻した。

 ついでにデゼルのいる辺りにまで範囲を広げる。


『ぐっ……重力!? 重力を……人間如きが扱えるはずが……』

「人間は長い時を掛けて、少しずつ進化する」

『そうではない! 魔法は進化しない、不動のルール。重力魔法は人には手に入らない。そういうルールだ』


 そう言われてもな……。

 波長を見つけたわけだし。


 特殊な気配すら感じなかった。

 特殊な段階を踏んだわけじゃないしな。


『レスクは異常なんだ。理を説いても無駄無駄』

「アルティナ、もういいだろ。それで、神力ってのを習得するにはどうすればいい?」


 神力……神の力か。

 推測するに、霊力の上位互換だと思うんだが……。


 ……だが、私はそんな力を持ってはいない。

 となると……そうか、読めた。


 アルティナは神級に近い亜神級。

 実際――ディヴィアル曰くだが――、アルティナの宿った剣は神剣となっている。


 そんな存在が、神力を使えないなんてことがあるだろうか。いや、ない。


「アルティナ、お前があいつを倒してくれるのか?」

『それでもいいけど……君がやる方がいい。僕の体はあくまで器物なんだからさ』

「そうか」

『――ぐああっ!』


 そのとき、デゼルが〈超重力ハイ・グラヴィティ〉を強引に破壊した。


 反魔法ではない。

 ……純粋に、デゼル自身から放たれた波長が私の魔法を打ち消した。


 だがそのパワーアップは、一時的なブーストに過ぎない。


 急激なパワーアップの原因はちゃんと見ていた。

 懐から取り出した黒色の液体を飲み込んだのだ。


『ふーー……ブッ』


 私の魔法から解放されたデゼルは、口の中に残った液体を吐き出し、それと同時に体中から黒い靄が溢れ、溶けて消えた。

 一瞬……本当に一瞬だったが……悪魔の呪いらしき波長を感じた。


 ……時間がない。


「――アルティナ、いいな?」

『いつでもどうぞ。練習がなかったのは些か不安が残るけどね』

「――〈合体ユナイト〉」


 私は神剣を横にして前で構え、アルティナを自分の中に落とすようなイメージで魔法を発動させた。


『させん!』

「うるさいな。黙って見てなよ……」


 私が言い終わるや否や、アルティナが私の中に取り込まれた。


 私とアルティナ。

 単純な足し算では終わらない。


 私は今デゼルが見ている私よりも強い。

 波長を抑制しているからな。


 そこにアルティナが加わり、波長を抑制する機能が一時的に失われた。


 溢れ出た私たちの混ざり合った波長は……一瞬とは言え、周囲に多大な影響を及ぼした。


 まず、近づいてきたデゼルが吹き飛んだ。

 そして海面が荒立ち、大気が震え、上空の雲は跡形もなく吹き飛んだ。


 そして、私とアルティナの波長が合わさり、強大化した瞬間、私は再び波長を抑制した。

 こうでもしないと、私は歩く天変地異だ。

 ……すでに起きているかもしれないけどな。遠くで。


『なんだ……それはッ!』


 ふむふむ。〈千里眼クレアボヤンス〉で自分の外見を見つめ直したが、あくまでベースは私なんだな。

 変わったと言えば……まず、髪が伸びた。ところどころ、髪が金色に変色したな。

 金髪は……アルティナ由来か。

 ああ、左目が黒くなってた。これもアルティナの特徴だな。


 アルティナの特徴が入ったのは……これぐらいのものか。

 そもそも、顔立ちが似ていたしな。顔はあまり変わっていない。


『…………なんだ、お前は……お前らは!』

「――ただの人間さ」


 あくまでベースは私。

 アルティナだったら、元人間、もしくは幽霊と言う必要があったがな。


 私はデゼルに近づき、剣を振り下ろした。


『くっ……!』


 だが、剣はデゼルに容易く受け止められてしまった。


 …………おかしいな。


『ふっ……私と同じ土俵に落ちてくるとはな。愚か。さすがは人間!』


 ――さっきまで圧倒的に私の方が優勢で上位だったのに、今はデゼルの方が上位に感じる。


 私の実力が低下したわけではない。


 なんだ…………?


 相手が上位に感じる。……強い、わけではない。

 強さというわけじゃないな。


 まあいい。

 後はない。


 勝つか負けるか、だ。





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