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 マロリーとアントニオの結婚式が無事に終わると、結婚式の直前に気づいてしまったあの事が気になってくる。

 あの事とは、意外と忙しくないという件である。どうしてなのか振り返ってみて、女性騎士団が他者の援助の手を受け入れるようになった事などに起因しているのだと思い当たった。


 以前はなんとしても女性騎士団の中で解決しようとしていた。意地になっていたわけではないが、そういうきらいがあった。なまじ、能力があるのだから仕方ない。

 だからこそ、ロスヴィータやエルフリートが忙しかったのだ。やれるだけ自分たちの力だけでやってみたい。そんな気持ちがあの状況を生み出していたのだろう。


 そして、女性騎士団に手を差し伸べようとしてくる人が増えた事。認知度があがったせいだろうか、もしくはガラナイツ国との戦争で取り立てられたからか、はたまた騎士学校の理事としてロスヴィータが手腕をふるって言えるからか。

 どれのおかげかは分からないが、支援したいという声や女性騎士団の負担を減らしたいと支えてくれる人が増えた。


 女性騎士団が少人数のせいで実施できない訓練があったりするが、それができるように合同訓練の声かけをしてもらえるようになった。

 今まではブライスやアントニオの隊から合同訓練のお誘いをもらうのみだったが、今では他の隊からも声がかけられる。おかげさまで、エルフリートやロスヴィータが危惧している経験値の薄さをカバーする事ができそうだった。


 また、エルフリートたちが戻ってくるまでの間に限定していたらしいアイマルの指導であるが、頻度を下げて引き続き行ってもらえることになった。彼の指導はたいへん人気で、女性騎士団員がアイマル続投を遠慮なく喜んだくらいだ。

 そして、ルッカ。アイマルよりも更に頻度は少ないが、時々面倒を見てくれる事になった。彼女の丁寧な魔法具の解説は好評で、魔法具を使うタイミング、効果的な選び方や使い方といった知識面で助かっている。


 騎士学校の方もそうだ。こちらは引退した騎士のサポートが増えた。カッタヒルダ山での戦争回避工作の作戦で知り合った元騎士団長たちが、数ヶ月に一度、講師として教鞭を執ってくれる事になったのである。

 クノッソ領と隣り合わせのボルガ国が、密かに派兵を試みているという事が分かった時、ロスヴィータが卑怯な方法を提案した。

 戦争を未然に防ぐ為、ボルガ兵を罠にかけて戦争になりかけていた事を()()()()()にしたのである。ボルガ国は戦争をするつもりで精鋭を少数ずつ投入してきた。それらをクノッソ領民が設置していた動物用の罠にたまたまひっかかったりした事にして、ボルガ国に捕虜を送り返してやった。

 作戦の失敗と共に、計画が完全に読まれていた事を理解したであろうボルガ国は、グリュップ王国の思惑通り「何もなかった事」にした。


 クノッソ領を守護する為に引退後の余生をカッタヒルダ山で過ごしていた先々代の騎士団総長ヘンドリックと先々代の騎士団副総長のガードナーは、ロスヴィータたち女性騎士団発案の作戦のおかげでしばらくはこの国境も安泰だろうと判断した。

 完全に油断する事はできないが、少しでも未来の騎士の為になるならば、と協力を申し出てくれたのだ。

 隠居して姿を消していたはずの彼らからの申し出は、誰もが驚く快挙であった。


「――そっか。みんなが荷物を持ってくれるようになったからかぁ……」


 エルフリートはしみじみと呟いた。


「お礼……感謝の気持ち、伝えたいけど何が良いんだろう」


 特定の行為に対する何かを渡すにしても、やりすぎたり、逆にやらなすぎたりして失礼になってもいけない。なにごとにも程度というものがある。

 こういう事は、王都での生活が長いロスヴィータの方が詳しいかもしれない。エルフリートは心の中で補助の手を差し伸べてくれた面々に感謝の気持ちを唱えながら、ロスヴィータへ相談する内容について考え始めるのだった。




 翌日、さっそくロスヴィータに相談したところ、予想通りのような、しかしそうでもないような回答が返ってきた。


「そういう話ならば、私の両親の方が詳しいはずだ。そういう交流事はさんざんやってきているからな」

「そっか」


 ロスヴィータが王位継承権を一応持っている通り、ロスヴィータの母ルイーズも王族筋の一人である。国王と従兄妹関係にある母親は貴族の中でも公爵位に近い権力を持っている。だからこそ、王族との血縁関係があるファルクマン公爵とルイーズの間に生まれたロスヴィータに王位継承権があるのだ。

 そんな家柄であるから、彼女の両親は周辺貴族との交流に力を入れているのは当然である。


「今度、時間を取ってもらえるように頼んでおこう。彼らに感謝の気持ちを伝えたいのは私も同じだから」

「ありがとう!」


 エルフリートはロスヴィータに礼を言いながら、どんな服装にしようか、とまだ予定の決まっていない先の事を悩み始める。そんな姿を見つめるロスヴィータの目は、とても優しげに輝いていた。

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