録音テープ【 6 】
鬱・グロ・残酷描写を含みます。
魔法少女のイメージを崩したくない方は
閲覧をおすすめしません。
《録音テープの記録6》
また人の言葉を話す化け物が現れた。
私に向かって「やめて」って言ってきた。
これももしかしたら幻聴なのかもしれない
そう思って、撃とうとしたら
カエデに止められた。
カエデが叫んだの。
「カレンだよ!ねぇ、分からないの!?」
って、私の腕を引っ張った。
いい加減にしてほしい。
カエデはおかしくなるし、
私も精神的にも体力的にも限界だし
これ以上邪魔しないで欲しかった。
泣き叫ぶカエデを振り払って、
もう一度化け物に銃口を突きつけた。
.........そしたら、化け物が...。
「.........守れなくてごめんなさい」
そう言って、私のことを優しい目で見た。
違う。
違う、これはカレンじゃない。
だってカレンは長い黒髪に
白い陶器みたいな肌にパッチリした目をしてて、
こんな内蔵みたいな気持ち悪い見た目じゃない。
ボコボコの肉の塊みたいな形のそれは、
カレンの声で謝り続けた。
「ごめんなさい、守りたかった、ごめんなさい」
こんなの悪夢だ。
カレンは死んだんじゃないの?
なんでこんな姿になっているの?
今度こそ私は頭がおかしくなったんだと思った。
カレンのことが恋しくて、
こんな化け物をカレンだと勘違いしているだって。
カエデは意味のわからない声を上げて
銃を投げ捨てた。
目の前の化け物がカレンに見えたのかな。
嬉しそうに泣きながら、
化け物に向かって走り出した。
私は止める暇もなかった。
カエデは.......。
化け物を思い切り抱きしめて.....。
化け物は身体中の穴から、
酸みたいなキツい臭いの液体を
大量に吐き出した。
それをカエデは頭から被ってしまって...........。
カエデの髪が溶かされて
地面にボタボタ抜け落ちた。
皮膚は焦げた臭いを撒き散らしながら
じわじわと溶け落ちて。
カエデは私に助けを求めた。
痛い!痛い痛い痛い痛い痛い!嫌だぁぁぁぁぁぁ!!
って、壮絶な声でのたうち回った。
カエデの白い肌は見る影もなくなって、
ボロボロになった皮膚は
ピンク色の中身を見せていた。
顔は.......。
頬が焼け落ちて、筋肉の繊維が見えていた。
目が溶けたのか白い物体が
べちょって顔から流れ落ちた。
顔を手で抑えて、
ウゴゴゴゴゴ!!みたいな変な声を
あげながらカエデはカエデの面影をなくしていった。
私はカエデが苦しむ姿を
ただ眺めることしかできなかった。
周りにいた特殊部隊の格好の人たちも
カエデのことを助けようとしなかった。
みんな黙って、助けを求めるカエデが
どろどろに溶けていくのを見ていた。
.........そこから先は、あんまり覚えてない。
私は化け物を殺せたのかな...?
気づいたら、いつもの部屋にいて
任務は完了したことを聞かされた。
カエデは?って聞いたら、
なんて返ってきたと思う?
.....魔法少女を引退したって言われた。
生きているか死んでいるかなんて
そんなの一目瞭然なのに、
私はカエデの生死を問い詰めた。
でも、返ってくる言葉は
魔法少女を辞めたカエデのことなんて
我々は知らないって。
そんな無責任な言葉だった。
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ノイズがまた酷くなる。
少女の泣き声のような、
叫び声のような
よく分からない声がたまに聞こえる。
...そこで録音テープは切れた。
俺は次の録音テープをつけて再生した。
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