録音テープ【 4 】
鬱・グロ・残酷描写を含みます。
魔法少女のイメージを崩したくない方は
閲覧をおすすめしません。
録音機がガチャリという音を立てた。
ガーガーピッピピー
なんて変な音を立て続けに鳴らして、
マトモに動きやしない。
直れ!このポンコツ!と録音機をぶっ叩く。
ガチャンと音がして、ノイズが止んだ。
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《録音テープの記録4》
カレンと久しぶりに会話をした。
前よりも少し口数が多くなって、
カエデに対しても優しくなった気がする。
私は精神的にすごく参ってしまっていたから
二人にたまに当たってしまうことがあった。
でも、カレンはそんな私に
大丈夫。嫌いにならないよ。
って言って、背中をさすってくれていた。
お姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなって
思いながら、子供みたいにたくさん泣いた。
カエデも私の泣き声を聞いていたみたいで、
変な顔でニヤニヤしながら
泣き終わった私を見てきた。
なんだか恥ずかしくって、本当に久しぶりに
心から笑うことができた。
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また録音機が変な音を立てる。
少女の声が乱れ、ノイズ混じりになっていく。
場所が悪いのかもしれない
と思い、録音機を持って外へ出た。
今日は綺麗な満月だ。
俺が見とれていると、
録音機は少女の声を取り戻して再生し始めた。
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.......初めて、人の言葉を喋る化け物に会った。
私たちはいつも知能のない化け物を
指示通りに倒してきたから、とても驚いた。
イヤホン越しに発砲を促す彼らに、
私たちは意思疎通できることを伝えて拒否した。
目の前の白い、ボロボロの布を
積み重ねたような姿をした化け物は
私たちに向かって「殺さないで」って。
頭にガンガン響く声で、撃て!撃て!
そう何度も何度も言われた。
でも、まだ化け物は何もしていない。
...よく考えれば今まで殺してきた化け物も
何もしていなかったのかもしれない。
私たちはなんの疑問も持たず、指示通りにしてきたから。
知能があるっていうだけで
こんなにも人間みたいになるなんて思わなかった。
カエデは何か叫んで、顔を涙でぐちゃぐちゃにしていた。
私は頭の中が酷く混乱していて、
もう撃ってしまおうかと考えていた。
でも、私は撃たなかった。
いや.....撃てなかった。
先にカレンが撃ち殺したから。
化け物は...確か.....。
ぎぃーぁあーーー!!!!痛いぃーー!!
助けてぇーーーーーーーーー!!
って叫んでた気がする。
断末魔っていうのかな、
凄まじい悲鳴をあげながら
血飛沫を撒き散らして暴れ回った。
カレンは無言で
もう一発、化け物の頭に撃ち込んだ。
...今度こそ化け物は倒れて動かなくなった。
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ここで録音テープは途切れた。
すぐに次のテープを取り出して、再生する。
録音機はまた変な音を立てながらも
今度は素直に少女の声を再生した。
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なんで、殺したのってカエデは
カレンのことを責めた。
カレンは何も言わなかった。
...後で調べて分かったんだけど、
カエデは処分される可能性があったんだって。
確かに高純度のMAを持つ少女だった。
でも、私とカレンに比べたら
あまりにも低すぎたらしくて。
カエデを処分して、新しい魔法少女を
見つけた方がいいんじゃないかって話が出てた。
これは私の勝手な妄想なんだけど、
カレンはカエデを守ろうとしたんじゃないかな。
相性値が私たち3人はとても良かったみたいで
特にカレンとカエデは
二人で力を合わせれば最高の火力が出ていた。
だから、カレンは
使い物にならない魔法少女にならないために
言う通りにしていた。
でも、こんなのカエデは知らなかった。
私だって知らなかった。
カレンは何もかも一人で抱え込み過ぎたんだ。
.....だから、だから。
カレンは...腕を、噛みちぎられて...。
違う、切られたんだっけ。
あれ...?カレンは、腕を...。
...............。
あ、あぁ、ごめんなさい。
ちょっと記憶が古いから上手く思い出せなくて。
そう、カレンは片腕を切られたんだった。
まさかあんなに速く動ける化け物がいるだなんて
思わなかったから、
完全に油断していた。
あっという間に距離を詰められて、
カレンは腕をザックリ落とされた。
横にいたカエデは
よく分からない悲鳴を上げながら
化け物に向かって銃を乱射した。
その二発はカレンの足を撃ち抜いた。
腕を失ったショックと大量出血で、
カレンは倒れて身体を痙攣させながら
シャックリみたいな呼吸をしていた。
すぐに人が駆けつけて、
カレンは集中治療室に運ばれた。
私とカエデは部屋に戻されたけど、
カレンのことが気になって眠れなかった。
腕から血管みたいなものが
出てきていて、血が噴水みたいに溢れ出て。
あれって治るの?って思いながら
眠れない夜を過ごした。
カエデは部屋に閉じこもって出てこなかった。
それからしばらくは
不思議と化け物が現れなかった。
カレンが酷い目にあっていたのに、
私は久しぶりにゆっくり眠れることに喜んでいた。
.......一週間後くらいかな。
カレンは魔法少女を引退したって聞いた。
絶対うそ。
嘘に決まってる。
カレンは私たちを大切に思っていた。
だから絶対にうそ。
私たちを置いて引退なんてするハズない。
何よりも、引退なんて国が許すはずがない。
殺されたんだ。
カレンは殺された。
魔法少女が、死んだ。
一人死んだのに私たちは解放されなかった。
まだ、終わらない。
カレンが死んだだけじゃ終わらない!
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